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「日本の伝統的技術・技法を用いた商品」で「世界市場の開拓」へ
~伝統的工芸品産業の海外展開事例の御紹介~
担当課室:製造産業課

最終更新日:平成27年10月1日

 日本のものづくりの原点、文化の象徴として長年国民生活に潤いを与え、地域経済の発展に貢献してきた伝統的工芸品産業。時を経て、昨今はライフスタイルの変化による需要の低迷、後継者不足等さまざまな課題を抱えています。一方では、伝統的な技術・技法を活用し、時代の潮流や現代の生活様式に合った新商品が多数開発され、世界が共感するクールジャパンとして、日本の優れたものづくり技術が世界からも注目されています。

 今回は、伝統的工芸品の海外での市場拡大に取り組む事業者を紹介します。

株式会社井助商店(京漆器)

 株式会社井助商店は、文政年間に創業以来180年あまり、漆器、仏壇などに使われる漆を販売しています。50年程前から、漆商としてだけでなく商品企画を行い、職人と連携して製造する漆器を販売する卸業も行っています。7代目沖野社長になってからは、京漆器の伝統的技術を活かしたインテリアなど新しい分野の商品開発や海外展開にも積極的に取り組んでいます。

伝統的工芸品の一つである京漆器とは

 漆器は木、竹、紙などの素地に漆を塗り重ねて作る東洋独特の工芸品ですが、特に欧米では漆器のことはjapanと呼ばれ、日本の特産品と考えられています。

 室町時代以後、京都は茶の湯の文化などの歴史的背景により生み出された数多くの名工の手と技による品質やデザインの優秀性を原動力として全国漆器産業の中心として栄えるようになりました。その京都でつくられる京漆器はとりわけ薄い木地を用い、入念な下地を施し、洗練された優美な蒔絵が施されています。見目麗しい京漆器ですが、ハレの日の特別なものとしてだけではなく、日常生活に「潤い」を与える漆器として、モダンなものやカラフルなものまで数多く作られています。

写真:以下に解説
日本の伝統色にこだわった「KOMA」
写真:以下に解説
漆に色にこだわった「IRO-IRO」
写真:以下に解説
木の素材感を追求した「MOKU」

日本の京漆器を世界へお届け

写真:以下に解説
収納性とデザイン性に富む「MOKU」

 井助商店は海外での需要を拡大するため、2005年に京都の伝統工芸を扱う事業者とグループを組んでニューヨークのインターナショナルギフトショーに出展しました。ただ、当時は国内向けの製品を海外に持って行っただけにすぎず、手応えは十分に満足できるものではありませんでした。日本の伝統的工芸品である京漆器を世界に広げていくために、匠の技、文化、歴史など京漆器の持つ商品価値をシンプルに分かりやすく伝えなければならないことを実感したそうです。2012年からはそれまでの海外の経験をふまえて、デザイナーと協力して海外のニーズに合わせた商品開発を積極的に行っています。

 その中で生まれたのが、ヨーロッパの自然派ブームを考慮して開発された木肌をあえて見せるカップやお皿など、漆器としては今までにないテーブルウェアなどです。漆器ならではの軽さと持ちやすさ、口当たりの良さはそのままに、そこに収納性をデザインした新しくもシンプルな漆器は、長年育まれてきた職人との信頼関係があるからこそ出来るものであり、海外だけでなく日本の若者にも親しみやすい商品として誕生しました。

課題・今後の展開

 京漆器においても他の伝統的工芸品と同様に、職人の人手不足や高齢化は直面する大きな課題です。井助商店では京漆器の技術を継承していけるように大学生とのコラボ企画なども行っており、若い世代との関わりも大切にされています。

 今後、今まで培われてきた職人による伝統的な技術をなくさないためにも、海外展開などにより京漆器の魅力が若い世代にもいっそう伝わっていくことが期待されます。そのため、海外向けの製品開発に職人とタッグを組んでさらに力を入れて取り組んでいきたいとおっしゃっていました。また、家の中だけで使われる従来のテーブルウェアとしての京漆器だけでなく、ランプなどのインテリアアイテムの開発や外に持ち出して楽しめるiPhoneケースなどの新商品の開発も行っています。

