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近畿経済産業局における地方創生の取組について
「関西自治体地方創生ネットワーク」の活動と「コネクターハブ企業」の重要性
担当課室:総務企画部 企画課

最終更新日:平成28年6月1日

地方創生に関するこれまでの動き                    

我が国における急速な少子高齢化の進展に的確に対応し、日本全体、特に地方の人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくことが喫緊の課題となっています。このため、平成26年11月に「まち・ひと・しごと創生法」が制定され、国としては、国民一人一人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営むことができる地域社会を形成すること、地域社会を担う個性豊かで多様な人材について、確保を図ること及び地域における魅力ある多様な就業の機会を創出することの一体的な推進を図ることとしています。

さらに国は、平成26年12月に、人口の現状と将来の姿を示し、今後目指すべき将来の方向を提示する「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」及び今後5か年の目標や施策の基本的方向、具体的な施策をまとめた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」をそれぞれ閣議決定し、まち・ひと・しごと創生に総合的に取り組むこととしました。

これを踏まえ、地方公共団体においては、「都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略」及び「市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略」(以下、「地方版総合戦略」という。)の策定が進められ、全ての都道府県、1,737市区町村において、平成28年3月までに地方版総合戦略が策定されました。地方版総合戦略は、各地方公共団体自らが、客観的な分析に基づいてその課題を把握し、地域ごとの「処方せん」を示すものです。そこでは、地域の実情に応じた今後5か年の目標や施策の基本的方向、具体的な施策がまとめられています。

こうした過程を経て、平成28年度より地方創生は具体的な事業を本格的に推進する段階に入りました。

近畿経済産業局の取組(「関西自治体地方創生ネットワーク」の構築)     

このような状況を踏まえ、近畿経済産業局では地方自治体における地方版総合戦略の着実な実行、地域による個性豊かな施策展開の実施を支援するため、「関西自治体地方創生ネットワーク」(以下、「ネットワーク」という。)を平成27年12月に構築しました。ネットワークは、組織や地域の垣根を越えたプラットフォームとして、ふるさと・地域再興に頑張る自治体の取組を応援しています。具体的には、しごと創生・産業振興に係る幅広い分野を対象に、施策情報の提供やセミナー・ワークショップ開催等の活動を通じて、1.参加者間の交流促進、2.新たな取組の発掘・支援、3.先駆的・優良事例の横展開等を促進しています。

関西自治体地方創生ネットワークの基本概念
関西自治体地方創生ネットワークの基本概念


平成28年6月1日時点で、146自治体、75支援協力機関(地域金融機関等)が参加しており、現在でも常時参加機関を受け付けています。

「関西自治体地方創生ネットワーク」の活動               

近畿経済産業局ではネットワーク参加自治体の地方創生に関する取組を強力に支援するため、参加者間の連携・交流促進、施策形成支援に関する取組を数多く実施してきました。ここでは、そのうちいくつかの特徴的な取組についてご紹介いたします。

(1)関西自治体地方創生ネットワーク「キックオフセミナー」の開催

ネットワークの立ち上げにあたり、関西における地方創生の機運を一層高めるための大規模セミナーを開催しました。

兵庫県養父市長 広瀬栄氏の基調講演(「国家戦略特区と地方創生」)のほか、京都府京丹後市及び山口県長門市における地方創生の先進事例のプレゼンテーション、識者によるパネルディスカッションなどが行われました。

  •  平成27年12月21日 13:30~17:30
  •  於.りそな銀行大阪本店 地下講堂
  •  参加者約200名

「キックオフセミナー」満員の会場
「キックオフセミナー」満員の会場

(2)政策ワークショップ

特定の政策分野をテーマに、地方自治体の担当者及び当該分野に知見を有する有識者・支援協力機関がグループディスカッションを通じて知見を共有し、政策形成を行うためのワークショップを開催しました。

グループディスカッションにおいては、モデレーターとして りそな総合研究所 リーナルビジネス部長 藤原明 氏をお招きし、参加者の「強み」を持ち寄って「協働」を行うためのきっかけづくりを体系的に実施しました。

