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産業観光で地方創生
第4回産業観光ネットワーク交流会を開催しました
担当課室:通商部投資交流促進課

最終更新日:平成28年5月2日

増加し続ける訪日外国人

 2015年の我が国への訪日外国人旅行客は1,973万人と過去最高を記録し、政府が従来掲げていた「2020年に2,000万人、30年に3,000万人」の目標が達成間近となりました。政府は、平成28年3月30日に開催された「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」にて、「2020年に4,000万人、30年には6,000万人」に増やす新しい目標を定めたところです。

 ご承知のとおり、2020年には「オリンピック・パラリンピック東京大会」が開催されます。世界文化遺産や国宝、また伝統芸能や食文化などを誇る関西でも、2019年の「ラグビーワールドカップ2019」、2021年には生涯スポーツの世界大会「ワールドマスターズゲームズ」の開催が予定され、魅力あふれる関西を世界中に売り込む絶好のチャンスを迎えています。このインバウンドの波により、訪日外国人による観光消費額の増加も期待されます。

第4回産業観光ネットワーク交流会を開催

 近畿経済産業局では、産業観光施設や自治体、観光関連事業者向けに、産業観光施設におけるインバウンド対応や産業施設を核とした地域一体で取り組む産業観光施策をテーマに、26年度、27年度の2カ年にわたり、全4回の「産業観光ネットワーク交流会」を開催しました。

 3月8日に開催した「第4回産業観光ネットワーク交流会」では、市町村合併や世界遺産登録を機にDMO(Destination Marketing/Management Organization(ここではDMC(Companyを名乗っておられます))を設立、旅行業第2種も取得し、熊野古道に外国人観光客を呼び込む着地型観光で大成功を収めている(一社)田辺市熊野ツーリズムビューロー(以下、ビューロー)の多田稔子会長に基調講演をいただきました。

 続くケーススタディでは、京都府京丹後市から商工観光部観光振興課の引野雅文課長と、兵庫県家島町からは「いえしまコンシェルジュ合同会社」中西和也代表のお二人から、それぞれの地域の特徴をご紹介いただいた後、再びビューローの多田稔子会長を交えて、訪日外国人を都心部からいかにして地方に呼び込むかをテーマに、当局浅井通商部長の進行のもと、ディスカッションを行いました。

 その後、近畿運輸局から28年度観光庁予算について、大阪国税局から「酒蔵マップ」の紹介がありました。終了後の講師の方々を囲む懇親会には産業施設、自治体、鉄道会社の他、多くの方々にご参加いただき、活発な情報交換がなされました。

基調講演の様子
基調講演の様子
ケーススタディ
ケーススタディ

基調講演内容

 歴史ある神秘的な自然に恵まれた熊野古道は、日本文化や信仰に関心が高い欧米豪の外国人に人気があります。この層の個人旅行者をターゲットに、熊野古道のプロモーションを展開、海外にも積極的にPR活動を行っています。しかし、当初は観光情報を持って行くだけで、海外から京都・奈良・大阪といった観光地から離れた和歌山南部の熊野にどのようにアクセスをすればよいのか、田舎での交通手段、宿泊場所の確保等、地域での受入の整備もないままの空回りなPR活動に終わっていました。

 この反省を活かし、2010年に着地型旅行会社「熊野トラベル」を設立、カナダ人を雇用し、地元における外国人の受入環境を整備すべく、多言語案内看板やマップの作成から始まり、各バス会社の時刻表の統一表示、また、民宿や飲食店に向けた研修会を実施するなど、受入側のレベルアップを図りました。ビューローでは宿泊場所を一括でネット管理、そこから民宿等には個別に電話でお繋ぎするなど、観光サービスのワンストップセンターとしての機能を果たしています。

 また、海外へのPRですが、日本語の観光ガイドをそのまま翻訳するのではなく、日本の歴史や文化、精神を知らない外国人にも一からわかるような説明文を心がけています。カナダ人スタッフは、日本の文化・信仰についても造詣が深く、質の高い情報提供が可能となりました。

ケーススタディ概要

1.京都府京丹後市

 日本海に面する京丹後市は、「ユネスコ世界ジオパーク」認定の美しいリアス式海岸や砂丘など雄大な自然に囲まれ、その自然の恵みがもたらすカニや牡蠣などの海産物、果物や美味しいお米など「食の宝庫」で有名です。また、江戸時代から続く「丹後ちりめん」は、日本人なら誰もが知っている伝統産業です。

 京都縦貫自動車道の全線開通によりアクセスが大幅向上、大阪・京都からも高速バスで乗り換え無しで到着できる京丹後市ですが、東は日本三景の天橋立、西は城崎温泉という超有名な観光地に挟まれ、冬場のカニや夏の海水浴のシーズン以外に、なかなか観光客数が伸びないのが悩みです。

2.いえしまコンシェルジュ

 兵庫県の家島は、姫路港から約25分、姫路沖18kmに位置し、漁業、採石、海運業を主として栄えた人口約6,000人の瀬戸内海の島です。古き良き昭和の光景が目の前に広がり、町並みも人も生活も、「島まるごと」が観光資源ののどかで魅力あふれる島です。私も島の生活に魅了され、大阪から移住、2012年に「いえしまガイド」を開始、年間約1,000人を案内しています。