 伝統的工芸品と言えば、高価で扱いづらいイメージがありますが、決してそういうものばかりではありません。日常生活に彩りを添えるアイテムとして身近に感じてほしいと沖野社長は考えています。若い人の目に飛び込んでくるような、見る人や使う人を楽しませてくれる新しい京漆器がきっかけとなって、より多くの人がその良さを感じてもらえることを願ってやみません。

掲載関連情報

企業名
株式会社井助商店外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
京都市下京区柳馬場通五条上る柏屋町344
電話番号
075-361-5281(代表)

株式会社京都美京(京鹿の子絞)

 株式会社京都美京は京鹿の子絞製品の製造および呉服製造販売を行っている会社です。先代までは京鹿の子絞の全行程を行っていましたが、現在では京鹿の子絞伝統工芸士(染色部門)の松岡専務が中心となって主に染色部門を担当しています。最近では、海外展開にも意欲的で、日本の伝統技術である絞り染めを用いてつくられた着物を世界へ送り届けるために新しい製品の開発にも積極的です。

京鹿の子絞とは

 鹿の子絞りとは絞り染めの一種で、総絞りにした模様が小鹿の背のまだらに似ていることからその名で呼ばれています。鹿の子絞りの中でも京都で生産される絹の布に鹿の子を施したものは「京鹿の子絞」と呼ばれ、昭和51年には国から伝統工芸品に指定されています。また、京都の絞りは各工程に専門の職人が携わり、分業で作業が進められます。そのため、人の手わざの積み重ね、それぞれの人の力量が作品の出来の善し悪しを左右します。微妙なにじみ具合やちょっとした偶然の絡み合いによって、ふたつとして同じもののない作品ができるのが京鹿の子絞りの特徴です。

写真:以下に解説
京鹿の子絞の着物
写真:以下に解説
(1)括り
写真:以下に解説
(2)染色

写真:以下に解説
(3)くくった糸をほどいて絞り柄に
写真:以下に解説
(4)染め上がり(途中)

最近の取り組み

写真:以下に解説
京鹿の子絞の技術を活用した
和紙のランプシェードなど

 京都美京では京鹿の子絞りの染色部門を担当しているため、職人によって異なる絞りの技術を考慮しながら何度も繰り返して理想の色に近づくように染め上げをされています。その日の天候や湿度等によって左右される色の変化を調整して安定させ、さらにニュアンスを表現する技術はまさに職人技といえます。

 また、着物の仕立て上げまで行っており、最近では着物を利用したついたてなども作っています。

 昨年、京鹿の子絞振興協同組合が実施したパリの展示会に参加し、海外展開に向けて新たな一歩を踏み出しています。海外展開することははじめての取り組みでとても勇気がいることですが、実際にパリの展示会に足を運んだことで視野も広がり、海外での経験が評価され国内の企業イメージの向上にもつながったと専務の松岡氏は考えています。

課題・今後の展開

 伝統産業に携わる職人の方々の高齢化、後継者不足は京鹿の子絞りにおいても抱えている問題の一つです。京都の産地内では若手である若い松岡氏は熟練職人の技を学びながら、伝統技術を未来へつなげていく方法を探すべく経済産業省が実施している若い事業者向けのセミナーにも積極的に参加しています。

 また、これからは国内外問わず京都美京ブランドを全面に出していきたいということで、着物以外の商品で注目を引いて同社の着物の素晴らしさをもっと知ってもらうといった戦略に基づき、商品開発にも熱心に取り組んでいます。

 今まで培われてきた伝統技術を未来につないでいくために、若手である松岡氏だからこそこれから花開く小さなものにも気づくことができると思います。その時代の新しい要素を取り入れた商品の開発などに、期待したいと思います。

掲載関連情報

企業名
株式会社京都美京外部リンク 新しいウィンドウで開きます
所在地
京都府京都市中京区壬生中川町2-3
電話番号
075-841-8321

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近畿経済産業局 産業部 製造産業課
電話:06-6966‐6022

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