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「日本の伝統的技術・技法を用いた商品」で「世界市場の開拓」へ
~伝統的工芸品産業の海外展開事例の御紹介~
担当課室:製造産業課

最終更新日:平成28年1月4日

 日本のものづくりの原点、文化の象徴として長年国民生活に潤いを与え、地域経済の発展に貢献してきた伝統的工芸品産業。時を経て、昨今はライフスタイルの変化による需要の低迷、後継者不足等さまざまな課題を抱えています。一方では、伝統的な技術・技法を活用し、時代の潮流や現代の生活様式に合った新商品が多数開発され、世界が共感するクールジャパンとして、日本の優れたものづくり技術が世界からも注目されています。

 伝統的工芸品の海外での市場拡大に取り組む事業者を紹介します。

株式会社熊谷聡商店(京焼・清水焼)

株式会社熊谷聡商店とは

 株式会社熊谷聡商店は、1935年(昭和10年)から京焼・清水焼の産地卸商社として歩んできました。創業80年の同社が産地内では後発組だというのですから、京焼・清水焼の歴史の長さを改めて感じます。創業当初は生活必需品の鍋やお茶道具類の取扱いから始まりましたが、現在は100件近くの窯元や作家とのネットワークを活かし、ニーズに応じた多種多様な商品作りを行っているのが特徴です。たとえば、湯呑みや皿などの一般食器だけでなく、インテリア商材から美術品、仏具、アクセサリーまで、国内外を視野に入れたオリジナルの商品開発に取り組んでいます。

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インテリア商材
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アクセサリーなど

海外展示会を商機とした商品開発と3代目社長の意気込み

 3代目にあたる同社の熊谷社長は、職人とともに消費者が何を求めているかを常に考えてきました。

 同社が海外展開として取り組んだのは、平成22年に中国の百貨店の催事に出展したことが始まりです。右も左も分からないままとにかく出展し、社長自らが店頭に立って来場者のニーズを聞き、市場調査を実施しました。そのとき、需要として国内と近いものがあると手応えを感じたことから、本格的に海外展開を進めて行くこととなりました。

 現在、海外展開の主力商品である「花結晶」は、平成23年に海外アドバイザーの目にとまり、国内のデザイナーと連携して初めて商品開発した焼き物です。しかし、この「花結晶」としてデザインされたカップやプレートは初めから評価が高かったわけではありませんでした。平成24年1月にパリの展示会に出品したところ、反応がほとんどなかったそうです。そこで、社長自ら会場を回り、売れ行きのいいアイテムなどを調査したところ、インテリアに大きな市場があることに気がついたそうです。そこで、翌年は「花結晶」を用いたタイルなどのインテリア関連商品をもっていくと反響が大きく、同じ「花結晶」でもアイテムによって反応が異なることを実感したそうです。今後、「花結晶」を用いたインテリア商品にさらに磨きをかけていき、市場に安定的に受け入れられるよう新しいアイディアを取り入れながら取り組んで行きたいと熱く語ってくださいました。

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花結晶シリーズ

抱える課題

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製作風景

 産地内の職人の高齢化が喫緊の課題で、若手を育てている窯元もいれば後継者を育成することが難しい窯元もいるので、京焼・清水焼の素晴らしい技術がなくなってしまう恐れを危惧しておられます。これらの技術は時間をかけて習得できるものであって、そういう技術を継承し、発展させていくことが同社のような卸問屋の役割だと、熊谷社長はおっしゃっています。

これからの株式会社熊谷聡商店

 京焼・清水焼といえば一般的には皿や湯呑みなどテーブルウェアを想像しますが、焼き物が持つ電気絶縁性・誘電性を利用したセラミック分野として碍子※や電磁気部品などの工業製品、タイルなどの建築用品としても使われています。同社は京焼・清水焼の特性を活かしながら、インテリア素材としてはもちろん、仏具などの異分野への新しい挑戦も行っています。異分野への挑戦は険しい道ではありますが、あきらめず少しずつ積み重ねることで新規開拓を目指したいとおっしゃっています。現場での情報収集を欠かさず、時代のニーズに合った商品を扱いながら、伝統的工芸品である京焼・清水焼を伝承していくことが、熊谷社長のライフワークだそうです。

