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ダイバーシティ経営企業100選について
担当課室:産業人材政策課

最終更新日:平成26年7月1日

 経済産業省では、様々な規模・業種の企業における「ダイバーシティ経営(※)」への積極的な取組を「経済成長に貢献する経営力」として評価し、ベストプラクティスとして発信することで、ダイバーシティ推進のすそ野を広げることを目的として、「ダイバーシティ経営企業100選」事業を実施しています。

 平成24年度から3年間で約100社を表彰する予定です。

 近畿経済産業局では平成25年度に選定された近畿管内の企業7社の取組を2回に分けて紹介させていただきます。今月号は第1回目として3社の取組をご紹介いたします。

※ダイバーシティ経営とは「女性、障がい者、外国人、高齢者など、多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」のことです。

丸善運輸倉庫株式会社
障がい者の強みを活かして、検品作業で誤出庫を大幅に低減し、経営改善

ダイバーシティ経営の背景

 丸善運輸倉庫株式会社 森藤代表取締役社長は、2005年にドライバーの募集をかけたところ、左手足に軽度の障がいを持った方からの応募があり、ドライバー業務については安全上の問題、他の業務もフォークリフトの免許が必要とされるなど、危険かつ重労働でもあることから、「採用は難しい」と考えていました。しかし、本人の熱意と事務作業でもかまわないという意向を受け、当時、大阪府内にあった数拠点を廻って伝票を回収、整理する仕事を任せられると考え採用しました。熱心な仕事ぶりで、「仕事への貢献度が低く、物足りない」、「より重い障がいを抱えた人と一緒に仕事がしたい」という希望を持っていることを知り、本格的な障がい者雇用へ踏み切ることとしました。

 2007年に知的障がい者と精神障がい者の2名を採用しましたが、精神障がい者が1年程度で退職してしまい、障がいのことや障がい者雇用についての勉強や、受け入れ体制改善の必要性を感じました。

 2010年に森藤社長が最初にジョブコーチ(職場適応援助者)の養成研修を受講。その後、管理部長と倉庫部長も受講し、経営幹部が率先して障がい者雇用について学び、退職者を出さず、長期的に勤めてもらえるよう、率先して取り組む姿勢を示し、多様性を尊重する組織風土の醸成に努めました。

取り組み内容

障がい者の適性を見極め、流通加工業務から基幹業務である検品業務に担当を変更

 障がい者のそれまでの働きぶりから、ひとつの物事に対する集中力が高く、それを持続できる能力があること、まじめで正確な作業をきっちりと行う能力が高いことに気がつき、軽作業である流通加工業務ならば適性が高いと考え、2007年頃から、女性パートとともに担当してもらいました。しかし、女性パートとうまくコミュニケーションがとれないことから、見直しを迫られ、流通加工業務のなかでも、女性パートと障がい者の業務を分けることで、なるべく接点を持たないようにするなどの工夫をして、なんとかやりくりしていました。

 その一方で、基幹業務である倉庫・運送業務で2009年に年間誤出庫件数9件と前年の4件から大幅に増加したことに伴い、取引先から検品作業の見直しを迫られていました。

 検品作業は、スピードより正確性が重視される業務であり、障がい者の有する集中力の高さ、持続力、作業の正確性、まじめな勤務態度からすると、適性の高い業務だと判断し、2010年10月から検品作業を任せることにしました。

 検品作業への配置転換は、女性パートとの接点を減らすことができ、誤出庫件数減少という目に見える数字として仕事の成果がわかることから、障がい者自身も仕事への貢献が実感しやすく、また、数字で成果を示すことができるため、倉庫作業員やドライバーをはじめとしたほかの社員、得意先からの信頼を得られやすくなるという効果がありました。

 検品作業も含めすべての作業を担っていた倉庫作業員が、フォークリフトを使った運搬など製品の入出庫作業に専念できるようになり、一連の作業のなかで、荷捌き場での取りおろしや検品は障がい者が行い、検品した荷物の入出庫は健常者が行うというように、一連の作業プロセスの中で明確な役割分担をしたことで、チームとしての仲間意識も醸成されました。

成果

写真:以下に説明
【検品作業をしている様子】

 障がい者に検品作業を任せ始めた2010年は年間誤出庫件数が1件と、2007年以降年間4件から9件もあった誤出庫が大幅に改善し、2011年以降も年間の誤出庫は0~1件にとどまっています。

