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公設試を活用したイノベーションの創出について
担当課室:産学官連携推進室

最終更新日:平成27年2月2日

公設試(こうせつし)とは

写真:以下に解説
京都府中小企業技術センター
写真:以下に解説
地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所

 公設試とは、地方自治体が設置した試験研究機関である公設試験研究機関の略称です。公設試の活動領域は工業、農林水産、環境などありますが、ここでは工業系公設試について、紹介いたします。

 なお、近畿管内には、工業系公設試が10カ所設置されています。

 産業構造がグローバル化や企業間関係のオープン化により変化し、大企業は新興国の低賃金労働力を活用するようになり、地域創生の中心である中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。

 そのような状況の中で、消費者のマインドも変わりつつあります。単なる“もの”を求めるのではなく、付加価値を享受できる“もの”を求めることが少なくありません。消費者ニーズの変化をつかみ、ニーズに合った製品を提供する、中小企業が生き残っていくには、自身が技術力を持ち、常に高付加価値のある“もの”を生み出すことが重要であり、そこにチャンスがあります。

 しかし、自前では資金、技術力が問題になり現状を打開できない、そのような課題を抱えている中小企業が多いのではないでしょうか。そのような時、一番身近な研究試験機関である公設試を利用してみてはいかがでしょうか。公設試は主に地場産業に貢献するため、現場ニーズに基づく研究テーマを設定し、技術的支援を行う機関として活動していますので、抱えている課題を安価にしかも期間を短縮して解決できるかもしれせん。

 また、我が国は欧米と比べ、技術シーズを事業化に結びつける「橋渡し」の機能強化が不十分とされています。(独)産業技術総合研究所や大学等と連携し、その課題を克服する機関としても期待されています。

公設試ができること

図表:以下に解説
さまざまな支援メニュー

 公設試は、中小・ベンチャー企業への技術指導、依頼試験や共同研究等の機能を有する機関です。地域の産業を技術面から支えることを目的としており、いわば企業の技術開発パートナーです。具体的な支援メニューは、以下のとおりです。

技術相談

 初めて公設試を利用される方は、まず公設試の研究員が無料で相談に対応する技術相談から利用が始まります。企業が抱えている課題に対し、公設試にどのような技術があり、どのような支援を提供できるのかお答えします。「不良品発生の原因を解明したい」「新技術を開発したい」といった具体的な内容で来られる方もいますが、「明確な理由もなく相談を聞いてもらえるのだろうか」と悩んでいる方も少なくありません。公設試では、どのような内容であっても幅広く相談を受け付けています。また、電話やメールでも相談を行える体制を取っています。

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透過電子顕微鏡(大阪市立工業研究所)
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機械的強度測定装置
(奈良県産業振興総合センター)

機器利用

 一番多く利用されている支援メニューです。公設試に設置されている試験研究・検査設備を使用できます。有料ですが、精度の高い最新機器も導入されており、「試験を行えば課題を解決できる」とお悩みの方が、自社の投資なしで試験等を行えます。また、「機器購入を検討していて、事前に使ってみたい」そのような場合でもご利用いただけます。

 「使っていいと言われても、操作できるのだろうか」といった心配もありません。専門の研究員が操作方法のアドバイスを行うなど、機器に応じて講習を受けられる制度もあります。

依頼試験

 原料や素材、試作品などのサンプルを公設試に持ち込み、試験を依頼するのが依頼試験です。専門の研究員が試験評価・成分分析を行い、その結果をレポートとしてお渡しします。「試験結果のデータがほしい」という場合に便利です。サンプルを郵送して依頼する、といった対応が可能な公設試もあります。

共同研究(受託研究)

 課題解決や新技術を開発するため、公設試と共同して研究を行います。共同研究に関しては、各機関で技術の蓄積がある分野に限られますが、得意分野であるため、高度な技術で研究を推進できます。公設試の研究員と共に研究を行うことは、技術者の育成、研究成果の迅速な事業化に非常に有効です。一部の公設試では、企業からの委託を受け、新製品・新技術の開発を実施する受託研究も実施しています。

