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ダイバーシティ経営企業100選について
~多様な人材の活躍が、企業の成長力に繋がる~
担当課室:産業人材政策課

最終更新日:平成27年9月1日

 経済産業省では、様々な規模・業種の企業における「ダイバーシティ経営(※)」への積極的な取組を「経済成長に貢献する経営力」として評価し、ベストプラクティスとして発信することで、ダイバーシティ推進のすそ野を広げることを目的として、「ダイバーシティ経営企業100選」事業を実施しています。

 平成24年度から3年間で141社を表彰しました。近畿経済産業局管内では、平成26年度は11社が表彰されました。

 近畿経済産業局では平成26年度に選定された近畿管内の企業の取組を5回に分けて紹介させていただきます。今月号は第2回目として2社の取組をご紹介いたします。

 

※ダイバーシティ経営とは「女性、障がい者、外国人、高齢者など、多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」のことです。

川村義肢株式会社

 “Think Possibility”で障がいがハンデとならない工夫を積み重ね、ノウハウを活かした新たなサービス展開に取り組む

ダイバーシティ経営の背景

 1946年に創業した川村義肢株式会社は、義肢・装具・車椅子・介護支援機器などの製造販売を行っています。

 創業当初から身体障がい者を多く雇用し、ユーザーとしての視点を商品開発に活かしながら成長してきました。「当事者の立場から物づくりができ、障がい者から学ぶことは多い」という経営トップの思いがあり、また、優秀な技術者として指導的立場となる障がい者も多かったことから、同社では、障がいのある社員と共に働くことはごく自然なことであるという風土が培われてきました。

 現社長が3代目に就任するタイミングで介護保険法が施行されるなど、障がい者や介護を取り巻く社会環境は大きく変化し、急激な業績悪化を受け、従来通りのやり方ではこの先立ち行かないことを覚悟した社長は、経営理念の再定義とともに、業務再編や品質管理システムの導入などに着手しました。

取組内容

(1)経営理念に基づく「ミッション・ステートメント」の設定

 「ソウルパートナー(社員)とお客さまのQ.O.L向上を絶対にあきらめない」という企業理念を具体的な行動指針に落とし込んだものが、KAWAMURAグループの定める31のミッション・ステートメントです。単に義肢装具を作るだけではなく、「その人の生命、生活、人生がよくなるもの」を提供するのだという思いが「Q.O.L 向上」という言葉にこめられています。

 企業理念については以前より定められていましたが、社員の行動レベルにまで浸透してはいない状況であったため、それを補う形で、ミッション・ステートメントを設定したことで、どのような行動をとるべきかが丁寧に説明され、社員にも企業理念の言わんとするところが実感として理解できるようになってきています。この結果、いざ問題や揉め事などが起こったときにも、理念に立ち返ればとるべき行動、とるべき判断が見えてきて事態が収まるといった変化も現れてきています。

 また、経営トップを中心に、同社の中での合言葉として、「Think Possibility」、すなわち「できることを考えよう」ということを積極的に唱えています。例えば、上肢欠損の障がいのある社員に対して、「片手では何ができるか」「この機器を使えばここまでできるのではないか」とプラスの側面をあげていくような思考こそが重要だとしています。従来、同社では身体障がいのある社員は日常的に活躍していましたが、一方で精神障がい者や知的障がい者には接する機会が少なく、いざ受入れとなった段階でも不安が先に立つような状況でした。

 しかし、書類のスキャンなどの単純作業から始め、徐々に複雑な入力作業なども速く正確にこなすようになっていく成長ぶり、活躍ぶりを目の当たりにすることで、気づかない間に自分たちの中に偏見を持ってしまっていたことに社員自身が気づくようになりました。また、互いを尊重し合いながら働く中で、障がい者自身も社会的な成長を遂げ、例えば以前よりも身だしなみを気にかけるようになるなど、変化も現れています。

 「完璧な人間などいない」という認識のもと、どれだけ相手のことを考えて自ら動くことができるか、これを追求する「利他の経営」こそが、今後同社が目指す姿であると経営層は捉えています。また、「できることは何か、どのようにすればできるようなるか」を考えることが、企業への就労支援サービスの展開(後述)にもつながっています。

 

