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ダイバーシティ経営企業100選について 第3回
担当課室:産業人材政策課

最終更新日:平成26年11月4日

 経済産業省では、様々な規模・業種の企業における「ダイバーシティ経営(※)」への積極的な取組を「経済成長に貢献する経営力」として評価し、ベストプラクティスとして発信することで、ダイバーシティ推進のすそ野を広げることを目的として、「ダイバーシティ経営企業100選」事業を実施しています。平成24年度から3年間で約100社を表彰する予定です。

 近畿経済産業局では平成25年度に選定された近畿管内の企業7社の取組を3回に分けて紹介させていただきます。今月号は第3回目として2社の取組をご紹介いたします。

※ダイバーシティ経営とは「女性、障がい者、外国人、高齢者など、多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」のことです。

住友生命保険相互会社

 女性グループマネジャー配置で支社事務体制を変革、「業務プロセス改革」により大幅な時短と共に顧客満足度向上も実現

ダイバーシティ経営の背景

 総社員数42,098名(平成24年度末在籍数)の内、女性が37,045名を占め、女性比率は88%です。

 その37,045名の大部分を占めるのが、「スミセイライフデザイナー」と呼ばれる営業職で、内勤社員(総合職、業務職、一般職)についても、男性4,312名、女性6,916名と女性が多くなっています。

 しかし、2000年代半ばまでは、内勤社員における女性の活用は進んでいませんでした。出産を機に辞めてしまうためです。

 当時の横山進一社長は、「外資系生保会社では、優秀な女性が活躍している。自社にも、優秀な女性はいるのに、管理職になっていない。女性が活躍することなく辞めていくとしたら、人事制度や組織に原因があるはずだ。制度や組織を改革すれば、女性は辞めずに働き続け、実務経験の積み重ねによって専門性を深める。サービスの質の向上につながり、管理職になる人材も増えるはずだ」と考え、2005年に女性活躍推進についての全社通達を発令しました。

 この通達を受け「女性活躍推進委員会」が発足しました。

 社員に関する制度や運用を、人事部と勤労部という2つの組織が担当していたので、2つの部署の横断組織として推進委員会はスタートしました。

取り組み内容

(1)女性業務職を増員してグループマネジャー(GM)として配置。

 推進委員会が最初に立てた目標が「女性業務職の増員」です。業務職とは「転居を伴う転勤がない総合職」のことで、ほとんどは一般職からの転換です。

 2006年以前にも業務職への職種変更制度はありましたが、人数は限られていました。そこで制度を活性化させ、一般職からの転換により2~3年で約200名の女性業務職を誕生させることを目標としました。

 当時支社数が約90あり、1支社に事務の核になる女性業務職を2名程度置き、本社の業務職を合わせると200名になるという計算です。2年後の2008年には目標をクリアしました。男性を含め現在の業務職の数は280名に達しており、内訳は女性247名、男性33名です。

 この業務職の力を最大限活用すべく支社体制も大幅に変更されました。同社の活力の源泉は全国88支社、1,516の支部にあります。2006年以前は、1支社は4グループに分かれ、グループ長の多くは男性の総合職でした。ところが女性活躍推進プロジェクトのもとで、1支社4グループ・4名のグループ長から、1支社2グループ・2名のグループマネジャー(業務職)への改革が行われました。

 各支社の傘下にある支部は、1つの支部に営業職が約20名~30名、事務職(一般職)約2名、支部長が1名という体制です。支部長の半分以上は、昔から女性で、主に営業職の活躍の場となっています。

 業務職の人材育成を意図して、2006年以降は支社と支部の事務職(一般職)のローテーションを意識的に行っています。業務職になるためのスキルを向上させ、いずれはグループマネジャーを担う人材を育てていくためです。

 

 女性活躍推進プロジェクトがスタートした時点では、本社と現場(支社)では温度差がありました。女性登用を促しても、「そんな(能力のある)人はいない」、「男性でないと心配」という声が多く、「前例がない」ことをやらせようとする本社に対する現場の不信です。

 女性一般職の側にも「私にできるのか」という不安がありました。当時の業務職は全国に数えるほどしかおらず、ほとんどの支社に先例がありませんでした。ロールモデル不在が、現場の不信と女性の不安を増幅させました。

 こんな現場の反発と戸惑いに対し、推進委員会は「そんな人がいないというなら、見つけて育ててください」と対応しました。「育てて2年後に女性が活躍する体制にする」という展望を推進委員会は描いていました。

(2)女性活躍の3つの制度~「キャリアアップ支援制度」「ファミリーサポート転勤制度」「ジョブ・カムバック制度」を創設

 女性の活躍を促進するために、2006年に3つの制度を新設しました。一般職・業務職を対象とするキャリア形成支援として、期間限定で他部署の業務を経験する「キャリアアップ支援制度」、家庭の事情により転居の必要が生じた場合、希望によって転居先の勤務地に転勤することができる「ファミリーサポート転勤制度」、結婚・出産・育児等の理由で退職した場合でも、同社での経験を生かして社員として復帰することができる「ジョブ・カムバック制度」です。