 共同研究の実施方法は概ね以下のとおりです。

  • 公設試の機器・実験室を使用して、公設試の研究員と一緒に研究開発を行う。
  • 自社の研究室で、公設試の研究員と一緒に研究開発を行う。
  • 公設試の機器・設備を利用して研究をする。

公設試との共同研究で生み出された製品

 企業の技術と公設試の技術を組み合わせることにより、製品化に至った事例をご紹介します。

滋賀県工業技術総合センター

  • グラインダー用消音砥石
  • 緩まないナット
  • 軟質複合化フィルムを使用した緊急絆創膏

 いずれの商品開発も、技術相談から始まり共同研究に発展しました。研究開発での当センターの役割は、自社では難しい測定や性能の証明などの課題についての支援です。たとえば、消音砥石では騒音の測定方法、ナットでは緩まない理論的証明(構造力学解析)、また絆創膏においては低弾性フィルムの物性評価の技術的課題です。また、研究の進捗管理や外部資金申請、特許取得などにも支援いたしました。

 研究開発においては、新規製品の評価方法が確立されていない状況で、開発製品の性能をどのようにアピールしていくか苦労しました。いずれの企業からも、「共同研究はお互いの距離が近い環境で実施できましたので、課題の相談や試作品の作製・評価に随時対応していただき、スムーズに研究が進められた」との評価を得ています。

写真:以下に説明あり
消音砥石(ナニワトイシ株式会社)
写真:以下に説明あり
緩み止めナット(有限会社ウェジコ)
写真:以下に説明あり
軟質複合化フィルムを使用した緊急絆創膏
(東洋化学株式会社)

和歌山県工業技術センター

  • 余剰汚泥をエスケープ
写真:以下に解説
実証試験に用いたパイル担体
写真:以下に解説
パイル織物
(右 表面、左 裏面)

 パイル織物は和歌山県橋本市周辺の地場産業であり、我々は、新しい産業用資材の開発に取り組んでいます。この取り組みの中で、オーヤパイル(株)との共同研究を実施、試行錯誤を繰り返し、水処理用資材としてのパイル担体の開発に成功しました。さらに、エコ和歌山(株)を加えた3社で、食品加工会社の排水処理設備における実証試験を実施し、パイル担体にイトミミズを多量に付着させ、余剰汚泥の発生量を83%削減することに成功しました。食品加工会社の工場長には「余剰汚泥処理コストをエスケープでき、利益が上がる」と喜んでいただいています。今後は、この技術をESCAPE法として、販路拡大を目指していきます。

平成25年度補正予算事業 地域オープンイノベーション促進事業

 公設試の企業支援のためのさまざまなメニューを紹介しましたが、公設試にも抱える課題があります。企業ニーズの多様化により研究者の対応力、技術力の向上が求められていること、ニーズに対応する最新設備を導入する費用の不足などです。

 これらの課題を解決するため、当局では「地域オープンイノベーション促進事業」を実施しています。具体的な事業内容としては、イノベーションに寄与できる試験研究・検査設備を公設試に配備することや、公設試の人材育成のためのスキルアップ研修の実施などです。また、産学官金が連携するオープンプラットフォームの構築について検討を行いました。プラットフォームが構築されることで、地域企業の有するポテンシャルを十分に発揮できるための支援体制が整います。

導入機器
機関名 機器名 用途
福井県工業技術センター 医療用チタン複合部材造形システム 金属系(チタン、SUS、マルエージング鋼、等)3Dプリンターと高速切削加工を同一工程で行い、金型、単品製品製作等に利用
滋賀県工業技術総合センター 大変位振動衝撃試験機 エレクトロニクス製品の振動耐久試験、輸送梱包試験、等に利用
滋賀県東北部工業技術センター プラスチック部材信頼性評価システム プラスチック製品の成形歪み、粘弾性の測定
京都府中小企業技術センター マイクロフォーカスX線CTシステム 工業製品の内部構造を非破壊・非接触で検査
(地独)大阪府立産業技術総合研究所 レーザーメタルディポジションシステム 高機能金属粉末材料を用いた3D造形(肉盛り)加工
兵庫県立工業技術センター マイクロフォーカスX線透過装置 蓄電池・燃料電池・太陽電池モジュール電極などを非破壊で評価
奈良県産業振興総合センター スマートサーモアナリシスシステム 固体・液体試料の温度変化に伴う試料の変化(質量、粘弾性、変形、等)を測定
和歌山県工業技術センター 試作レス開発支援システム 3DCAD,CAEにより設計・解析・評価をPC上で実現し、複合樹脂系3Dプリンターにて造形
(地独)京都市産業技術研究所 微小部薄膜評価用X線回析装置 薄膜・粉末・ナノ材料の結晶性評価
(地独)大阪市立工業研究所 傾斜切削顕微FTIR・NIR測定装置 電子回路の安定性や劣化状況、耐熱性を評価

