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「薄膜形成技術」分野で世界の先端を走り続ける
コア技術を究めて成長するベンチャー企業の戦略
担当課室:産業技術課特許室

最終更新日:平成28年7月1日

サムコ株式会社

生産用Siディープエッチング装置RIE-800iPBC
生産用Siディープエッチング装置RIE-800iPBC

サムコ株式会社は、薄膜形成技術に強みを持つ半導体・電子部品の製造装置のメーカーで、辻会長兼社長(辻は一点しんにょう)が1979年に京都市内の雑居ビルの車2台分の駐車場に「株式会社サムコインターナショナル研究所」を設立、2004年に現在の社名に変更し、2014年には東証一部上場を果たしました。

薄膜形成技術のパイオニアである同社は、世界初の太陽電池用アモルファスシリコン薄膜形成用CVD装置を製作するために創業され 、創業時より世界市場を視野に海外企業との販売提携や、シリコンバレーやケンブリッジ大学内における研究所や海外事務所の設置、また、40件を超える海外特許を所有するなど積極的かつ着実な海外事業の展開によりグローバルカンパニーへと成長を遂げました。

薄膜形成技術の先端を支える体制

法務部の役割を果たす社長室には、社内弁護士、弁理士、公認会計士を配置し、毎月1回、辻会長兼社長を議長に10名で構成される技術戦略会議を開催しています。技術戦略会議では、経営計画や技術開発戦略のほか、予め社内弁理士と発明者で検討した出願方針も検討しています。同社は製造装置メーカーであるため、プロセス技術はノウハウとして秘匿する必要があり、特許出願については顧問契約を結んでいる特許事務所からのアドバイスを受け細心の注意を払っています。なお、出願前の案件選定における先行技術調査は、開発動向の把握や出願戦略等の勉強になるため、外注せずに自社で対応しています。

また、同社営業担当者は、取引先の大企業や外国企業との商談において知財に関する確認を求められることもあり、不明な点は知財担当者や開発者に積極的に質問する等、知財について高い意識を持っています。

海外展開については、マーケティングを兼ねて技術セミナーや展示会等を隔月ペースで実施し、海外特許出願も積極的に行っており、米国のほか、取引先が電子部品の生産拠点を有する中国、台湾等の国々にターゲットを絞って戦略的に出願しています。

知のネットワーク

創業間もない頃、同社に東京工業大学の元学長末松安晴先生が学生を引率して訪問され、研究の協力を依頼しました。辻会長兼社長は、当時を振り返ってみて、同社のような創業間もない小さな企業を調べ当てて訪問されたことに非常に驚かれ、先生とはそれ以来40年近くのお付き合いになるそうです。

末松安晴先生が訪問された車2台分のガレージの本社
末松安晴先生が訪問された車2台分のガレージの本社

現在では、同社の技術力の高さはトップレベルの研究者に認識されており、地元の京都大学をはじめ国内外の大学やノーベル賞級の研究者とも交流を持っています。創業直後から同社が主催する「薄膜技術セミナー」は今年までに18回を数え、最近では、中国、台湾、インドでも開催しており、セミナーで交流のあった現地の大学や企業等と共同研究をスタートする等、同社の「知のネットワーク」は国内外に広がっています。

辻会長兼社長は、周りの中小企業から「大学は敷居が高い」との相談を受けることもあるそうですが、自身の経験に基づき、「大学は中小企業の支援機関ではないという意識を持ち、企業として大学に求めること、やりたいことを明確にしてアプローチすれば連携は比較的スムーズにできる。」とアドバイスされているそうです。

また、論文の発表や特許出願は、常に世界の先を行く研究開発を進める上でのベンチマークであり、かつ、世界に自社の技術力の高さを知ってもらうための重要なツールであることから、社員に対して発明を奨励しています。また、発明に必要な創造力を養うためには社外人材との交流も重要という認識のもと、社外での各種勉強会への参加等、社員の自己研鑽活動も推奨しています。

ノウハウ管理の手法

ノウハウ管理においては、ノウハウを知る社員を限定しつつ、かつ、工程の分散等によりノウハウを知る者が一人に集中することのないようにマネジメントしています。また、技術流出を完全に阻止することや流出の実態を把握することは難しいため、営業秘密はいずれ公知になるとの前提に立ち、競合他社の更に先手を行く開発を行うことを目指しています。情報管理アプローチだけではなく、ノウハウを知る重要な人材が魅力を感じる企業になることが重要という考えのもと、出願時、業績に貢献した社員に対する社内表彰や社長賞の授与等において報償金を出すなど、社員の発明・創造活動に対するモチベーションの向上につながる取組も実施しています。

将来の展開〜スペクトラム拡大型経営と海外展開〜

辻 代表取締役会長兼社長
辻 代表取締役会長兼社長

同社は、コア技術である薄膜形成技術のパイオニアであり続けるため、自前の研究施設で薄膜技術の基礎研究を実施して大企業にも負けない高い技術力を蓄積すると共に、コア技術を従来の半導体部品に限らず医療や環境といった多様な新分野に小回りとスピード感をもって横展開を図る「スペクトラム拡大型経営」(辻会長兼社長の言葉)を進めることで、世界で勝負するグローバルカンパニーを目指しています。

掲載関連情報

企業名
サムコ株式会社外部リンク
所在地
京都市伏見区竹田藁屋町36番地
電話番号
075-621-7841

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 地域経済部 産業技術課 特許室

電話:06-6966-6016

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