 確かな技術と少しの遊び心を感じさせる京焼・清水焼が、様々な形で私たちの日常を色彩豊かに変えてくれる、そんな期待を感じさせる企業です。

※碍子(がいし):絶縁性のある器具。

掲載関連情報

企業名
株式会社熊谷聡商店外部リンク 新しいウィンドウが開きます
所在地
京都府京都市山科区川田清水焼団地町9-5
電話番号
075-501-8083

近江屋株式会社

近江屋株式会社

 創業65年の近江屋株式会社は白生地卸売業から始まり、呉服専門商社として成長してきました。「ウーン なかなかやるなあ 近江屋」をスローガンに、「キモノ」と「文化」を京都から日本そして世界へ発信できる商品を生み出しています。

OMIYA CONNECTとしてプロデュース

 着物の技術・文化を取り入れたブランド・プロダクトをプロデュース(OEM)するOMIYA CONNECT。その取組事例の一つに、三軸組織というシルクの生地を活用したブランド「SANJIKU」があります。三軸組織は京くみひもの技術を用いて、経糸と緯糸に加え、斜めに糸が組み織られているため、しわになりにくく伸縮性に優れ、かつ、強度があるため着物の帯やコートに使われていました。シルク独特の自然な光沢と色の繊細な移り変わりが魅力的なこの生地は、今から約40年前に、糸を組んで織り上げるイタリアのトーションレースの織機を見た帯職人が影響を受けたことから誕生しました。

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SANJIKU
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織機

 この三軸組織は直径5メートル、高さ3メートルもの巨大な円形の織機によって生み出されます。織機の円周上に差し込まれるボビンの数はなんと480本!トーションレースで使われるボビンの数は一般的に50~100本前後であることを考えると、とてもたくさんの糸で編み上げられることが分かります。この巨大な織機は今では京都に2台しか存在しないとても貴重なものとなっています。

 同社の独自ブランド「SANJIKU」は、海外有名ブランドの目にも止まり、バッグに三軸組織をあしらい、大きな注目を浴びています。

海外展開

 海外展開にも積極的で、2010年に台湾支社を開設しました。台湾からの留学生が台湾にも着物を広めたいと社長に直談判したことがきっかけで、その彼女が同社に入社し、今では現地の店長として活躍しています。当初は誰もが「台湾で着物が売れるのか」と思ったそうですが、同社の合い言葉「まず、やってみよう!」の精神で台湾展開が始まりました。

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台湾での催しの様子

 台湾で着物に興味のある人のために、SNSできものの展示会の開催について告知をしたところ、反響があったことから徐々にイベントが発展していき、現地の台湾向けの浴衣や洗える着物、レンタル、着付け教室、着物イベントプロデュースなど幅広い事業を展開しており、台湾での着物の市場開拓を行っています。今では高額な着物も少しずつ売れてきており、台湾での着物市場の開拓を目指して撒いた種が少しずつ芽吹いてきています。

 こうした従来の枠にとらわれない柔軟な取組は、創業65年でも京都の地ではまだ新しい会社とされる同社の強みなのかもしれません。

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ラオスの文様と日本の織物技術が融合した和装の帯
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ラオスの織物

 同社の海外展開は台湾だけではありません。同社は2011年にラオスの伝統衣装が持つ幾何学模様の独特の配色と文様を求めて飛び立ちました。ラオスの織物が日本の織物技術と融合し、これまでにない美しい和装の帯となりました。同社の魅力は、そのフットワークの軽さと美しい織物を追い求める情熱ではないでしょうか。

今後の展望

 今後の展望についてお伺いすると、台湾やラオスだけに限らず、さらなる海外展開を目指したいと熱く語ってくださいました。現地独特の柄をもつ生地と同社の直感的なセンスを和装小物に粋に取り込むことで、もともとしゃれっ気のある日本人の心に響く新しい感覚の商品が生まれるのではないでしょうか。日本と海外。それは単なるコストの話ではなく、それぞれの風土で育まれた文化が出会い、共鳴し、溶け込み合うことで、新しい世界観を作り出すことができる同社の希望に満ちたテーマなのかもしれません。

 同社はこれからも、現地でモノづくりをして輸入し国内で販売すること、そして「SANJIKU」のように国内で生産し、海外への輸出・販売を積極的に行うことで、同社の考える日本の文化を昇華させ、発信していきたいとおっしゃっています。

 これから同社からどんな魅力的な商品が生まれるのか、期待したいと思います。

掲載関連情報

企業名
近江屋株式会社外部リンク 新しいウィンドウが開きます
所在地
〒600-8177 京都市下京区烏丸通五条下ル大坂町394
電話番号
075-341-4181

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このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 産業部 製造産業課
電話:06-6966-6022

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