3つの制度の概要

※ジョブ・カムバック制度の「登録」は、まだ復帰はしていないが復帰する可能性がある社員として登録している社員。

(3)研修、ミーティングなどで意識改革を推進

写真:以下に説明
大阪本社で実施した女性一般職および業務職向け研修(2009年)

 制度の充実とともに、意識改革を積極的に推進しました。女性総合職を推進委員会メンバーとして招き、女性の意識改革を目的とした各種研修を実施しました。また社内報で各支社での取り組みも紹介しました。

 更に、女性総合職を積極採用し、幅広い職務経験を積ませると共に、2013年からは、入社8年目以上の女性総合職を対象にキャリアプランの策定やグル-プミーティング等を行う「女性キャリア研修」も実施しています。

 女性課長層の比率も、2006年に約4%だったのが2013年には15%を超えるほどになっています。

 2007年からは全国ブロック単位で、各支社の総務部長と女性社員が出席する「女性フォーラム」を開催しています。

  総合職は転勤があることから横の広がりは生まれますが、一般職と業務職は職場が固定しがちで他部署との交流が少なくなります。このような研修やフォーラムが一般職と業務職の交流の場としても機能し、多様なロールモデルに触れることができ、キャリア形成に対する意識改革につながっています。

成果

グラフ:以下に説明
「お客さま満足度アンケート」の結果推移

 2007年からは、労務管理の全社運営をする勤労部による全社的な「業務プロセス改革」もスタートしました。

 支社・支部毎にばらつきがあった事務手順の均質化、会議資料・重要度の低い業務の削減と総合職から一般職への仕事のシフトなどです。

 この改革で活躍したのが、事務のエキスパートである女性のグループマネジャーや一般職の女性たちでした。的確な見極めによって、資料の削減や保管ルールの整理統合、社内会議や業務について重要度を踏まえて削減するなどの、事務作業の効率化が図られました。

 事務作業の効率化と勤労部が主導する全社員のPC使用時間を8時~20時に限定する取り組みとも相まって、大幅な時短を可能にしました。平均年間総労働時間が2011年時点で1,730時間となり、2007年に比べて約260時間(約13%)も減少しました。

 資料の保管場所や方法がルール化されたり重要度の低い作業が省かれたりしたことで、無駄やミスが少なくなり、事務の精度が上がり、顧客対応のリードタイムが短くなっています。

  資料の保管方法が誰にでもわかりやすい状態となることで、誰かが急に休んだ場合でも、応援体制を組みやすくなり、こうした取り組みが顧客サービスの向上にもつながっています。

 

 現在の支社の事務は、女性が9割近くを占める業務職のグループマネジャーが中心となって担っています。支社の事務業務に就く総合職は大幅に減り、成長分野に注力することによって会社収益の拡大を図っています。

 転勤がなく地域密着で生活する女性業務職は、その地域の顧客や営業職のことをよく知っており、その支社で必要とされる業務に関する知識もしっかりと蓄積しています。こうしたことが、サービスの向上や業務の円滑な運営に役立っています。

掲載関連情報

企業名
住友生命保険相互会社外部リンク 新しいウィンドウが開きます
所在地
大阪府大阪市中央区城見1-4-35

P&Gジャパン株式会社

 性別、国籍などの多様な組織から次々と革新的製品、革新的販促手法が生み出される

ダイバーシティを経営戦略の一つに置く背景

 P&Gでは、性別や年齢、国籍によらずすべての社員の多様性が尊重されることが重要であると考え、「ダイバーシティ&インクルージョン」を経営戦略に欠かせない重要なものの一つとして取り組んでいます。

 同社では、「ダイバーシティ&インクルージョン」はビジネスにおいて、優れたイノベーションを生む源泉であり、経営に無くてはならない投資であると捉えています。

 アメリカ企業には珍しく、原則ヘッドハンティングをしないため、優秀な人を採用し、長期的に内部で育てる必要があります。性別に関わらず、将来の管理職に育成するためのトレーニングを入社時から行い、業務経験を通じて育成します。そのため、管理職に占める女性の割合も多く、また、結婚や子育てなどのライフプランも重視していることから、子育てと仕事を両立しながら管理職になる女性も多くいます。

※インクルージョン:組織内の誰もがビジネスの成功に参画・貢献する機会があり、それぞれの経験、スキル、考え方が認められ、活用されていることをいいます。

取り組み内容

(1)ウーマンズネットワーク

 日本のP&Gがダイバーシティ経営に本格的に取り組んだのは20数年前になります。

 当時、既に10数名の女性管理職がいましたが、世界のP&G各社と比べると遅れており、プレッシャーがありました。特に日本では女性活用が遅れていたため、部署を越えて女性管理職と意見交換できる場として、ウーマンズネットワークを立ち上げ、1999年には全社のダイバーシティ推進を担当するマネージャーを置きました。

