トップページ > 広報誌・E!KANSAI > 平成28年 3月号 特集

「ロボットによる新たな産業革命」の実現に向けて
~ロボットで様々な社会課題を解決~
担当課室:次世代産業課

最終更新日:平成28年3月1日

はじめに

 少子高齢化、生産年齢人口の減少が進展する中、ロボット技術は、製造業の生産現場、医療・介護現場、農業・建設・インフラの作業現場などの幅広い分野で、人手不足の解消、過重な労働からの解放、生産性の向上などの社会課題を解決する可能性を有しています。

 こうした中、「日本再興戦略」改訂2014(平成26年6月閣議決定)において、「ロボットによる新たな産業革命」(以下、「ロボット革命」)として、ロボット技術の活用により生産性の向上を実現し、企業の収益力向上、賃金の上昇を図ることなどが掲げられました。

 経済産業省では、この「ロボット革命」の実現に向け、関係省庁とも連携して様々な取組を進めています。

ロボットとは

 ロボットと言えばヒト型のものを思い浮かべられる方も多いかもしれませんが、経済産業省では、(1)センサー、(2)知能・制御系、(3)駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム(『ロボット政策研究会報告書』平成18年5月、経済産業省)をロボットと定義しています。

 例えばどんなロボットがあるかと言えば、製造分野でよく使われている溶接ロボットや組立ロボット、最近、徐々に普及してきた人間の上半身のような双腕型ロボット、医療分野で使われている手術支援ロボットや病院内搬送ロボットなどがあります。

 また、介護現場では、介護者の腕や腰の負担を軽減するためのロボット(介護者が装着するものや、ベッドがそのまま車椅子になるものなど)や、被介護者・高齢者の移動を支援するロボットなどが活用されています。

 防災・建設・インフラ分野においては、最近よくニュースなどにも登場するドローン(小型無人機)が、土砂災害の際に人が立ち入れない被災地の情報を上空から収集し、救命捜索に活用されているほか、がれきの下からレスキューを行う災害対応ロボットや、老朽化したインフラの点検を行うロボットなどに対する期待も高まっています。

 また、農業分野では、自動運転の技術を活かした無人トラクターや田植機のほか、介護と同じく重い荷物を持つためのアシストスーツや除草ロボットなども登場してきました。

写真:以下に解説
「ロボット革命実現会議」(第1回)参考資料より クリックで拡大(PDF:483KB)PDFリンク 新しいウィンドウで開きます

「ロボット大国」日本

 日本は、産業用ロボットの稼働台数(約30万台、世界全体の約4分の1)、出荷台数(約12万台)で世界1位(2014年)を誇る「ロボット大国」です。出荷額(国内生産拠点からの国内出荷額及び輸出額の合計)は約6,500億円で、そのうち約5,900億円を産業用ロボットが占め、自動車や電子機械産業が主要なユーザーとなっていますが、近年は輸出の割合が増え、2014年は輸出が約7割を占めるようになりました。また、2013年から統計を取り始めたサービス分野でのロボットの出荷額は、2014年には約600億円となり、そのうち国内出荷が約98%となっています。

写真:以下に解説写真:以下に解説
写真:以下に解説
国内ロボット産業の現状   「World Robotics 2015」より
クリックで拡大(PDF:154KB)PDFリンク 新しいウィンドウで開きます

 他方、世界市場を見てみると、全世界のロボットの年間導入額は14,789百万ドル(産業用ロボット(※電子部品実装機を除く):9,507百万ドル、サービスロボット:5,282百万ドル)で、国別では、2013年に中国が日本を抜いて世界1位となりました。

 しかしながら、ロボット生産においては、日本は世界シェア上位に複数の企業が位置する高い競争力を有しており、世界的な産業用ロボットの市場拡大によって、日本からの産業用ロボット輸出額は直近5年間で約80%も増加しています。しかし、中国市場の台頭により、ドイツ、韓国は中国への輸出額を直近5年間で10倍以上に増やしており、同じく4倍以上に増やした日本を含めて競争激化が見込まれます。

「ロボット革命」と「ロボット新戦略」

 こうした状況の中、2014年5月のOECD閣僚理事会において、安倍総理が「ロボットによる『新たな産業革命』を起こす」と表明し、「日本再興戦略」改訂2014に「ロボットによる新たな産業革命の実現」が盛り込まれました。

 また、これを受け、同年9月には総理のイニシアティブで、ロボットメーカー・ユーザー双方の有識者等からなる「ロボット革命実現会議外部リンク 新しいウィンドウで開きます」が設置され、2015年1月までに計6回の会議を開催、同年2月に「ロボット新戦略外部リンク 新しいウィンドウで開きます」が策定されました(平成27年2月10日、日本経済再生本部決定)。これが日本政府のロボットに関する2020年に向けた指針となっています。

 

 先述のとおり、現状、我が国は「ロボット大国」であるとともに、少子高齢化や老朽インフラの増加など、多くの社会課題を抱えた「課題先進国」でもあり、ロボットを活用して課題解決を図ることが期待されているとも言えます。

 また、諸外国に目を移すと、ドイツの「インダストリー4.0」や米国の「インダストリアル・インターネット」といったデジタル化・ネットワーク化を用いた欧米の追い上げや、中国などの新興国によるロボット投資の加速が顕著な状況にあります。

 こうした状況の中で、日本が「ロボット大国」としての地位を今一度高めるべく、「ロボット革命」というコンセプトを打ち出し、その実現に向けた取組を進めるための指針として「ロボット新戦略」が取りまとめられました。