(2)品質管理システムの導入による技能継承と経営改善の実施

 同社では、製品の品質管理にも力を入れています。従来、義肢装具の製作はオーダーメイドの世界であり、標準化や機械化はできないと考えられていました。しかし、現社長が就任した後、経営改善のためには標準化の仕組みを導入することが不可欠との思いに至ったことに加え、技能継承の困難さから事業廃止に至る同業他社の例を間近で見る中で、製造部門も含めた全社で品質管理を実施していくことをトップダウンで断行しました。

 社長直轄のプロジェクトチームを立ち上げ、品質保証課を中心として、各部門での業務プロセスを文書化する仕組みを整え、2005 年には品質マネジメントシステムであるISO9001を取得しました。

 「技術は自分の頭の中にあるのだ」という製造部の“職人”は、当初品質管理システムの導入に反対していました。そこで社長は、製造に関しても“3、4年の修行で誰でもできるようになるスキル”と“この人でなければできないスキル”を区分し、少なくとも前者だけは標準化の仕組みは必要であると説得、標準化の過程で全ての部署の業務プロセスを細分化し、「見える化」することに成功しました。

 この全社での業務プロセス改善が、その後に同社が取り組む障がい者の積極雇用に大きく貢献することとなりました(後述)。

 

(3)品質管理システムに基づいた業務分担・適性配置と人材育成システム

 前述のような業務プロセスの文書化、「見える化」が進んだことで、当該部署の業務内容とその業務実施にあたって必要となるスキルとの整合を取ることが可能になり、例えば、広報部の「会社見学ツアー」に係る業務であれば、必要となるのは「見学の受付」「会社受付への連絡」「当日の案内」などの作業に細分化されます。これらの作業を、1人で完全にできるか、同僚の助けを借りればできるか、まだ1人ではできないか、といった達成度の観点から評価することになります。作業内容の細かさは各部署によって異なっており、例えば製造部では「ボール盤で正確に穴を空ける」といった個々の詳細な技能で区切られています。

 これを、同社では全ての部署、全ての業務についてリストアップし、縦に作業項目、横に社員名を配した一覧表で管理しています。これを「力量表」と呼び、“現在”の社員のスキル習得度合と各部署の業務内容が一括で管理できるようにし、部署全体の業務効率化や社員個人の能力開発など幅広い側面で利用されています。

 一方、“将来”について業務と社員個人をマッピングしたものを「業務分担表」、“現在”と“将来”をつなぐプロセス部分を「教育進捗計画書」として、それぞれ「力量表」と対応させるかたちで整備しています。「業務分担表」では、将来的に、どの社員にどのような役割を担ってもらうかを全社の組織や機能と勘案しながら検討し、そのうえで、「社員Aさんの育成については、Bさんがこの期間でこのような方法で教えていく」といった個人の育成計画を「教育進捗計画書」として個別に定めています。こうすることで、社員個人のその時点での能力やスキルを客観的に評価しながら、その次に向けていかに教育していくかという道筋が明確になってきます。

 同社では10年かけてこの仕組みをブラッシュアップしてきましたが、ある時期より、各部署からの採用要求や退職社員の補充要求の際に「力量表」を添付することを制度化しました。そうすることで、現状の業務の中でどこがカバーできていて、どのスキルは足りていないのかが一目瞭然になるため、より適切な人員を配置しやすくなります。例えば、縫製を担当していたパート社員が退職する場合には、その社員の力量表の列にマーキングし、担当していた作業内容やスキルのレベルを明確にしてから、新たな人員配置を検討することになっています。

 この仕組みによって、各社員に要求される業務要件が明確化され、“何でもできる”“いつでも働ける”「正社員」の採用・配置にこだわる必要がなくなりました。あるスキルを満たしていれば、そのスキルを要する部署に配置することで、「一人前」の仕事をすることができる。その結果、精神障がいや知的障がいのある社員を受け入れるにあたっても、“何となく”できそうな業務の部署に配置するのではなく、その特性や能力と業務とを的確にマッチングすることが可能になっています。その結果、現在では障がいの有無にかかわらず、全ての社員を同一の基準で評価できるようにもなっています。

 

(4)ハード・ソフト両面から「バリアを外す」取組を実施

 同社は採用に関して「障がい者枠」を設けず、営業、製造、販売については一般の採用プロセスで面接を行っています。採用にあたっては人柄や企業理念への理解・共感を重視し、配属についても障がいの有無で区別することはありません。

