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最終更新日:平成28年4月1日
内需減少等の厳しい経済環境において、自動車、家電・電子機器等の従来型産業に加えて、「衣」「食」「住」やコンテンツ(アニメ、ドラマ、音楽等)をはじめ、日本の文化やライフスタイルの魅力を付加価値に変えるアプローチを通じて、新興国等の旺盛な海外需要を獲得し、日本の経済成長(企業の活躍・雇用創出)につなげることが重要となっています。
このため、政府は「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」(平成25年6月閣議決定)において、「クールジャパンの推進」を明記し、「伝統文化・地域文化など、日本の豊かな文化を背景としたコンテンツ、日本食・日本産酒類などの“日本の魅力”を効果的に発信し、産業育成や海外需要の取り込みに結実させるため、クールジャパンを国家戦略と位置付け、官民一体となって取組を強化する」としました。また、「日本再興戦略」改訂2015(平成27年6月閣議決定)においても、「クールジャパンの推進を具体的な経済成長に結びつけるため、関係省庁による施策を総動員し、分野横断的な政策課題に政府一体で取り組む」とするなど、クールジャパンを重要な取組として位置づけています。
こうした中、経済産業省では、様々なクールジャパン施策を民間のビジネスにつなげ、世界へ広げることを目指し、“クールジャパン”を体現する日本企業の海外需要開拓・拡大に取り組んでいます。具体的には、海外需要を取り込む段階を3つに分け、1.日本の魅力の効果的発信を行う段階、2.現地で稼ぐためのプラットフォーム構築を行う段階、3.日本に呼び込み大きく消費を促す段階、それぞれの段階での支援を実施しています。
クールジャパンとは、日本の生活文化の特色を生かした魅力ある商品やサービス等を指す幅広い概念であり、例えば、コンテンツ、ファッション、衣食住関連商品、サービス、地域産品等の分野が含まれます。これらの分野において、クールジャパンを体現する商品・サービス等を「クールジャパン商品」と総称するとすれば、これまで多くのクールジャパン商品が世界で高い評価を受け定着してきていると言えるでしょう。そしてこれからも、様々なクールジャパン商品を海外に向けて効果的に発信し続けることが重要です。
しかしながら、日本人の私たちでさえ気づいていない日本の魅力が詰まったクールジャパン商品がまだまだあります。特に地方には、海外展開のためのリソースやノウハウが不足している中小企業等が多く存在しており、優れたクールジャパン商品であるとしても、海外はおろか国内にも効果的に発信できておらず、残念ながらあまり認知されていないというケースが多数見受けられます。このような地方に眠るクールジャパン商品をしっかりと取り上げ、効果的に海外に発信できるような環境整備もまた重要な課題となっています。
このような中、平成27年度、経済産業省では、平成26年度補正 地域資源海外販路開拓支援事業(ふるさと名物発掘・連携促進事業)『The Wonder 500』や、平成26年度補正 ふるさと名物発信等事業(ふるさと名物普及環境整備事業)『NIPPON QUEST(ニッポン クエスト)』
等の事業を実施しました。これらの事業では、海外販路開拓や海外向けPRに関する知見等を有するプロデューサーを全国に派遣する等により「ふるさと名物」を発掘し、海外販路開拓のためのネットワーク構築、海外向けPR及びマーケティング支援や、世界が知らない日本の「ふるさと名物」を、地域が主体となって世界へ発信するWEBサイトを構築する支援等を実施してきました。
また、ジェトロ(日本貿易振興機構)や中小機構(中小企業基盤整備機構)
では、海外展開を志向する中小事業者等に対して、海外展示会への出展支援、海外事業計画の策定や市場可能性調査(F/S調査)支援、海外販路を拡大するためのWebサイトの外国語化支援等を通じて、個社の海外展開をサポートしています。
