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最終更新日:平成26年10月1日
株式会社京都医療設計は、商社機能を持つ研究開発型医療機器メーカーです。これまでも、体内に吸収される縫合補強材など画期的な製品を販売してきましたが、同社が現在、研究開発部門において最も力を入れているのは生体吸収性ステントです。ステントとは、狭くなった血管を内部から拡張する網状で筒型の医療機器です。従来、バルーン拡張技術と金属製のステントを使用して血管の拡張をしていましたが、金属製のステントは体内で永久留置することや、追加治療の妨げになる等の問題が挙げられていました。そこで同社は、世界で初めて体内に吸収される『生体吸収性ステント』の研究開発を行いました。
当製品の素材は、ポリL乳酸(トウモロコシなどのでんぷんを発酵させて作った乳酸を結合させたもの)で、加水分解によって水と二酸化炭素に分解されるという性質を持っています。血管内に植え込み後約6~9ヶ月間ステント強度を保持し、約2~3年で体内の組織中に吸収され消失します。2007年、末梢血管用生体吸収性ステント『REMEDY™』がEUで販売されるのに必須となるCEマークを世界で初めて取得し、2009年6月にドイツで販売開始されました。さらに、2011年からは、冠動脈用生体吸収性ステントを使用した治験も開始しました。そして現在、生体吸収性ステントは多国で特許出願し、権利化されています。世界各国の医薬品メーカーによって生体吸収性ステントは研究開発されていますが、実用化に繋がったのは同社が世界で初めてであり、生体吸収性ステントにおけるパイオニアとしての地位を確立しています。
同社の伊垣社長は、以前から特許に興味があり、自身で特許や弁理士について調べておられ、特許庁に勤めている友人からの勧めもあり、知財を取り入れることを決心され、1991年初めて特許出願を行いました。権利化に繋がった際、伊垣社長は「知財をうまく活用すれば、どんな大企業とも対等に競争できる。これ、はまる!」と思われたそうです。また、同社は知財戦略にパテントマップを活用しています。パテントマップによって発見した自社の弱みを、強みに変えるために戦略を立て直し、知財で保護するように取り組んでいます。まさに『弱みは強み』ということです。同社には、知財を専任する人材はいませんが、外部に長年、伊垣社長と共に医療について研究してきた弁理士がおられるので、その方と協力して知財管理を行っておられます。「良いパートナーを見つけるのもコツ」と言うことだそうですが、専任する人材がいないにも関わらずたくさんの特許を取得できているのは、伊垣社長の『タイミング』・『マネジメント力』・『決断力』によるところが大きいようです。
同社では近年、ステントを形(意匠)として権利取得する取組みを行っています。意匠を取得するきっかけは、ある方から『洗脳された』と伊垣社長は冗談を交えながらお話してくださいましたが、ステントになぜ特許ではなく意匠を取得するのかと疑問に思う方もいるのではないでしょうか。その理由は2つあります。1つ目は、ステントは形状が大事なので取得する。2つ目は、特許出願する際に技術説明の文章表現が難しく、特許で取得できない可能性がある時に形(意匠)で権利取得するということだそうです。意匠は特許に比べると馴染みがないですが、PRするのに活用できることと、権利行使しやすいことが特徴です。知財を多角的に捉えることによってより効果的に効率良く知財活用ができるという面から意匠の活用は特筆するべきポイントになっています。
伊垣社長曰く「知財制度を活用し、自社の技術で権利取得すると大企業でも中小企業でも独占できるという効力は同じ。知財は自社を守るものでもあるが、他社への攻めにもなる。特にグローバル化が進んでいる現在、日本での権利取得はもちろんだが、マーケットが大きいヨーロッパ等での権利取得がより一層重要となっている。一中小企業が世界的な企業と対等以上に戦っていくには知財戦略が成功の鍵にもなる」とのこと。逆に言えば、知財は一中小企業が世界的な企業とも対等に戦い合えるツールになるということです。『中小企業も』ではなく、『中小企業こそ』知財への取組みを強化する必要がありそうです。
近畿経済産業局 地域経済部 産業技術課 特許室
電話:06-6966-6016