 島民と観光客をつなげるため、原材料から製品として出荷されるまでが見学できる「漁師町「宮」散策と家族でがんばる中村さんちの家島特産『海苔工場』見学」などの地域の産業・人との交流を生み出す様々なプログラムを造成するなど、島民と観光客をつなぐ取組をしています。

 訪日外国人を有料で案内するには、通訳案内士の資格が必要ですが、人口が年々減少していく高齢者中心の小さな島では難しいのが悩みです。

3.ディスカッションの内容

 (多田会長)「まず、なぜ訪日外国人なのか、目的やターゲットをしっかりと定めることが大事です。自分の町には何があるのか、外国人を惹きつけるテーマがあるか。特に欧米人は、日本の精神的な文化や伝統が大好きです。また、外国人は、大自然は世界の雄大な大陸等に求め、日本の自然には期待していません。しかし、そこでしか見えない名所や風景にはとても関心が高く、こんな場所にと思うようなところに、口コミで長い行列ができるほど次々と訪れたりします。

 次に、標識など、受入環境について、もう一度外国人目線で見直してみるのも重要です。外国人にとって日本語は、私たちがちょうどアラビア語が並んでいるのを見るのと同じ印象です。ローマ字でも見慣れた文字があると安心します。せっかく「熊野古道」という文字だけは認知してくれていても、日本語標記だけでは、「この道は「熊野古道」ではありません」という親切な看板が、「熊野古道」を案内していると誤解され、逆効果になってしまうこともあります。また、お店や旅館のメニュー等も、何も知らない外国人が理解できるように外国人スタッフが丁寧に翻訳したり、受入施設のレベルアップを目指して現地研修を重ねています。

 外国は姉妹都市との関係も大切にしています。熊野古道は同じ巡礼道として、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラともコラボレーションしており、誘客を促進するプロモーションを実施しています。

 FIT(外国人個人旅行者)向け着地型観光を目指す地元のDMOが、大手旅行社に比して優位な点は、民宿等は大手旅行社の契約対象ではなく、予約やキャンセルまで1件1件ケアできること、また手数料も地元に残り、地域活性化のための資金として活用できることです。

 熊野古道をキーワードに、奈良県や三重県といった域外との連携も進めており、温泉や宿泊地の案内等、旅のサポートを行っています。」

(引野課長)「京丹後にしかないのは何か、何を見せるのか。「丹後ちりめん」という日本が誇る伝統産業を核に、京丹後独自のストーリーやテーマを定め、産業観光施設や食、体験を取り込んだ観光コースの構築や、機運醸成を図って参ります。」

(中西代表)「家島での受入環境の整備の他に、広域で連携することもプロモーションとして大切だということが実感することができました。今後、一般社団法人せとうち観光推進機構等と連携し、家島の魅力発信を行うことにより、国内外からの観光客の受け入れを促進していきたいと思います。」

今後の展開

 産業観光は、多くの訪日外国人を地方へ誘客できる期待の切り札です。近畿経済産業局は今後も産業観光にスポットを当て、様々な事業を展開して参ります。

その他の取組(参考)

「関西の見学可能な産業施設ガイド」

 近畿経済産業局では、従来から、伝統産業の文化や、製造業の技術力に触れる、体験する、学習するといった「産業観光」の振興に取り組んでいます。産業の高いポテンシャル・魅力を発信する「産業観光」は、日本の産業やその背景にある歴史・文化等の魅力が直に伝わり、外国人にとって満足度が高く、新しいツーリズム形態として注目されています。

 当局のウェブ上では、「関西の見学可能な産業施設ガイド」において、関西地域(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)の約500施設の産業観光施設(工場・工房、企業博物館、研究所等)を掲載し、関西が誇る産業を国内外へ情報発信しています。

「産業観光モデルコース設定支援事業」

 工場見学を実施している施設の目的が、国内市場を対象とした企業・商品のPRや地域貢献等に軸足を置いていることが多く、産業施設が観光資源となり得るとの認識がまだまだ浸透していないため、積極的な訪日外国人受入には至っていない施設が多いのが現状です。

 グローバルな視点で地域産業や企業・製品・商品のPR、日本ブランドの発信等を考慮し、受入施設単体ではなく、地域全体で集客を図り、その効果を享受できる仕組み作りが必要とのことから、当局では、地元自治体の協力のもと、「産業観光モデルコース設定支援事業」を実施しています。

 地域における複数の産業施設や地元の観光名所等を組み合わせ、地域ストーリーを持った魅力溢れるコース設定を行い、(公財)都市活力研究所の「Kansai Tourism Supporters」に所属する留学生の皆さんに体験してもらっています。留学生には外国人目線からのコース内容の検証や各施設へのアドバイス、また、体験レポートを母国に向けたブログやSNS等で情報発信してもらい、当局は各モデルコースのリーフレット(日・英)を作成し、ウェブ上で国内外に発信しています。

留学生による体験の様子
留学生による体験の様子

掲載関連情報

社団名
一般社団法人田辺市熊野ツーリズムビューロー外部リンク
所在地
和歌山県田辺市湊727-2 田辺市観光センター内
電話番号
0739-26-9025
協会名
京丹後市観光協会外部リンク
所在地
京都府京丹後市網野町下岡
電話番号
0772-62-6300
企業名
いえしまコンシェルジュ合同会社外部リンク
所在地
兵庫県姫路市家島町宮109-16
電話番号
079-240-9138

関連施策へのリンク

近畿経済産業局 集客交流促進

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局通商部投資交流促進課

電話:06-6966-6033

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