 「ロボット革命」とは、(1)センサー、AIなどの技術進歩により、従来はロボットと位置づけられてこなかったモノまでもロボット化し(例えば、自動車、家電、携帯電話や住居までもがロボットの1つとなる。)、(2)製造現場から日常生活の様々な場面でロボットが活用されることにより、(3)社会課題の解決やものづくり・サービスの国際競争力の強化を通じて、新たな付加価値を生み出し利便性と富をもたらす社会を実現することを指し、「ロボット革命」の実現に向けて、(1)日本が世界のロボットイノベーション拠点になること、(2)日本が世界一のロボット利活用社会になること、(3)日本がIoT時代のロボットで世界をリードすること、の3つを柱として取組を進めています。

ロボット革命の具体像 クリックで拡大(PDF:233KB)PDFリンク 新しいウィンドウで開きます
写真:以下に解説

ロボット活用が期待される分野と課題

 「ロボット新戦略」では、2020年に向けた今後5年間をロボット革命集中実行期間と位置づけ、官民で総額1,000億円のロボット関連プロジェクトへ投資すること、ロボットの市場規模を現状の6,500億円から約4倍の2.4兆円(年間)へ拡大することなどを掲げています。

 また、今後ロボット活用を進めるべき分野として、「ものづくり」、「サービス」、「介護・医療」、「農業」、「インフラ・災害対応・建設」の5分野を重点分野として位置づけています。

 少子高齢化、生産年齢人口減少が進む中、ロボットを社会全体で積極的に活用し、過重労働・人手不足に対応することが求められていますが、積極活用する上での課題として、「コスト」、「ノウハウ」、「技術」、「制度」が挙げられます。

 例えば、ものづくり・サービス分野においては、中小企業が使える安価で汎用性があるロボットが必要であることや、ロボット導入を支援する事業者が不足していること、介護分野では、介護職員の7割が腰痛を抱えている中、職員の負担を軽減する使い勝手のよいロボットが必要であることや、ロボットの低価格化・導入を後押しする施策の充実が課題として挙げられます。

 また、インフラ・災害対応分野においては、ロボットによる点検が目視のインフラ点検と遜色ないことの実証が必要であることや、災害対応ロボットの市場が小さいこと、農業・食品産業分野では、農家が使える安価なパワーアシストスーツが必要であることや、柔軟不定形な食品をハンドリングする等の技術が必要であることが課題となっています。

「ロボット革命」の実現に向けた具体的な取組

 こうした課題を解決するため、「ロボット新戦略」の具体的な推進母体として2015年5月に「ロボット革命イニシアティブ協議会外部リンク 新しいウィンドウで開きます」が設置されました。協議会には、製造・サービス業に加え、農業、医療・介護、建設・インフラなど幅広い分野のロボットの作り手・担い手(システムインテグレータ、情報通信関係)となる関係団体や企業、関係府省庁が参画し、創立記念懇親会には、安倍総理を始め、各省庁から大臣等計14名が参加され、オールジャパンで取り組んでいく姿勢が示されました。協議会の下には「IoTによる製造ビジネス変革」、「ロボット利活用推進」、「ロボットイノベーション」等に関するワーキンググループが設置され、具体的な課題に取り組んでいます。

 また、「ロボット革命」の実現に向け、技術開発や導入実証の支援も行っています。分野ごとにロボット技術の成熟度に応じた支援策を展開しており、(1)実用化段階にある技術の導入加速から、(2)現場ニーズに即応した市場化技術開発、(3)広い分野で利用可能な次世代ロボット技術開発まで、3つのフェーズに分けた支援を行っています。

 (1)は、既に実用化されているロボットの未活用分野への導入を支援し、併せて、ロボット活用やシステム構築を支援できるサービス事業者(システムインテグレータ)を担い手として育成するものです。(2)は、3年以内の市場投入を前提に、特化すべき機能の選択と集中に向けた技術開発を支援し、価格低下を実現するとともに、現場ニーズに応じたロボットシステムを開発できる人材の育成を図るもの、(3)は、2020年以降を見据えた新たなシーズの創出を目指し、人工知能、クラウド、ビッグデータ等の最新技術を駆使するとともに、高度なセンサー等のハードウェアや、これらをネットワーク化して相互接続・連携稼働する要素技術を開発するものです。

 経済産業省関連では、平成28年度予算案として、「ロボット導入実証事業外部リンク 新しいウィンドウで開きます」23.0億円、「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト外部リンク 新しいウィンドウで開きます」15.0億円、「ロボット介護機器開発・導入促進事業外部リンク 新しいウィンドウで開きます」20.0億円、「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト外部リンク 新しいウィンドウで開きます」19.3億円、「次世代人工知能・ロボット中核技術開発外部リンク 新しいウィンドウで開きます」30.6億円が閣議決定されています。

 このほか、小型無人機や災害対応ロボット等の実証実験を行うロボットテストフィールドの整備や、ドローンの安全な利活用の推進に向けた規制・制度改革、ロボット国際競技大会の開催によるイノベーションの創出、ロボット大賞 によるベストプラクティスの発信と共有などに取り組んでいます。

 

 近畿経済産業局におきましても、ものづくり・サービス分野におけるロボット導入促進に関する課題の整理やロボット導入モデルイメージの作成等により、ロボット導入支援を行ってまいります。取りまとめ結果は近日中に公表する予定です。

関連施策へのリンク

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 地域経済部 次世代産業課
電話:06-6966-6008

他の記事を読む