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「日本の伝統的技術・技法を用いた商品」で「世界市場の開拓」へ
伝統的工芸品産業の新市場開拓事例の御紹介
担当課室:製造産業課

最終更新日:平成27年1月5日

 日本のものづくりの原点、文化の象徴として長年国民生活に潤いを与え、地域経済の発展に貢献してきた伝統的工芸品産業。時を経て、昨今はライフスタイルの変化による需要の低迷、後継者不足等さまざまな課題を抱えています。一方では、伝統的な技術・技法を活用し、時代の潮流や現代の生活様式に合った新商品が多数開発され、世界が共感するクールジャパンとして、日本の優れたものづくり技術が世界からも注目されています。

 今回は、近江上布の新商品開発に取り組む滋賀県麻織物工業協同組合を紹介します。

近江上布ってどんなもの?

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手績み(てうみ)手で糸を作る作業
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高機(たかばた)近江上布絣を織る様子

 近江上布とは、良質な麻の産地であった滋賀県の湖東地方で織られた麻織物であり、麻織物の産地の中でも最高級品である上布の代表的な産地として有名です。また、湖東地方は愛知川の豊かな水と高い湿度に囲まれ、上布生産の環境に恵まれており、近江商人の活躍等により鎌倉時代から全国に流通してきました。江戸時代には、彦根藩の振興によりさらに発展し、近江上布独特の上品な絣(かすり)模様が生まれました。この麻糸を平織りした張りのある麻織物は、吸湿性、通気性、発散性に優れ、肌に密着しにくい繊維なので身につけるとさわやかな感触で、かつ丈夫な素材として広く使用されてきました。

一念発起!海外へ

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メゾン・エ・オブジェに出展した商材1
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メゾン・エ・オブジェに出展した商材2

 これまで、近江上布を国内のみに展開してきた滋賀県麻織物工業協同組合が、丈夫で上質な近江上布の素晴らしさをもっと多くの人に、世界中の人々に知ってほしいという思いから、2014年9月にパリで開催された世界最大級のインテリア&デザイン見本市「MAISON & OBJET(メゾン・エ・オブジェ)」に、一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会が出展した「DENSANブース」に出品しました。これは、全国から応募のあったさまざまな伝統的工芸品の中から商材の審査を経て、選ばれた15産地のうちの一つとして同ブースに出展したものです。

 実は同組合は、近江上布で製品を作ったことがなく、これまで反物として卸すことが中心でした。織り上がった布から何が出来るかという視点で考えつくものは洋服やかばんなどで、組合として具体化するには限界がありました。悩みぬいたあげく、消費者目線で何がほしいかを考え始めました。そうすると1反単位に囚われずに必要な幅だけ織ることができ、製品ごとに柔軟に幅を変えられるという手織りの強みを活かせることに気づき、着物用の反物からいろいろな製品の素材となるテキスタイルへの発想の転換が、当組合の海外出展の道へとつながったのです。

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近江上布絣の生地とその作品

 2014年9月の「メゾン・エ・オブジェ」への出展により、日本にいるだけでは知ることが出来なかった海外の人の生の声や感覚等を知ることができたそうです。海外に出る前の予想とは異なり、「近江上布は洗練されており、落ち着いた色や堅さがいい」という評価で、新たな気づきとなりました。

 もう一つ分かったことは、海外の人は商品の印象から入るということです。伝統的工芸品であることはその製品の持つ特徴の一つでしかなく、そこに甘えていてはいけないと気付いたそうです。現代生活に活きる伝統的工芸品として、商品そのものの良さの背景に伝統という付加価値があると考え、「伝統をただ残すためではなく、色、幅、大きさをカスタマイズできる手織りの強みを存分に発揮して、消費者に求められる伝統的工芸品にしていきたい」と近江上布伝統産業会館の担当者は話してくださいました。

こんなに丈夫!100年前の麻糸で商品化

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100年前の大麻の糸で織った布で、コースターに仕立てたもの
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100年前の大麻

 近江上布には絣と生平(きびら)の二種類があります。生平は手で作った糸(手績み糸)を使って織る布で、原料となる麻糸を作るのが一番手間のかかる作業であり、10年以上の経験者でも一日10gしか作ることができません。それだけ貴重な糸なのですが、なんと100年前の麻糸が県内のある民家で発見されました。100年前であっても糸は現役で、その丈夫な麻糸を緯糸(よこいと)に使用してランチョンマットやコースターなどを商品開発しました。

 100年前の麻糸が時を超えて商品として蘇ったのです。

近江上布、復活と希望の光

 近江上布も他の伝統的工芸品と同じく、需要が右肩下がりで後継者も減少の一途をたどっていました。昭和40~50年代の全盛期には20事業者いた組合員が今では6事業者に減り、このままでは近江上布を後世に伝えられない状況になっていました。近江上布は分業制ですが職人の減少でそれぞれの工程の維持も厳しくなっています。

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地機(じばた)近江上布生平を織る様子
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生平の生地

 なんとかしたい!そういって立ち上がったのが近江上布伝統産業会館の女性の皆さん。一般の方から公募したアマチュアクリエーターという集団を結成し、女性ならではのユニークな発想で、近江上布の新たな商品作りに積極的に取り組んでいます。また、麻組合オリジナル「asaco」というブランドで、近江上布の手機生産に用いられてきた技術を初めて洋装生地の生産にいかした商品開発も行っています。

 さらに、近江上布伝統産業会館では滋賀県で唯一、「生平」を織る実演、体験を行っています。それに加え今年度からは一度は生産が途絶えた生平の生産のための技術を身につける織人(おりびと)の育成も始め、伝統技術の復活にも取り組んでいます。

これからの近江上布

 伝統を守るだけではいけないと、近江上布伝統産業会館の方は力強く答えてくれました。単なる文化財や趣味としてではなく、業として将来につなげるために流通の中でものづくりを考え、企業に出来ないことを強みとして近江上布をもっと広めていきたいと考えていらっしゃいます。

 次の目標は何かと尋ねたところ、「2015年のアンビエンテ(ドイツ)への出展に向けて商品開発しています。」とのこと。メゾン・エ・オブジェでの経験を活かし、次の展示会でも大きな収穫を得られるように試行錯誤しながら目標に向かって着実に歩んでいらっしゃいます。

 近江上布の丈夫な繊維のように、一つ一つの地道な活動が太く強い糸になって発展していくことを期待しています。

掲載関連情報

組合名
滋賀県麻織物工業協同組合外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
滋賀県愛知具愛荘町愛知川13-7 近江上布伝統産業会館
電話番号
0749-42-3246

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このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 産業部 製造産業課

電話:06-6966-6022

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