このようにコンテンツや地域産品の海外展開に対しては、様々な支援策を講じ、成果が出ているものがある一方で、継続的なビジネス展開ができているケースが少ないという課題があります。また、クリエイター、デザイナー等や中小企業の中には、海外拠点や海外連携先がない、金融機関からの資金調達が困難等の理由により、海外展開することが困難な企業がまだまだ多いのが現状です。したがって、海外展開を志向するクールジャパン商品を有する事業者が、継続的な現地ビジネス展開を行いやすくするために、それらの事業者が既存の海外拠点等を効果的に活用できるようにするための支援策等の充実が求められています。
このような問題意識のもと、近畿経済産業局では、上述した経済産業省、ジェトロ、中小機構等が実施する支援事業を補完するプロジェクトを実施しています。そこでは、地方のクールジャパン商品を有する事業者が、少ない経営リソースでも海外展開に取り組むことができ、さらに継続的な現地ビジネス展開につながる可能性を高めることができるような、持続可能な仕組みを構築することを目指しています。以下でご紹介する「DISCOVER KANSAI プロジェクトin パリ」はその一つです。
フランスは、世界のトレンド発信地のひとつである上、日本的価値に対する受容性が高い国と言われており、クールジャパン戦略を推進するにあたっては、非常に重要な国のひとつであると考えられます。
<主要各国・地域の市場分析(サマリー)>
地域 | 国 | 周辺市場への影響力 |
---|---|---|
欧州・中東・アフリカ | フランス | グローバル(特に欧州)で強い影響力あり |
米州 | 米国 | グローバルで強い影響力あり |
東アジア | 中国 | アジア圏に対し強い影響力あり |
東南・南アジア・豪州 | シンガポール | ASEAN・インドに対し強い影響力あり |
地域 | 国 | 受容性 | 普及度 |
---|---|---|---|
欧州・中東・アフリカ | フランス | 大 | 高 |
米州 | 米国 | 大 | 高 |
東アジア | 台湾、香港 | 大 | 高 |
東南・南アジア・豪州 | タイ | 大 | 高 |
(出所)経済産業省「コンテンツ産業の現状と今後の発展の方向性」(平成26年3月)より抜粋
世界のショーウィンドウであるパリで、クールジャパン商品を一定期間、常設展示・テストマーケティングできる持続可能な仕組みを構築することにより、地方のクールジャパン商品を有する事業者の海外展開を支援します。具体的には、近畿経済産業局がフランス・パリのショールーム運営事業者と協力し、パリ市内のショールームにおいて関西のクールジャパン商品10点程度をまとめて陳列し、半年間にわたって、常設展示及びテストマーケティング支援を行います。
<連携するパリのショールーム>
パリで長年日本製品を発信し続けている「Discover Japan」ショップを展開するSAS ENIS(サス エニス)塩川嘉章代表が、本物の日本製品をパリで発信するため、平成27年9月に開設したショールーム。ロケーションはパリの1区、日本人街サンタンヌ通りからほど近い場所。店舗名のmaison waは、「maison = 家」「wa = 和」を組み合わせた造語で、和のライフスタイルを提案するショールームという想いが込められている。面積160㎡。
DISCOVER KANSAI プロジェクトin パリは、上述の問題意識を基に、効果的かつ持続可能な支援の仕組みにするために、3つの特徴を有しています。
<参加事業者にとっての主なメリット>
本事業に参加する事業者の狙いは各社さまざまですが、例えば以下のような参加目的が挙げられます。
<参加事業者の狙い(例)>
本事業については、(ⅰ)営業拠点としての活用実績、(ⅱ)maison waでの小売実績、(ⅲ)バイヤー等他店舗による商品引き合い、(ⅳ)素材等による新たなコラボ創出、(ⅴ)テストマーケティングを踏まえた海外展開に関する新たなマインドセット創出等の観点から、第1弾プロジェクトの結果について総合的に事業評価を行い、クールジャパン商品を有する事業者からのニーズ等に応じて仕組みを随時改善するなどして、今後とも事業者や協力機関と共にプロジェクトを実施していく予定です。
近畿経済産業局 産業部 クリエイティブ産業ユニット
電話:06-6966-6053