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最終更新日:平成26年8月1日
神戸と言えばファッション、スイーツなど「お洒落な街」というイメージを抱く方が多いのではないでしょうか。そのようなトレンドの最先端を行く神戸において、今年3月に新たな地域ブランド『神戸シューズ』が靴業界では全国初となる地域団体商標に登録されました。
『神戸シューズ』は、「靴のまち神戸」として知られる神戸市長田区周辺において、伝統に裏付けされた確かな職人技と最先端の技術との融合により生み出される逸品であり、ブランドを所有する日本ケミカルシューズ工業組合(以下、組合)が独自に設定した外観や強度などの品質基準を満たした靴だけがブランド登録され、現在、神戸市長田区周辺の靴メーカー32社が認定登録されています。
神戸市長田区は、明治42年の神戸ダンロップ護謨株式会社の設立を契機にゴム工業、ゴム履物製造が盛んとなり、昭和27年頃に塩化ビニールから開発された「ケミカルシューズ」が生まれて以降、靴メーカーが集積し、全国の約8割の生産を占める靴の一大産地として発展し続けてきました。しかしながら、平成7年の阪神淡路大震災により、長田区は建物の全壊・全焼等により多くのものが失われ、生産量は約半分にまで落ち込むなど壊滅的な被害を受けました。また、その後、中国や東南アジア諸国で生産された安価な輸入品の大量流入が追い打ちとなり、国内生産数量は減少し続けるとともに、多くの靴メーカーが倒産・廃業に追い込まれ、組合の会員数も震災前の226社から現在の88社にまで大きく減少してしまいました。
このような中、「このままでは、靴の産地が消滅してしまう」との強い危機感から、かつての勢いを取り戻すために組合が取り組んだのが『神戸シューズ』のブランド化でした。組合としては、『神戸シューズ』を誰もが知る靴ブランドへと育てあげることで産地を再興し、長年培われた高い技術を次世代に継承していくことを目指しています。
一般的に産地ブランドに対する意識が低かった昭和50年代に、すでに組合ではいち早く、神戸の靴の持つ優れたデザイン性や機能性を消費者にアピールする手法として地域ブランドを検討しはじめました。その当時作られたのがブランドマークとなっている「Kマーク」と呼ばれるロゴマークで、図形商標として登録されています。
その後、組合の中で地域ブランドの議論を進める中、地域団体商標制度が平成18年にスタートしたことをきっかけに、『神戸シューズ』として地域団体商標の申請を行いました。しかし当時は、『神戸シューズ』の認知度がまだ低かったこともあり登録には至りませんでしたが、この時点からブランド力強化に向けた組合の積極的な取り組みが始まりました。
まず、平成19年から消費者や業者向けに神戸の靴の魅力を実感してもらうためのキャンペーンを各地で開催し、平成21年に組合において「神戸シューズブランド化委員会」を発足させました。平成24年からは、くつのまちながた神戸株式会社の協力により期間限定で大丸松坂屋百貨店(神戸店、京都店、札幌店、名古屋店)の婦人靴売場において本格的な販売を展開するとともに、平成25年に『神戸シューズ』公式通販サイトを開設するなど戦略的なブランド展開を図ってきました。
最初の頃は、ブランドの知名度が低かったことから関西地域以外のイベントでの反応が悪く苦労しましたが、商品を手に取って履いてもらうことでその良さが伝わり、期間限定販売終了後には、どこで買えるのかという問い合わせも数多く聞かれるようになってきました。また、インターネットでの販売についても、幅広いラインナップでサイトも見やすく工夫されており、口コミも販売も好調に推移しています。このような着実な知名度向上の取り組みにより、昨年3月に2度目の地域団体商標の申請を行い、最初の申請から8年目となる今年3月にようやく『神戸シューズ』として地域団体商標に登録が認められました。
『神戸シューズ』は、職人の手により、履き心地は勿論、デザインや素材にも気を配り、一足一足、丁寧に作られています。この『神戸シューズ』の認定登録を受けている32社の一つ株式会社トアセイコーは、神戸市長田区に1951年に創業した婦人革靴の製造会社であり、品質の高い天然皮革を使用し、裁断、縫製、成型、仕上げの全ての工程を熟練の職人の手で行っています。また、株式会社トアセイコーでは、新たな商品開発にも力を入れており、スリッパからアイデアを得た本体と靴底が一体化した靴を自社で商品開発、特許を取得し、履き心地が良くて歩き易く、しかも、見映えのよい靴として現在百貨店などにおいて販売展開しています。
組合ではこれからのブランド戦略として、実店舗での販売やインターネット販売を広げていくとともに、『神戸シューズ』を一流ブランドに育てるため、様々なツールを使ってPRしていくことを考えています。その一つとして、『神戸シューズ』と大丸松坂屋百貨店のプライベートブランド「Dixsept Dixsept(ディセットディセット)」とのコラボレーションによる新商品を、今年8月から全国の大丸松坂屋百貨店7店舗において常設販売することとし、他のブランドとの相乗効果による商品展開に取り組みます。また、更なるブランドのイメージアップ、PR効果を目的として、今年8月30日(土)に開催される日本最大のファッションショー「神戸コレクション2014」に、『神戸シューズ』としてステージ出品することが決まっています。
このように、ブランド確立により更なる高みへと進み始めた『神戸シューズ』ですが、これからは、ブランド製品の生産が増えて行く中、認定登録事業者が安定してブランド製品を生産出来る体制を整えていくことや、ヤングからミセスまで幅広いデザイン商品が含まれる『神戸シューズ』のブランドイメージを将来的に統一していくこと、さらに、現在靴箱などを統一して展開しているブランドデザインを、今後商品タグなどにも付してPRを強化していくことなどが課題となります。
そして、組合としては、これらの課題を解決しながら、将来的には『神戸シューズ』のオリジナルショップを開き、全国展開していくことを目指しています。
近畿経済産業局 産業部 製造産業課
電話:06-6966-6022