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最終更新日:平成27年2月2日
木綿(もめん)は、ワタの種子に付着している繊維であり、繊維としては衣料や手ぬぐいといった小物など、我々の身近な生活品として馴染みがあります。
和泉市が含まれる泉州地方は古くからの綿スフ(短繊維からなる紡績糸)織物産地であり、我が国の四大産地(静岡県、愛知県、兵庫県、大阪府)のひとつです。毛足が長く良質な和泉産の綿花は細い糸を紡ぐことができ、その糸で織り上げた綿織物は『和泉木綿』として、高く評価されました。
和泉地域の木綿は、日本人の衣生活に木綿が浸透した江戸時代より『和泉木綿』の名をもって知られて、日本の中心的な綿業地帯を形成しましたが、その後の安価な輸入品の台頭により、「和泉産地の綿」自体の生産は減少し、和泉の綿による製品は“幻の地場産品”となるなど、危機的な状況にありました。
その後のバブル崩壊により更に産地の状況が厳しくなる中、泉州織物工業協同組合(以下、織物組合)を中心とする地元の織物業者たちが立ち上がり、『和泉木綿』としての地域ブランド化による産地活性化を図った結果、現在では、衣料用織物をはじめ寝装用、産業資材用、衛生材料用織物など『和泉木綿』の生地を活用した多岐多様の品種が製織されているとともに、産地としても、海外市場への輸出や国内需要に対する素材供給基地として、ますますその重要性が増しています。
泉州地域の木綿生産は、高度成長期の国内繊維産業の活況に伴い成長し、昭和48年の織物組合の会員数は1200社を超えていましたが、その後、安価な輸入品による生産減少、後継者不足による廃業が止まらず、現在の組合員数は83社と絶頂期の1/10以下にまで減少し、産地としての規模が縮小してしまいました。
「このままでは長い歴史の中で培ってきた『和泉木綿』の技術が消滅してしまう」との危機感から、織物組合を中心に産地業者が一丸となって、産地復活に向けた方策を検討し、その起死回生の策として『和泉木綿』のブランド化に取り組みはじめました。
ブランド化においては、地域団体商標制度が導入された平成18年の出願を目標として、まずは『和泉木綿』の名称の登録に挑戦しました。登録においては、『和泉木綿』の認知度の高さを証明することが大きな鍵となりますが、産地の製品に『和泉木綿』という名称がどの程度使用されているのか、また、全国的に産地製品がどの程度認知されているのかを把握し、整理するのに大変苦労されたそうです。
事前の準備が功を奏し、平成18年の初めての出願で『和泉木綿』の名称の地域団体商標の認可を得ることが出来ましたが、名称の登録はブランド展開に向けて一歩踏み出したに過ぎず、商標登録をきっかけとして、ブランドマークとなるロゴの商標登録やブランドを使用できる生地の基準の設定など、産地での具体的なブランド展開のスキームづくりがスタートすることとなりました。
織物組合に「地域ブランド特別委員会」を設置し、ロゴや基準の設定が検討されましたが、特に商標使用の基準設定においては、「ブランドとしての価値を高めるために基準を厳格にすべきである」など様々な議論がありました。最終的には、『和泉木綿』の生地を使った製品を幅広く展開し、更にブランド認知度を上げることが重要であるとの観点から、産地で製織された綿織物であることと、その綿混合率により基準が設定されることになりました。
『和泉木綿ロゴ』の商標は、名称登録に引き続き平成24年に登録され、ブランドマークは、縦糸と横糸を編んだような、木綿生地をイメージさせるようなデザインとなっており、商標使用の許可を取った組合員が使用することが出来ます。
本格的な地域ブランド展開においては、織物組合が中心となって、組合員向けに『和泉木綿』の生地を活用した企画提案を行うなど、組合員のブランドを活かした新商品開発を支援するとともに、『和泉木綿』を切り口に東京のテキスタイル展示会へ出展するなど積極的なブランド戦略を進めているところですが、近年、産地の織物業者において、ブランドの活用度合いが二極化していることが課題となっています。元々産地の織物業者の大半が生地の織物業者であり、生地から製品まで自社で製造している業者が少ないことが二極化の要因です。生地から製品までを一貫製造する業者であれば『和泉木綿』のブランド商品としての販売が可能ですが、生地の織物業者の場合、問屋や加工メーカーの意向により『和泉木綿』のブランド商品としての展開が出来にくい状況にあるからです。
今後の産地のブランド戦略としては、『和泉木綿』という地域ブランドに、生地自体の質の高さや製品としての幅の広さなどの「生地としての魅力」をプラスすることが重要であり、これらの取り組みにより、『和泉木綿』の更なるが進化が期待されます。
『和泉木綿』は、糸にした綿毛をサイジング(のり付け)し、タテ糸とヨコ糸を交差させて製織した後、染色加工、縫製により製品となりますが、この生地生産から加工までを行い自社ブランドとして商品展開しているのが、大正8年に創業した老舗である平山繊維株式会社です。
平山繊維株式会社では、通気性が良く汗を吸収発散する『和泉木綿』の生地を活かした「アロハシャツ」が戦略商品です。アロハシャツの柄は、浴衣柄のリメイクやコピーではなく、自社でモチーフから描き起こした斬新なデザインを用い、あくまでシンプルで流行・トレンドにとらわれない日本人の顔に合った和柄のアロハシャツとして、大変人気があります。
また、平山繊維株式会社は、製品化・自社ブランド化に傾注しており、常に新しいものを取り入れて創造する努力を続けています。綿とシルクを交撚させることで、美しい色彩と光沢を表現する自社ブランドの生地「ORIIRO」を立ち上げるなど、和泉木綿の生地を活かした新たなブランド展開に積極的に取り組んでおり、このような企業がリーディングカンパニーとなって、産地を牽引していかれることが期待されます。
近畿経済産業局 産業部 製造産業課
電話:06-6966-6022