 同社は義足や車椅子、住環境整備の“プロ”であり、それら機器などの性能は最もよく理解しているという自負を社員全員が持っています。社内においても自社製品などを有効に活用することで、仕事がしやすくなりQ.O.Lが向上するといった事例が数多くみられています。例えば、これまで杖で歩行をしてきた下肢障がいのある社員に対し社内での電動車椅子の利用を勧めたところ、行動範囲が格段に広がり、仕事の幅も広がっています。このような環境改善は社員個々人に応じて行われており、車椅子の社員が入ってくれば机の高さの調整やレイアウト変更を行ったり、構音障がい(発話が困難)の社員が入ってくれば同社が取り扱うコミュニケーション機器を活用したりするなど、一人ひとりに合わせて柔軟な運用を行っています。また、これは職場環境だけに限らず、業務プロセスについても同様であり、障がいによって不都合が生じるプロセスは省いたり簡略化したりし、“業務を人に合わせる”ことで対応を行っています。

 例えば、全盲の社員が議事録を作成する場合、従来の社内帳票のフォーマットでは記入欄が細分化されすぎており入力が困難でしたが、フォームを変更することで簡単な入力作業だけで議事録が完成するようにシステムを変えたこともありました。前述の品質管理システムにより業務プロセスが明確化されているため、ある業務のどこが本質で、どこは変更可能かがすぐにわかることから、そこで働く社員の事情に合わせて柔軟な変更や調整が可能となっています。

 一方、働き方の面では、時間や場所を柔軟化する取組も行われている。時差出勤も認め、7.5時間の勤務時間を前後にずらすことは所属長の許可で可能にしています。この背景には、「代わりのきかない大切な社員に長く勤めてもらいたい」という経営層の強い思いとともに、「ソウルパートナーとお客さまのQ.O.L 向上を絶対にあきらめない」という同社の企業理念に基づき、物理的、心理的なバリアを、“スロープ”をつけて外していく取組を続けています。

成果

(1)障がいや制約の有無にかかわらず一人ひとりが能力を発揮し新たな事業展開へ

写真:以下に解説
障がいの有無にかかわらず
誰もが「一人前」に働く様子

 前述のとおり、義肢装具を使用する障がい者自身が、指導的立場で技術の伝達、後継者育成、製品開発に携わり、現在の「技術のKAWAMURA」の礎を築きあげてきました。品質管理の仕組みを経て、ベテランの社員から若手社員への技能の継承も円滑に行われるようになっており、同社の製造を支えています。その開発の代表製品である短下肢装具「ORTOP AFO シリーズ」は、年間売上約14,000個(エンドユーザー価格にて約5億円)に上り、装具業界の標準製品となるまでに成長しています。

 一方、障がいの有無や時間制約の有無にかかわらず、多様な働き方を柔軟に推し進めてきたことにより、育児中の女性社員なども活躍し続ける場が創出されてきています。また、ショールームなど顧客に接する業務にも障がいのある社員を積極的に配置するなど、職域拡大の試みも続けており、企業理念を体現した職場環境であることを社会に向けてアピールする場となっています。

 また、社内で培われた障がい者とともに働くためのノウハウを取りまとめ、他企業に向けて発信する取組も、社員からの提案で実現しつつあります。将来的にはコンサルティングサービスとも組み合わせて、新たな事業の柱として展開していくことが想定されています。

掲載関連情報

企業名
川村義肢株式会社外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
大阪府大東市御領 1-12-1
電話番号
072-875-8000

有限会社奥進システム

 働く意欲と能力のある障がい者やシングルマザーを積極雇用、新たなビジネスの機会を得て事業拡大へ

ダイバーシティ経営の背景

 有限会社奥進システムは2000年創業、中小企業向け業務管理システムの受託開発を実施しています。創業者である現社長は当初、会社と自宅をネットワークで結び在宅勤務を基本とするSOHOスタイルを想定し、その時に頭に浮かんだのが、前職時代に結婚や出産を機に退職していった女性たちでした。様々な経験を積んだ有能な人材がキャリアを断念していくのを“社会的損失”と感じ、「仕事をする意欲と能力がありながら、毎日の出勤が難しく仕事をあきらめている人」の雇用を検討しました。そこで、システムエンジニアとしての能力のあるシングルマザーや障がい者にターゲットを定め、適任者がいないか就労支援機関などを回り探し始めました。当初の想定とは異なり、就労支援機関で紹介される女性は専門技術を持たないことが多く、システム会社で即戦力となる女性は見つかりませんでしたが、障がい者については2006年に大阪市職業リハビリセンターからの紹介で身体障がい(上下肢障がい)のある人材と出会い、雇用に至りました。

