トップページ > 広報誌・E!KANSAI > 平成27年 4月号 企業・地域の取組紹介
最終更新日:平成27年4月1日
門真市は大阪府の東北部にあり、標高は低く平坦地で、市域は東西4.9㎞、南北4.3㎞、面積は12.30㎢で府内38番目とこじんまりとしていますが、大阪市と隣接する交通利便性の高いまちです。幹線道路としては中央環状線と近畿自動車道が南北に縦断し、国道163号線と第二京阪道路が東西に横断しており、大阪府内のみならず京都方面までアクセスが容易な地域です。このため、人口密度は全国12位と、小さいながらも大きなパワーを秘めた都市です。
歴史的には、河内の穀倉地帯として発展し、明治維新後、れんこん栽培が最盛期を迎え、全国的に「河内れんこん」の名が広まっていきました。
その後、明治43年、京阪電車の開通で門真の様子は一変し、道路の整備とも相まって工場などの誘致が進み、昭和8年には松下電気器具製作所が誘致され、世界的な大企業に躍進するとともに、下請・関連工場も増加することで、ものづくり産業集積を成してきました。
パナソニック株式会社、東和薬品株式会社、株式会社天辻鋼球製作所、タイガー魔法瓶株式会社、株式会社柳澤製作所、株式会社海洋堂などの本社所在地としても知られています。
門真の企業は、いわゆる“松下(パナソニック)城下町”を支えてきたこともあり、高い技術力を有する企業が数多く存在しています。特に、金属加工やプラスチック、ゴム成型等に取り組む企業が集積し、様々な分野の産業を支えています。
しかしながら、大手家電メーカー等の海外展開等に伴い、受注も減少し、市内企業の多くは下請からの脱却を余儀なくされてきました。
こうした流れの中、門真市では平成22年3月に、「門真市第5次総合計画」において産業振興を市政の三本柱のひとつに位置付けるとともに、「産業振興ビジョン」を策定し、地域企業の活性化を第一義においた内発的な産業振興施策に取り組んでいます。
平成24年には「門真市ものづくり企業ネットワーク」を組織化し、市内企業の顔の見える関係作りから企業間連携の促進に取り組んでいます。さらに、「門真市中小企業サポートセンター」を設置し、専門家によるきめ細かい企業支援体制を構築しております。これらを産業振興の両輪施策として展開し、企業の基盤力強化から企業間連携による新規ビジネス創出支援まで一貫した企業支援を行っています。また、平成23年度から開始した、卓越した製品・技術を有するものづくり企業を認定する「カドマイスター認定制度」も4年目を迎え、門真の顔となるものづくり企業33社が認定されています。
さらに、平成26年には、地域の金融機関の支援機能も加味した地域における産業支援体制を構築するため、守口市とも連携し、「もりかど産業支援機関ネットワーク」を立ち上げ、創業支援等にも積極的に取り組んでいます。
このように地域企業の活性化に取り組む中で、その技術力を背景に、自動車、医療、航空機等の新規成長分野への進出や自社ブランド製品の開発に取り組むなど、積極的な事業展開を行う企業が目立っています。こうした門真の元気な企業の取り組みの一端をご紹介します。
臼谷電子株式会社は、創業より50年、電子機器の部材調達から回路設計・製作に至るまでの一貫生産に対応しています。多品種少量生産、短納期対応に強みを有しており、IT機器、アミューズメント、医療機器、産業機器等、幅広い分野において、設計から加工・組立てまで多種多様なニーズに対応しています。
大手家電メーカー等からの発注に対応することで技術力を高める中、自社ブランド品の開発にも取り組んできました。スポット溶接機は主力製品で、最大容量135ジュールの小型静電蓄勢式抵抗溶接機「ミニミニウェルダー」をラインアップしています。電力のチャージ時間を従来の2分の1に短縮、電力設定をデジタル表示にしたほか、設定値以下で作動しない仕組みにして電力不足による不良溶接を克服することで、鉄やステンレスの薄板、線材など多様な素材と形状の材料を高精度に溶接できる機器で、医療分野で血管ステントグラフの製作に用いられるなど、大学研究室やものづくり企業の開発現場において、その小回りの利く特長が評価されています。
また、関東の電流制御機メーカーとの連携により、生産用途向けの大容量の抵抗溶接機の開発に取り組んでおり、年内にプロトタイプ機器を投入する予定です。ますます高度化し続けるエレクトロニクス分野において、同社は国内でのものづくりにこだわり、現場をサポートする独創性のある技術を提供し続けていくことを目指しています。
SST設計開発センター株式会社は、平成16年創業以来、ユーザーの「商品設計開発」の支援を行うことを主業務としています。
同社の強みは、日本国内80社、海外5グループ80社に及ぶ設計・試作対応ネットワークです。これを背景に、民生品、産業機械等広範囲にわたり、企業の設計からモデル製作まで一貫して受注できる体制を整備しています。現在では50種類以上の加工工程に応えることができ、ODM生産にも対応し、デザインから試作品の提供、量産品の作り込みまで設計サポートしています。また、自社独自開発製品として、安定化二酸化塩素除菌消臭器(Dr.ClO2)をシリーズ化して販売しています。