 女性にフォーカスした第1ステップ、宗教や国籍など広義のダイバーシティにフォーカスした第2ステップを経て、現在、第3ステップに進んでいます。国籍や性別が同じでも、生活背景や興味、関心などの個々の違いを尊重し、理解し、経営に活かそうとしています。

(2)最大限の成果を引き出すための諸制度

  ダイバーシティ&インクルージョン推進の一環として、社員支援のための柔軟な制度があります。子育てや介護だけでなく、趣味や自己啓発のニーズもあることから、性別や年齢に関係なく、その人が最も高い生産性を出すには、どんな働き方がいいかを配慮することが、制度設計と利用推進の考え方の基本となっています。

 「在宅勤務制度」では、執行役員以下、一般社員まで、シフト制の工場スタッフや百貨店の美容部員を除いて、誰もが理由を問わず週1日、利用できます。あらかじめ曜日を指定しておく必要はありますが、必要に応じた曜日変更も可能となっており、管理職も率先して活用しています。

 

 育児や介護費用をサポートする「育児介護費用支援制度」もあります。
例えば、社員が出張する際に、育児サポートを実家の母親に頼む場合、母親の自宅までの交通費などに充てられる費用として、年間10万円までサポートするものです。

 

 2種類の「ベビーシッター補助制度」があり、併用も可能となっています。

 一つは、契約している福利厚生企業のサービスで、月30時間までのベビーシッター使用料について時間当たり700円を補助するものです。

 もう一つは、こども未来財団との提携による「ベビーシッター割引券」(1枚1,700円、1家庭につき1日1枚利用可能)を、利用枚数制限無く希望者に提供するものです。

 

 育休・時短制度や介護休業制度などは、法定の水準としています。法定より長い休業を検討したこともありましたが、導入しませんでした。休みを増やすよりも、育児・介護と仕事が両立できるような、柔軟な働き方が大切と考えたからです。

 時短制度は、給料も下がり、キャリアの中断になります。フレックス制度や在宅勤務制度が充実しているため、あえて時短を選択する社員はほとんどいません。

 こうした諸制度が機能する背景には、長時間労働を美徳とせず、終業時刻を厳格に定め、それまでの時間に集中して成果を出すというワークスタイルにあります。

 

 時間管理も徹底しています。残業が多い社員がいたら、社員名を記したレポートが人事担当者から部門長に報告されます。その社員の直属の上司は、本人と面談し、仕事の仕方や業務内容の再確認、必要なトレーニングの相談を行い、改善策を話し合うこととなっています。

 残業が恒常的になることを防ぐため、3か月残業が続く社員には、部門長と面談をして、必要なサポートや仕事内容の見直しなどを行います。

 営業職の外勤社員は、直行直帰型で働いている為、1日の始業時に上司に一報を入れた後も、こまめに報告を入れます。オーバーワークを防ぐ仕組みです。営業職の場合、顧客の都合で夜遅くなることもあり、そのような場合は、翌日以降の勤務時間で調整しています。

 ワーキングマザーには、本人が希望する場合には出張先に子どもを連れて行くことを認め、ベビーシッターに会議の間、隣の部屋で見てもらい対応することもあります。子育て中でも、休みや出張の免除が必ずしもキャリアプランにとって良いわけでないため、本人の意向を重視しています。

(3)男社会の工場でもダイバーシティ推進

 洗剤の高崎工場、化粧品の滋賀工場、紙製品の明石工場と3つの工場があります。比較的、ダイバーシティ&インクルージョンの推進が順調に進んでいる事務系部門に対し、大きな工場を管轄する生産統括本部は長く男社会でした。

 生産統括本部では、20年に及ぶダイバーシティ推進活動の末、明石工場と滋賀工場の工場長を女性が務めています。明石はポーランド人、滋賀は日本人で、2人とも結婚して子どもがいます。

成果

 生理用品の「ウィスパー」は、女性向け商品ですが、意図的に男性のブランドマネージャーや研究者を配置しています。開発会議の際、日本人の男性研究者が、「製品の裏にこんな絵柄がついていたらどうだろう」と試しに子供用のシールを持ってきて説明しましたが、開発メンバーの女性は、パッドに絵柄が付いているなど見たことがありません。

 しかし、多様な意見を受け入れる慣習から、その意見を取り入れ、生理用品の裏面にシールを貼り、一般消費者にテストを行ったところ「かわいい」という反応が得られました。調査を繰り返して絵柄や色などを決定し、裏面にクローバーの柄を入れた生理用品が開発され、他社も追随するほどのヒット商品となりました。

 異なる背景をもつ多様な人が意見を出し合える、そして、それを尊重しあえる環境が、新しい価値を生み出し、その結果、新製品の成功率は年々高まっています。

掲載関連情報

企業名
P&Gジャパン株式会社外部リンク 新しいウィンドウが開きます
所在地
兵庫県神戸市東灘区向洋町中1-17

関連施策へのリンク

ダイバーシティ経営企業100選外部リンク

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 地域経済部 産業人材政策課

電話:06-6966-6013

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