 その後、就業機会の限られている精神障がい者の雇用も進め、2015年8月現在では重度を含む障がい者が7名在籍しています。システム構築は経験のある人材を採用し、身体障がい者2名(1名がリーダー)、精神障がい者3名を含む5名で大阪市内を中心に中小企業の業務管理システムや営業支援システムの構築を行っています。また、シングルマザーの社員が1名おり、社員それぞれの必要に応じて、在宅勤務の制度なども柔軟に活用しながら働いています。

取組内容

(1)在宅・遠隔地での業務を円滑化させる環境整備

 社員が持つ個々の事情に配慮しつつ働くために、同社では何か問題が生じるごとに一つずつ最善の方法を話し合い、それを独自にルール化してきました。

 まずオフィス環境としては、車椅子の社員2 名が出勤した際にスムーズに移動ができるよう、完全バリアフリー化を行っています。力のいらない吊り下げ式の引き戸や電気のワイドスイッチ、スロープの設置のほか、車椅子での作業や会議の際に不便のないよう机を高めにするなどの工夫もしています。

 またOA機器についても、一般的なマウスが使えない社員のためにトラックボール(指先や手のひら、足などを使ってボールを回転させてカーソルを操作するマウス)を導入、在宅勤務用にVPNサービス(遠隔地から事務所のパソコンやサーバにアクセスできる)や無料インターネット電話も導入しています。テレビ会議、電話会議については、事務所と社員の自宅だけでなく、場合によっては顧客に機器などを貸し出し、事務所と顧客先をつないで遠隔会議を行うことも可能となっており、実際に遠隔地や車椅子での往訪が難しい顧客先との打合せで活用されています。

 これらの環境整備には、一部国の助成金などを利用しているものの、「自社にとって必要な人材が快適に働くため」の投資としてコストをかけています。実際に、これらの整備によって当初は週に1 回の勤務しか叶わなかった社員も、現在では月・水・金の週3 回の出勤が可能となり、火・木の在宅勤務と組み合わせて業務をスムーズに進めています。

 また、子どもを持つ社員で急遽在宅勤務が必要になるような場合にも、柔軟な対応や円滑な業務遂行が可能となっています。

 

(2)個別事情に合わせた働き方を保証する明確なルールの設定

 当初は在宅でのSOHOスタイルを志向していましたが、事務所への出勤を希望する社員がいたことをきっかけに、勤務日や時間を柔軟化させるルールを制度として導入し始めました。

 同社が現在取り入れている制度は、勤務時間を週30・35・40時間の3種類から選択でき、月ごとに変更可能な「短時間勤務制度」、有給休暇のうち最大5日分(40時間)までを1時間単位で取得できる「時間有給制度」、1か月単位で労働時間を調整できる「変形労働時間制」などです。

 「短時間勤務制度」は、障がいのある社員が徐々に出勤に慣れるよう、週30時間の契約から始めて、35時間、40時間と少しずつ勤務時間を延ばす場合などに利用されています。また、「時間有給制度」は、通院や学校の保護者会などで数時間だけ不在にする場合、上司への事前申請で利用が可能であり、これらは、実際の社員のニーズを基に同社の状況に合わせて制度化したものです。この他にも「残業の原則禁止/残業の事前申請制度」や、疲労軽減のために午前・午後に1 回ずつ必ず10分間の「休憩」を取ることなどを社内ルールとして定めています。

 社員の要望に合わせて柔軟なルール整備を行うことで、様々な事情を抱えた社員が働き続けられる職場環境が徐々に整ってきています。

 

(3)作業進捗も体調も、日常的な情報共有で社員が相互に把握

 “常に会社にいるわけではない”社員が大半である同社で、業務を円滑に進めていくためには緊密な情報共有が欠かせません。特に、担当者が急に休んだ場合などは作業の進捗や顧客対応に影響が生じるおそれがあり、穴が開いても別の社員が対応できる体制にしておく必要があります。

 そのため、業務の情報共有としては、メーリングリストを部署ごと・プロジェクトごとに作成するほか、社内掲示板や共有スケジューラーを活用しながら、プロジェクトの状況、個人の作業の状況などを関係者が誰でも確認できる仕組みとしています。