現在、同社の主たるユーザーは、自動車産業、家電業界が中心となっていますが、新たに、食品・医薬業界への参入を目指し取り組んでいるのが、「防虫・防除ネットワークシステムサービス事業」です。これは、食の安全確保のため、異物とりわけ“虫”の混入を防止するため、ネットワークによる常時監視システムと、専門家による原因特定・対応アドバイスをタイムリーに提示するコンサルティングサービスを提供するもので、西日本食品産業展示会での試作品発表後は引き合いが増加し、マーケットの反響も上々です。
同事業は同社の保有する基幹技術、設計開発技術に、これまで拡大してきたネットワーク企業の強みを持ち寄ることで実現したビジネスモデルであり、現在、グリコ本社での実証試験を踏まえ、新たに、グリコ兵庫アイスクリーム株式会社においても実証試験が予定されるなど、今後の同社事業の柱の一つとして成長が期待されています。
大峰化学株式会社は、1960年の創業以来、ナイロン樹脂を頭に持つ金属ネジとしての自社製品「オオミネプロネジ」を開発してきました。熱可塑性樹脂を使用して熱硬化性樹脂以上の強度を実現し、大手農業関連メーカー等に幅広く利用されています。その技術を生かした各種プラスチック製品の成形加工メーカーとして、精密かつ高品質のプラスチック部品の製造を行っています。特に、「オオミネプロネジ・ソフト」は、ナイロン樹脂と特殊エラストマー樹脂による2層構造で、今までのノブネジとは一線を画した、把持部の柔らかいノブネジで、医療機器分野や、高齢者が使用する介護機器分野の市場を新たに切り開きつつあります。
同社の大西社長は昨年、新事業「カドマルシェ」を立ち上げました。「カドマルシェ」は門真の自慢を提供するネットショップです。販売している商品はすべて門真を愛する人たちが創ったもので、厳選した素材をいろいろなプロの手を経て“ かどまもん ”として販売しています。
現在は、門真の特産品“門真れんこん”を素材にした、れんこん焼酎「露蓮(ろはす)」や門真れんこん100%使用、無添加の、フリーズドライ製法で微粉末化したレンコンパウダー「れんこん100」を提供しています。
すでに、6次産業化事例として、市内の洋菓子店「パティスリーエルブランシュ」とのコラボで、生地に門真レンコンパウダーを混ぜ込んだモチモチ食感のロールケーキ「蓮根(はすね)ロール」が生まれるなど、メイドイン門真となる新たな地域自慢づくりに邁進しています。
株式会社関西米穀は、こだわりのお米販売で地元のお客様に愛され、100年を迎えます。病院や飲食店等の業務用販売に、インターネットや宅配・店舗売りによる個別販売と、安全・安心なお米を納得の価格で提供しています。
インターネット販売を手掛けたのは6年前、低迷する経営状況から脱却するための挑戦でした。当時先行していた関東の企業から遅れること2年、徹底した研究により楽天にも出店し、検索上位を獲得しました。こうした取り組みが新たな販路の確保につながっただけでなく、仕入れルートの拡大にもつながり、現在では生産者からの直接買い付けが5割を超え、商品の多様化、高品質化により、安全・安心にこだわる顧客ニーズに積極的に対応しています。多様な仕入れ先は同社の最大の強みとなり、業務店舗向けの需要が急拡大し、同社のⅤ字回復に貢献しています。
同社の北口専務は、昨年4月、同社の所在する「門真本町商店会」の理事長に就任しました。生まれ育った商店街をもう一度盛り上げようと青年部が立ち上がり、役員全ての世代交代を行いました。今までは個人でしか行ってこなかった宣伝活動もHPやソーシャルネットワーク等インターネットを使ったPR活動や毎月のように打ち出すイベント企画など、その取り組みも研究を重ね、徹底しています。
近所の人の顔がわかる昔ながらの付き合いのある、子供たちにとって安心な楽しいまちを目指しつつ、本業でも安全・安心な食を提供したいとの思いが、新たな挑戦を後押ししています。
株式会社スリーエフ技研は、世界に一つをモットーに、オーダーメイドで産業用大型研磨ホイールを製造し、世界7カ国に輸出するとともに、タイに合弁会社を設立するなど、積極的に海外展開に取り組んでいます。同社の製品は特殊用途向けが主なマーケットです。羽田空港滑走路の橋脚支柱や高速道路の排水溝研磨など、それぞれの課題に応じてカスタマイズすることで、一品モノを完成するノウハウを積み上げてきました。
製品の特長は素材の選定です。特別な用途向けに様々な原料を取り揃えており、日本の大手研磨材メーカー各社に加え、ドイツのメーカー等との取引もあり、原料の選択肢が多い事が優位性につながっています。また、加工においては、冶具がポイントです。研磨材を冶具にあて、固めては崩しを繰り返し、徐々に指定の形状と硬さに仕上げます。20年以上の熟練技能者が手仕事で30分かかる工程です。