 また、誤出庫が大幅に削減できたことにより、得意先による棚卸監査時間が短縮され、保管製品のアイテム数が増加し、顧客満足度が高まりました。得意先で配送関連のトラブルがあったときには、丸善運輸倉庫の障がい者に見てもらいたいと要請を受けて派遣したこともあるほど、障がい者の検品作業は信頼を得ています。

掲載関連情報

企業名
丸善運輸倉庫株式会社外部リンク
所在地
大阪府大東市新田境町4-1
電話番号
072-869-2700

田代珈琲株式会社
女性マネージャーの発案による新商品開発と発送・出荷プロセスの構築による生産性向上を実現

ダイバーシティ経営の背景

 田代珈琲株式会社では、従来、珈琲卸売が売上の半分以上を占めていましたが、バブル崩壊を機に業績が悪化したことから、業績改善のために店舗での小売販売強化に乗り出し、2001年にはネット通販事業へ参入しました。

 しかし、それだけでは他社との差別化、大量生産で流通している一般のコーヒーとの差別化を図ることは難しいため、田代社長は、生産者が独自の工夫を重ねて生産している「スペシャルティーコーヒー」(品評会で高い評価を得た高品質のコーヒー豆)の提供を検討しはじめました。

 「スペシャルティーコーヒー」で、他社には真似のできない最高の商品を仕上げるには、豆の保存、焙煎技術、ブレンド技術、商品のパッキングなど、あらゆる面で高い技術と生産システムの構築が求められ、それを実現するには、優秀な人材の採用と育成が必要と考えました。また、人材を集めるだけでなく、その人材に長く働いてもらい、自己の成長を実感し、やりがいを感じられる仕事と環境を提供していく必要性を強く感じ、ダイバーシティ経営に取り組むきっかけとなりました。

取り組み内容

経営理念。常に豊かな前進をするために。私たちはすべての持続可能性を追求します。一、奉仕の心を大切にします。一、新鮮な高品質コーヒーでくつろぎをおとどけします。一、夢と目標を共有し信頼しあえる自立型企業を実現します。一、常に新しいコーヒー文化を学び世界の生産者と共に新たなコーヒー文化を創造します。
【田代珈琲㈱の基本理念の図】

(1)経営理念の策定

 2008年に、社員、取引先、得意先、地域、産地との持続を大切にする経営理念「私たちはすべての持続可能性を追求します」を策定しました。なかでも、「社員との持続可能性」を第一に考えるものとなっています。社員が、働き続けたいと思う会社をつくり、社員が自己の成長を喜び、働き甲斐のある会社にしたいと強く思い、この経営理念にたどり着きました。

(2)新卒採用への方針転換と人材育成強化

 採用方針の見直しを行い、中途採用を中止、すべて新卒採用に切り替えを行いました。他社の考え方や社風に染まっていない人材を採用し、経営理念に沿って育成することができることから、2010年春入社から新卒採用を毎年継続して行い、5名の女性を採用しています。

 人材育成を重点に置いており、短期的な人材の過不足ではなく、持続的な成長の観点から、採用を継続的に行っています。

 また、社員・パートの育成にも注力しており、外部有識者が講師を務める珈琲の勉強会を月1回開催しています。それに加え、カッピング研修(香りや味を確かめて豆の品質を評価する技術を身につける研修)やバリスタ研修(エスプレッソなどのコーヒーに関する専門知識と技術を身につける研修)も実施し、ギフトの包み方などテーマ別の研修も随時行われています。

<保有資格>
  • カップオブエクセレンス国際審査員(1名)
  • SCAAカッピングジャッジ取得(2名)
  • SCAJコーヒーマイスター(6名)
  • コーヒーインストラクター(6名)

(3)人事制度「成長支援制度」の導入

 よい人材を確保・育成していくことを目的に、2010年に「成長支援制度」を導入しました。

 人事評価シート「成長シート」に基づき、3か月に1回、担当者と部門のマネージャーが面談し、育成(成長)結果の把握と目標の共有を図っています。

 成長シートは、経営理念に沿う形で設計され、期待成果(売上等)、重要業務(顧客対応、品質管理等)、知識・技術、勤務態度(経営理念の理解、協調性他一般的スキル)の4要素で構成されています。

 最重要評価項目として「後輩部下に指導ができている」ことを求めています。人に教えることが最大の評価であることを明確にすることで、職位や性別などに関係なく教えあう風土が醸成されています。