スキルアップ研修会

写真:以下に解説
10公設試から19名の参加がありました

 企業との連携(共同研究や受託研究)を推進するにあたっての心構えや、産業界における研究開発を取巻く変化を認識すること、顧客の立場に立ったニーズ・課題の的確な把握が必要であるといった内容の講義を開催しました。

シンポジウム

写真:以下に解説
シンポジウムでの挨拶を行う高畠地域経済部長

 「生き残り企業になるためのものづくり戦略」と題して、本事業でも3機関が導入する3Dプリンターをテーマに開催しました。ものづくりの技術革新が期待される3Dプリンターですが、どのような機種があり、どのように利用出来るのかあまり知られていません。機種によって違う材料が使われることや、造形方法の違い、どれだけ細かなものを作れるかなど、公設試の製作現場からの実例をもとに各公設試の3Dプリンターを紹介しました。

オープンプラットフォームの構築

写真:以下に解説
公設試、産業支援機関、金融機関から22名が参加し、
プラットフォーム構築について、ディスカッションを行いました
図表:以下に解説

 イノベーション創出や、中小企業支援を行うためには、地域の技術開発ポテンシャルを集結させた地域のプラットフォームを構築し、駆動できる体制を整えることが重要です。(独)産業技術総合研究所との連携は、産業技術連携推進会議にてすでにその枠組みが構築されていますが、組織的な連携が図れていない公設試、産業支援機関、金融機関、大学等が協力するオープンプラットフォームを構築し、有機的に機能する仕組みについて検討を行いました。

最後に

 公設試は、地域産業を技術面から支える一番身近な研究試験機関です。製品開発から、製品の不具合まで、様々な支援メニューによりサポートしますので身近なパートナーとして、ご活用してみてはいかがでしょうか。

 地域経済の活性化を図っていくには、イノベーションを創出し、新産業を起こすことが重要です。産学官金連携により地域のポテンシャルを集約することが、地域におけるイノベーション創出の鍵になります。

 当局では、公設試への支援と産学官金プラットフォームの構築により、地域でのイノベーション創出を推進して参ります。

掲載関連情報

機関名
福井県工業技術センター外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
福井県福井市川合鷲塚町61字北稲田10
電話番号
0776-55-0664

機関名
滋賀県工業技術総合センター外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
滋賀県栗東市上砥山232
電話番号
077-558-1500

機関名
滋賀県東北部工業技術センター外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
滋賀県長浜市三ツ矢元町27-39
電話番号
0749-62-1492

機関名
京都府中小企業技術センター外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
京都府京都市下京区中堂寺南町134
電話番号
075-315-2811

機関名
地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
大阪府和泉市あゆみ野2-7-1
電話番号
0725-51-2525

機関名
兵庫県立工業技術センター外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
兵庫県神戸市須磨区行平町3-1-12
電話番号
078-731-4033

機関名
奈良県産業振興総合センター外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
奈良県奈良市柏木町129-1
電話番号
0742-33-0817

機関名
和歌山県工業技術センター外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
和歌山県和歌山市小倉60
電話番号
073-477-1271

機関名
地方独立行政法人京都市産業技術研究所外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
京都府京都市下京区中堂寺粟田町91
電話番号
075-326-6100

機関名
地方独立行政法人大阪市立工業研究所外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
大阪府大阪市城東区森之宮1-6-50
電話番号
06-6963-8011

関連施策へのリンク

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 地域経済部 産業技術課 産学官連携推進室
電話:06-6966-6164

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