同社はこの工程を工夫とアイデアで自動化し、品質の均一化と生産性の向上を実現しました。これにより、特殊用途向け研磨ホイールの量産化が可能となり、汎用的な使用ニーズにも対応することが期待されています。
また、同社の研磨ホイール技術を活用し、別法人として株式会社Aglaia(アグライア)を立ち上げ、JR西日本、西日本電気システム、ニートレックスと共同で、「レール研磨装置」を新規開発し、現在、JR西日本での実証試験に取り組むなど、自社製品開発にも積極的に取り組んでいます。
この技術は、海外からも大いに注目されています。台湾の桃園空港に繋がる空港線全線での採用が実績となり、海外からの引き合いも増加しつつあります。
株式会社スリーエフ技研はこれからも、国内外の新たな課題を一つひとつ解決していきます。
大日運輸株式会社は、道路貨物運送業として40年近く建材の現場配送業務に携わってきましたが、15年前から、顧客の商品(建材)をただ預かり配送するだけではなく、それに「加工」という付加価値を加える「ものづくり」に参入しました。これにより、会社の経営が安定し、永年ドライバーとして勤めてきた従業員に、引退後も新たな仕事を任せることができ、安心して生涯働き続けることができる職場づくりを実現しました。
新築木造住宅の外装には、サイディングボードと呼ばれる外壁板材が使われます。建物の角の部分は出隅(でずみ)と呼ばれますが、その施工は、 建物の形状に合わせるために、技術を有した職人さんが現場で調整加工する必要があります。そのため、出隅施工には技術ノウハウとある程度の工期が必要でした。
同社は、特注の出隅加工を請け負い、プレカット品を現場に供給することで、こうした課題を解消しました。
長年の建材現場配送で培った知恵と経験を武器に顧客ニーズにあった提案営業が功を奏し、今では運送部門を超える事業にまで成長し、さらに、現場で発生する廃材を活用したエコ出隅を、超短納期で現場納品するという、より環境に配慮したビジネスモデルの実現にも取り組んでいます。
同社は若手から70代まで様々な世代の方が元気に仲良く働く職場です。工程も働く人に合わせて、従業員が相互にカバーできる仕組みとなっています。
熟練者や女性に若手がうまく融合し、多様な人材が能力を発揮できる社風が同社の強みです。
会社が家族のような空間となることを目指す思いが、同社のビジネスに新たな展開をもたらしています。
ヨーホー電子株式会社は、電子機器製品に使用する基板ユニットの実装メーカーです。
パナソニックをはじめ民生機器メーカーの下請けとして創業した同社ですが、時代の趨勢を捉え、産業機器、アミューズメント分野等に事業領域を戦略的に拡大し、さらに基板設計にも取り組むことで、設計から実装までの一貫生産のノウハウを積み上げました。こうした経験を踏まえ、OEM生産にも取り組み、現在では、LEDモジュールの自社製品の製造販売にまで至っています。
防水設計をはじめLEDの実装・設計技術に優位性を有し、社内での一貫生産体制も構築し、多品種少量短納期対応力が高く評価されています。
自社製品LEDモジュール「輝烈(KITERETSU)」は、拡散レンズを自社独自で設計することで、他社と配光特性を差別化したLEDレンズモジュールとなり、業界最薄(75mm)、最小を実現し、屋外向け看板照明の厚みを半減させることができるなど、その活用が期待されています。すでに看板施工業者の株式会社大宣企画とのコラボにより、大阪府内のトヨタ店舗に多数導入されるなど、その製品メリットに加え、何より施工のやりやすさが評価され、活用実績は着実に広がりつつあります。
現在は、看板照明及び産業機器向けがメインターゲットですが、今後は、この業界最薄LEDモジュールを武器に、住宅用間接照明や、紫外線LED(UV-A)を使用することで植物の発芽や育成促進、補虫用途向けなど、大手では参入しにくいニッチ分野への販路拡大を目指すなど、自社製品比率を向上していくための新たな戦略に取り組んでいきます。
市内企業の挑戦はこれだけにとどまりません。植物工場用のトレイや導光板、航空機用の精密加工部品、医療用の部品等の提供、あるいは介護分野における自社ブランド製品の開発など、新たな展開を見せる企業が揃いつつあります。
門真市は、こうした企業の積極展開を側面支援するため、門真市中小企業サポートセンターのアドバイザーがハンズオンで支援する体制を組み、各々の事業の課題を抽出し、技術マッチングや販路マッチング、経営戦略策定サポート等課題に応じた支援メニューを提供して参ります。
門真市の産業振興はまだまだ緒についたところですが、“メイドイン門真”となる新たなビジネスを次々に生み出す環境整備をさらに加速させ、将来的には、国内屈指のビジネスに取り組みやすいまちと認識されることを目指して、取り組んでまいります。これからの門真市の産業振興と活力ある企業群にご期待ください。
近畿経済産業局 総務企画部 総務課 広報・情報システム室
電話:06-6966-6009