農商工連携ワークショップ

  •  平成28年2月3日 13:00~17:00
  •  於.近畿経済産業局
  •  参加者30名

○話題提供:株式会社ファーム・アライアンス・マネジメント  代表取締役 松本武 氏

○グループディスカッション:農商工連携における課題やこれから取り組むべきこと~担い手の発掘・新たな商流形成・海外輸出~

「農商工連携ワークショップ」話題提供の様子
「農商工連携ワークショップ」話題提供の様子

コネクターハブ企業支援ワークショップ

  •  平成28年2月18日 15:30~17:15
  •  於.京都中央信用金庫 十条ビル
  •  協力:京都中央信用金庫、株式会社地域計画建築研究所

○ゲストプレゼンテーション:

  株式会社SHINDO 代表取締役CEO 新道忠志 氏

○「平成27年度関西のコネクターハブ企業の実態調査」について:

  近畿経済産業局 総務企画部 企画課

○ゲストコメント:

  同志社大学 商学部 准教授 関智宏 氏

  りそな銀行 コーポレートビジネス部 御堂筋ビジネスソリューションプラザ所長 上羽洋平 氏

  内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 ビッグデータチーム長代理 早田豪 氏

「コネクターハブ企業支援ワークショップ」ゲストコメントの様子
「コネクターハブ企業支援ワークショップ」ゲストコメントの様子

創業ワークショップ

  •  平成28年3月8日 13:30~17:30
  •  於.近畿経済産業局
  •  参加者26名

○話題提供:株式会社PAL 代表取締役 辻有吾 氏

○グループディスカッション:地域に密着し、地域の特色を活かした創業支援策の構築

「創業ワークショップ」グループディスカッションの様子
「創業ワークショップ」グループディスカッションの様子

(3)車座ミーティング(RESASを活用した地域活性化勉強会)

一の地域経済圏を構成する複数自治体を対象に、RESAS(後述)を活用して当該地域の強み弱みを把握し、参加者間で地域の現状と課題について意見交換を行うことで、当該地域の具体的な活性化方策を検討する会合を開催しました。

なお、この取組は当該地域と密接に関わる地域金融機関との協働により実現しています。

京都北部地域活性化勉強会(主催:京都北都信用金庫)

  •  平成28年3月17日 13:30~16:30
  •  於.京都北都信用金庫 本店
  •  参加者31名(京都北部地域5市2町の自治体、商工会等)

「京都北部地域活性化勉強会」会場の様子
「京都北部地域活性化勉強会」会場の様子

泉州地域活性化勉強会(主催:池田泉州銀行)

  •  平成28年3月29日 13:30~16:30
  •  於.池田泉州銀行 泉州営業部
  •  参加者16名(大阪泉州地域7市2町の自治体)

「泉州地域活性化勉強会」グループディスカッションの様子
「泉州地域活性化勉強会」グループディスカッションの様子

(4)「頑張る自治体応援隊」の創設

ネットワーク参加自治体と近畿経済産業局との間で、より緊密な連携関係を構築するため、コンシェルジュ機能を強化し、ネットワーク参加自治体が気軽にコンタクトや相談できるキーパーソンとして、当該地域に縁やゆかり・愛着のある当局職員(管理職)による「頑張る自治体応援隊」を創設しました。前述の車座ミーティングなど、各地域で実施する会合への参加や当局施策の紹介を通じて、ネットワーク参加自治体の地方創生に関する取組を応援します。



近畿経済産業局では、本年度もネットワーク参加自治体の地方創生分野における政策形成に資する様々な取組を予定しています。

地域経済分析システム(RESAS)                    

地域経済分析システム(RESAS、リーサス)とは、地方創生の取組を情報面から支援するため、まち・ひと・しごと創生本部事務局が提供する、産業構造や人口動態、人の流れなどの官民のビッグデータを集約して可視化するシステムです。RESASの機能の大半は一般に公開されており、誰でも直感的な操作で扱うことができます(ブラウザはGoogle Chrome限定)。

RESAS機能一覧
RESAS機能一覧

近畿経済産業局では、地方自治体をはじめ金融機関、大学・研究機関、NPO等のみなさまのRESASを活用した地域課題の分析、政策検討に関する取組について、個別相談対応、講師派遣、ワークショップ開催協力等を通じた支援を行っています。