 また、在宅勤務者も含めて毎日朝礼を実施しています。始業時間になると、事務所では全員が集合し、在宅者はインターネット電話を立ち上げ、全員でその日の予定や作業内容を確認し合うこととしています。さらに、毎日終業時にはシステム上で日報を作成することになっていますが、そこには作業内容や進捗状況の他に、体調やコメントを書き込み共有する仕組みが取られています。日報は社長が全て目を通し、コメントを返すことで、社員一人ひとりの状況を細かく把握することが可能になっています。

 特に、精神障がいのある社員の体調管理については、毎日の状況を振り返るデータとして利用可能なシステム開発を行い、そこで自身の体調を可視化する工夫(システムについては後述)のほか、部署内で週1回、社長とは月1回の「振り返り」を実施し、体調や作業の進め方などについて話し合い、改善を図るようにしています。

 身体障がいとは異なり、精神障がいの場合は実際の体調や必要な配慮などが外からわかりにくいことがあるため、周囲もどのようにサポートしてよいのか戸惑うばかりか、「元気そうだったのになぜ急に休むのか」といった不満が溜まることもありました。そのような状況を解決するために、同社ではかつて、自らの症状や状態を話し合う機会を「障がいプレゼン」として開催したことがありました。社長から発言を強要することはありませんでしたが、社員自らが進んで、自己の障がいや病歴、必要な配慮などをざっくばらんに発表しました。それによって、相互の理解がさらに深まると同時に、普段サポートしている社員以外でも適切な配慮や支援を行うことが可能となりました。

(4)特性に応じた業務分担と公正な評価の実施

 同社で採用されるのは、前述のようにシステム会社で即戦力として活躍できるスキルや経験を有した人材ですが、それでもプロジェクトの内容や顧客への要望に対して、常に新しい技術を習得していく必要があります。また、その技術レベルや個々人の得手不得手に応じた業務分担を行い、スケジュール通りに作業を進めていく必要があることから、マネジメントの役割も重要になってきます。

 まず、リーダーはメンバー個人の特性を把握したうえで、仕事の任せ方を考えて割り振るようにするほか、作業指示にあたっては内容や期限を明確化したり、指示命令系統を一本化したりするなどの工夫を行っています。また、「苦手なことはやらせない」という考えのもと、障がい特性による不得手な作業(電話対応など)がある場合には、別の人がフォローするルールとしています。

 評価としては、年に1回、360度評価を実施しており、部署内(システム開発、営業)で全員が全員を評価する仕組みとしています。評価のポイントや基準は全員共通ですが、リーダーの持ち点の比重を高く設定し、マネジメントの意向に沿った評価結果となるように工夫しています。

 なお、この360度評価を行うにあたっては、毎年事前に勉強会を開催し、1つのモデルケースに対してどのような評価を行うか妥当な線を探る“練習”を行っています。この“練習”で評価の観点をすり合わせるプロセスがなければ、評価結果にぶれが生じ公正な評価結果とならないことから、時間をかけて事前準備を実施しています。

成果

(1)障がい者自身の経験から開発されたシステム「SPIS」をはじめ、社員皆が事業拡大に貢献

写真:以下に解説
就労定着支援システム「SPIS」

 前述のように、働く意欲と能力のある人材を発掘し、きめ細やかなルール設定や環境整備、サポート体制を構築していくことにより、これまで就労が困難であった人材が存分に活躍し、事業の拡大に貢献してきています。人材の定着率は常に80%を超え、2011年から2013年は連続して定着率100%を記録しています。

 また、精神障がい者自身が、自身の経験を踏まえて、精神障がいなどの社員の職場定着支援システム「SPIS」を開発するといった事例も生まれてきています。本システムでは、日報に入力した生活面や仕事のやり方などの自己評価がグラフ化され、視覚的に把握できるようになっています。このシステムは2013年より2つの企業で導入されたほか、独立行政法人福祉医療機構や大阪府などが実施する3つの事業で採用され、メディアでも取り上げられています。

 また、障がい者雇用の取組が進むにつれ、特例子会社や障がい者支援施設などとのネットワークも広がり、それが受注に結び付くケースも増えてきています。在宅勤務や障がい者雇用の実績が評価され、表彰される機会も増加しています。「私たちと、私たちに関わる人たちが、とてもしあわせと思える社会づくりをめざします。」という同社の基本理念の実践を通し、着実に事業拡大を果たしています。

掲載関連情報

企業名
有限会社奥進システム外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
大阪府大阪市中央区鎗屋町2-2-4 イチクラビル4F
電話番号
06-6944-3658

関連施策へのリンク

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このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 地域経済部 産業人材政策課
電話:06-6966-6013

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