(4)両立支援のための柔軟な対応

 女性社員に働き続けてもらうために、柔軟な育児休業や働き方を認めて、1日4時間・週3日間の短時間・短日勤務を、子どもが小学校1年生にあがる4月まで継続させる柔軟な対応をおこなっています。

 パートに対しても柔軟な育児休業等を認め、長期勤続を実現させています。

 パートは梱包・発送業務を担う貴重な戦力であり、パートの定着はサービスレベルに直結するため、パートにも長く働いてもらえるよう配慮しています。

成果

(1)女性マネージャーによる効率的な出荷・配送プロセスの構築による生産性向上

 2001年のネット通販開始時に、出荷・配送、女性パートの育成を含めて、梱包・発送業務の立ち上げを任された女性マネージャーが、短時間で正確、きれいに作業ができるように工夫を重ねて、作業工程を作り上げました。

 さらに、女性パートの意見を聞きながら、作業の棚卸を行い、パートスタッフ育成のための作業工程別「トレーニング計画書」を早期に完成させたことで、標準的な作業手順の明確化ができ、新しいパートにも計画的にトレーニングすることが可能となりました。

 担当する作業を全員でローテーションさせるように変更することで、急な欠勤やどのようなパートの組み合わせでも同じように作業ができるようになり、全体としての効率性を高めることができるようになりました。その結果、ネット販売開始当時は100個/1日(平均メンバー3名)であったのが、現在は200個/日(同4名)まで業務の効率化が進みました。

(2)女性マネージャーによる「季節のブレンド」の商品化

写真:以下に説明
【「寒い冬、あたたかいコーヒーを
淹れて家族や友達とおくつろぎください。
We wish your merry christmas」
をテーマに12月に発売した「雪いちご」】

 常に新しい商品を提供し続け、お店に行く楽しみを提供することが重要と考え、女性マネージャーの発案により、2012年9月に「スペシャルティーコーヒー」を使った「季節のブレンド」を店舗限定で発売しました。「季節のブレンド」は、顧客の6割程度を占める女性顧客向けに「旦那さんに飲んでもらいたい季節のコーヒー」をテーマに月替わりの商品を投入しています。

 商品企画は女性マネージャーが担当し、焙煎担当の女性社員と相談しながら、毎月のブレンドを開発しています。

 月によって変動はありますが、販売量が2012年10月の8.3kgから、2013年11月には25.2kgまで約3倍拡大し、2013年9月期の店舗全体の売上高は前年比24%増となりました。

 「季節のブレンド」の売上は、会社全体の5%程度ですが、通常商品より原価率が低く粗利益率が約1.1倍であることから、利益率の向上に寄与しています。

掲載関連情報

企業名
田代珈琲株式会社外部リンク
所在地
大阪府東大阪市永和1-25-1
電話番号
06-6723-3701

帝人株式会社
CEOが女性リーダーを抜擢して、全社横断型プロジェクトによる消費者向け新ビジネスを創造

ダイバーシティ経営の背景

 1990年代にCEOをはじめとした経営トップが、欧米企業での女性の活躍を目の当たりにして、男性単一の集団では市場で求められる多様な価値の提供は困難になる、グローバル企業に成長するためには女性の活躍が不可欠であると危機感を持ちました。

 1999年に女性活躍委員会を設置し、翌年には専任組織を立ち上げ、2000年代になってから女性の活躍を中核に据えたダイバーシティの推進を加速させました。

 CEOの強いリーダーシップにより「総合職新卒採用における女性比率3割以上」を目標として掲げ、13年間の平均で「女性比率3割以上」を達成しています。

 帝人株式会社は2003年から10年間、持株会社の形態をとり、事業カテゴリーごとに分社化されていました。また、事業部制を採用し、素材別の組織となっていたため、事業特性に合わせて経営できるメリットがある一方で、事業部横断的なビジネスが生み出しにくい状況にありました。

 高い技術力を持つ企業であるため、高機能の素材を起点とした発想に陥りがちで、消費者が求めている商品が何かという視点でのビジネスが得意ではありませんでした。

 グローバル競争で生き残っていくためには、高い技術力を融合させ、市場ニーズに応じた新しい価値を提供していくことが必要であることから、グループ総合力の発揮を目指して、2013年4月、グループ各社を統合しました。