ここでは、このうち地域金融機関と連携した取組として、京都中央信用金庫主催の「宇城久3市町連携 実践型施策検討勉強会」をご紹介いたします。この取組は、京都中央信用金庫が主導し、京都府宇治市・城陽市・久御山町の3市町の地方自治体が連携し、RESASを活用した地域の現状分析、産業分野における課題抽出、解決するための施策検討を行ったものです。これに対し近畿経済産業局はRESAS分析手法及び施策形成に関する支援を行いました。


宇城久3市町連携「実践型 施策検討勉強会」(主催:京都中央信用金庫)

  •  平成28年2月18日 13:00~15:00
  •  於.京都中央信用金庫 十条ビル

成果発表会の様子
成果発表会の様子


なお、当局では平成28年6月1日現在において「平成28年度 RESAS分析に頑張る自治体応援事業(RESAS分析モデル構築ハンズオン支援)」の実施希望自治体の募集を行っています(締切:平成28年6月10日)。本事業は、地方自治体がRESASを活用した地域の現状・実態等を分析するとともに、政策立案等ができるよう、近畿経済産業局が地方自治体の担当者と一緒になって分析を行うとともに、政策立案の検討に当たってのサポートを行い、RESAS分析に頑張る自治体を応援するものです。

地方創生におけるコネクターハブ企業の重要性              

地方創生における地域経済分析の枠組みにおいて、「コネクターハブ企業」という概念が注目を集めています。同概念は「2014年版中小企業白書」で分析対象となり、RESASにおいて企業リストが抽出可能な地域中核企業の類型の一つとしてその概念が引き継がれました(RESASにおける地域中核企業リストの抽出機能は自治体限定メニュー)。

コネクターハブ企業とはコネクター機能(地域外への販売・外貨の獲得)とハブ機能(地域内からの仕入・調達)を併せ持つ企業のことです。そして、コネクターハブ企業は「地域の中核的企業であり、かつその取引構造を通じて政策支援効果を他の企業に及ぼす影響度が高い存在であることから、今後の政策ターゲットのコアとなることが期待される」とされています(「2014年版中小企業白書」)。

近畿経済産業局では、このコネクターハブ企業の機能・形成過程等を明らかにするための実態調査を実施しました。当該調査を通じて、コネクターハブ企業には、主としてハブ機能の形成要因から以下の2類型があることが見出されています。

(1)コネクターハブ企業(産業集積活用型)

都市部の製造業など既存の産業集積を背景に、合理的に調達先を構成した自然な帰結として、高い地域内調達率を達成しているコネクターハブ企業。新分野進出時などマーケットの要求基準が変わる場合は、それに見合った調達先を産業集積内から新たに探し、調達構造を組み替えることが可能。事業活動を通じて域外の資金を広く地域内に還流する存在として地域経済に対する影響度が高い存在。

コネクターハブ企業(産業集積活用型)事例
コネクターハブ企業(産業集積活用型)事例

(2)コネクターハブ企業(協力企業群育成型)

産業集積が乏しい(地域内の企業数が少ない)場合でも、当該地域に対するコミットメントの強さ等を背景として、地域内の企業を育成することにより調達を実現することで、高い地域内調達率を実現しているコネクターハブ企業。新分野進出時には既存調達先を牽引し、新たなマーケットの要求基準に調達先企業が適応できるよう技術指導等を実施する例が多い。さらに、コネクターハブ企業(協力企業群育成型)においては、長期的視野に立って地域全体の技術力の向上を図ることや、調達先企業の存続(業況安定や事業承継)に配慮する企業も見られる。

コネクターハブ企業(協力企業群育成型)事例
コネクターハブ企業(協力企業群育成型)事例
 

いずれのコネクターハブ企業も、マーケットと地域内企業の間を取引関係だけではなく情報面においても繋ぐ存在として重要な存在です。そのため、コネクターハブ企業に対する各地域の実情にあった多彩な支援が湧き起こることが期待されています。

関連施策へのリンク

関西自治体地方創生ネットワーク

地域経済分析システム(RESAS) ※Google Chrome外部リンク 新しいウィンドウで開きます

平成28年度 RESAS分析に頑張る自治体応援事業(RESAS分析モデル構築ハンズオン支援)

平成27年度 関西のコネクターハブ企業の実態調査

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 総務企画部 企画課

電話:06-6966-6003

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