 「One Teijin」のスローガンを掲げ、個別最適から全体最適へ発想を転換し、従来のBtoBから、BtoBtoCの視点を武器に、消費者市場への本格参入など新たな事業展開を目指すこととしました。

 消費者視点でビジネスを考えられる人材の活躍が不可欠となり、ダイバーシティの重要性がより高まりました。

取り組み内容

 組織再編前の2011年5月から、家具・生活用品製造・小売企業ニトリとのコラボレーションを展開し、遮熱カーテンやランドセルなどを共同開発し、新たなビジネスの開拓を進めていました。当初は高機能繊維や樹脂、人工皮革など、素材を開発製造する各事業部門の営業担当がそれぞれ個別に対応しており、全社的な動きではありませんでした。

 「消費者が困っていることをどういう素材で解決するのか」という視点からの提案を求められていたのに対し、担当者は素材の性能へのこだわりが強く、消費者ニーズに対する視点が不足していたり、「他の素材は専門外だからわからない、担当ではない」といった対応になりがちで、十分な対応ができていませんでした。このように関係部署間で連携が取れないことも、市場ニーズに対応するスピードが遅いことの要因となっていました。

 こうした状況から脱却し、全社横断的なプロジェクト型のビジネスに転換するため、CEOの強い意向により、組織再編に先駆け、ニトリプロジェクトチームを2012年12月に立ち上げました。

 CEOが、プロジェクトのリーダーに、消費者向け商品のインターネット販売サイト運営の経験を持ち、帝人技術を紹介する展示館「テイジン未来スタジオ」の館長を務め、幅広い製品に精通している女性を抜擢しました。

 女性チーム長が最初に実行したのは、消費者が求めているものを肌で感じ、ニトリがそれにどういう態勢で応えようとしているかを知るため、ニトリの店舗で約1週間働くことでした。その後も、週2回程度はニトリや競合店の店舗を視察し、常に消費者ニーズの把握・分析を継続しています。


写真:以下に説明
【ニトリプロジェクトのメンバーとブレストチームの様子】

 プロジェクトチームは、2013年4月の組織再編の際に、マーケティング最高責任者(CMO)の直轄組織に位置付けられ、CMOによるチームへの積極的なサポートにより、同年9月には女性社員ブレストチームが発足しました。

 女性チーム長が発想の限界を感じるようになり、社内で相談できる仕組みがほしいとCMOに要望したことがきっかけです。ニトリで商品購入経験のある30〜50代の既婚・子供がいる女性社員を選出し、モニターとなるメンバーを集めてブレストチームを作り、その意見を商品開発に役立てられるような体制作りを行いました。また、モニターを固定せずに3か月ごとにメンバーを再編することで、新しい発想で消費者ニーズを収集できるようになり、先方企業に対して多様な視点からの提案を行う体制が整いました。

成果

写真:以下に説明
【ニトリと共同で開発したランドセル
「わんぱく組 メチャ!ピカ」】

 開発アイテムは、ニトリとのコラボレーションを開始した2011年5月からプロジェクト発足までの1年半は、遮熱カーテン、ランドセル、寝具の3点程度に留まっていましたが、2012年12月のプロジェクト発足から約1年で9点の商品開発が同時進行し、開発スピードが大きく向上しました。

 低価格を売りにしていたランドセルについては、過去の消費者ニーズの調査を見直すとともに、日頃の店舗視察でつかんだニーズをもとに、価格が高くても高品質・高機能、デザインに高級感のあるものなら売れると判断し、プロスポーツ選手が履く超軽量シューズ用の人工皮革を改良した新素材を開発し、デザインを一新させ旧製品の1.5倍の価格をつけました。2013年のランドセル「わんぱく組」の素材の売上高は2011年の約1.6倍を達成しています。

 また、遮熱カーテン「エコオアシス」は、「夏場は室温上昇を防ぎ、冬場は保温効果があり、エアコン利用頻度を減らせるためCO2削減につながる」というエコの視点からのプロモーションを展開しました。プロジェクト組成後の2013年のカーテン素材売上高は前年比1.7倍となっています。埃がでにくい寝具も、プロジェクト組成前後で比較して売上高が2.2倍に拡大するなど、大きな成果を挙げています。

掲載関連情報

企業名
帝人株式会社外部リンク
所在地
大阪市中央区南本町一丁目6-7
電話番号
06-6268-2132

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このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 地域経済部 産業人材政策課

電話:06-6966-6013

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