トップページ > 広報誌・E!KANSAI > 8月号企業紹介

新・ダイバーシティ経営企業100選について
~多様な人材の活躍を、企業の成長力に繋げる~【大和ハウス工業株式会社】
担当課室:産業人材政策課

最終更新日:平成28年8月1日

本コーナーは現在募集28年度の案件を募集中の「新・ダイバーシティ経営企業100選」の27年度受賞案件の中から、近畿管内の企業を毎月取り上げており、今月は大和ハウス工業株式会社の取組を紹介します。同社は、当局が大阪市内で平成28年8月3日(水)に開催する「ダイバーシティ経営企業フォーラム ~多様な人材の活躍=成長する企業のキーワード~」にも登壇いただきます。 

※ダイバーシティ経営とは「女性、障がい者、外国人、高齢者など、多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」のことです。

大和ハウス工業株式会社

時間、役割、責任、評価など抜本的に働き方を改革、女性の活躍事例を積み上げ「サステナブルな企業」に

ダイバーシティ経営の背景

大和ハウス工業株式会社(以下「同社」)は1955 年、「建築の工業化」を企業理念に創業し、60 年にわたり住宅事業を中心に成長してきました。

2000 年代初頭、経営トップが海外でIR活動を行う中で、外国人投資家から女性の役員登用がないことを痛烈に指摘されたことをきっかけに、グローバルに事業を展開し生活総合産業を標榜するには、男性だけではなく女性が経営やコアビジネスに関わることが不可欠であると認識しました。また、今後の労働力不足が懸念される中、さらなる業績拡大のためには継続的な人財確保が必要であり、これまで男性社会であった建築業界においても、性別にかかわらず経営を担う人財の確保が急務とされていました。

同社では1980年代初頭より女性総合職を積極的に採用してきたものの、長時間労働などの慣行もある中で、女性に対して、十分な活躍の機会を与えてきたとは言い難い状況にありました。その反省も踏まえ、徹底して女性の職域拡大、活躍の場の拡大を全社で図ることとなりました。従来は女性の少なかった職域に女性を配置するとともに、女性比率の高かった部署についても、役割、職制などを見直し、その能力を発揮できる機会を創出していきました。

一方、「従来のように長時間労働に依存した働き方のままでは、今後の少子高齢社会の中で斜陽産業となってしまう」という危機感から、持続的な成長の基盤をつくるため慢性的な長時間労働を是正し、一人当たりの生産性を上げていくことに全社を挙げて取り組むこととなりました。「長時間働くことで評価される」仕組みから、より効率的に成果を上げる仕組みに転換することで、競争力を高めることが企図されました。

取組内容

(1)「女性はサポート職」との認識を打ち破るための制度、機会、役割の提供で全社の意識改革

同社ではまず2007 年に、経営トップが女性管理職の育成・強化の方針を社内外に公言し、さらに2014 年に「2020 年にグループ女性管理職を500 名にする」という数値目標を掲げました。それを受けて各事業部門で、どのように女性活躍を進めるかを策定し、方針に盛り込みました。

2007年には人事部内に女性活躍推進のための専任部署を設置、全社の女性活躍推進についての課題を把握・分析しました。そこで、事務職入社の女性社員については、業務改善やジョブローテーションを含む多様な経験を上司がマネジメントすることとし、業務改善活動の内容を支店の業績評価に組み込んで支店全体の賞与支給に反映させる仕組みを構築しました。管理職の目標管理において「女性部下に対する積極的な活躍支援や、部下育成を目的とした役割・機会付与」を項目として盛り込み、女性のキャリア促進の支援をマネジメントの重要な要素として位置づけ、人材の能力伸長・活用がマネジメントの役割であることの意識化を推進しました。

また、「女性はサポート職」という従来のイメージを払拭するために、グループの女性社員(管理職および候補者層の200 名超)が集まるフォーラムを実施、オブザーバー参加したグループ会社の社長ら(36 名)に対し、経営に関する提言を行う場を設定しています。

さらに、事務職入社の女性社員の専門性向上のため、業務改善活動において企画業務を担当させたり、管理部門での専門研修を実施するなどを通じて、能力開発を促しています。

同時に、社内公募で女性社員が自らキャリアパスを開拓していける道を構築するなど戦略的な職域拡大を展開しました。従来、公募制は総合職入社の男性社員を対象としていましたが、入社時のキャリアコースにかかわらない公募へと戦略的に転換することで、キャリアパスにおける男女の差をなくすことを目指しました。具体的には、アフターサービス部門やロボット事業など、これまで男性のイメージが強かった部門や新規事業において、より積極的に女性社員を対象とした公募を行い、能力と意欲のある人材の登用を実施していきました。

(2)長時間勤務が評価される働き方を変革するため、人事部主導の“実力行使”で勤務の短時間化を実現

一方、22時以降の残業も珍しくないような長時間労働が前提であった働き方についても、本腰を入れて見直しを始めました。2014年の評価制度改定において、それまで、支店の業績評価において主要指標であった「一人あたり利益」のウェイトを減らし、「一人時間あたりの生産性」も評価項目として追加し、過剰労働の削減を各支店のマネジメントの責務として明示しました。

さらに、評価項目の改訂だけではなく、実態の変革を促すために、人事部が本気で取組を開始しました。まず、長時間労働削減に向け厳格な社内基準を設定し、該当する場合は事業所業績評価においてペナルティーを科す制度を導入しました。 

また、時間外労働が万一100 時間を超過した場合には役員面談を必須とすることとしたほか、各支店のロックアウト(事業所施錠)実施の状況を月に1 回、

本社人事部が抜き打ちで確認する仕組みとしました。こうして外堀を埋めることで、それまでの「時間は無限」という発想そのものを切り替えるために、現場での創意工夫を促す取組を行いました。

これらの結果、2012 年に社員一人あたりの年間所定外労働時間449 時間(月39.7 時間)が、2014 年は422 時間(月33.2時間)へ減少、年次有給休暇取得も取組前の2006 年の19.0%が、2014 年には36.2%にまで上昇しました。

(3)事務職の女性社員の活躍の場の拡張

前述のように、トップからの女性活躍推進の命を受け、各部門が独自に女性社員の活躍の場を模索する取組が開始されました。

例えば、アフター点検部門はそれまで技術系の男性が占めていましたが、点検員の仕事を再分析したところ、築後2年目点検までは、技術的な視点よりも顧客への住宅に関するアドバイスやコミュニケーションが強く求められることが再確認されました。とりわけ、同社の顧客は比較的若年層のファミリーが多いこともあり、点検員が女性であることが対応する顧客の安心感にもつながることが期待されました。

また、働き方の点でも、1 日2 軒を担当すれば時短勤務も可能になるといった利点も考えられたことから、新たに点検員として女性を配置する案が浮上しました。

そこで職種転換制度を戦略的に実施し、コミュニケーション力に長けてユーザー視点を有する女性事務職8人を指名しました。当初はその意図がわからず懐疑的であった本人らも、事業部トップが「なぜ女性なのか、“女性点検員”で何を目指すのか、困ったときには誰にどう聞けばよいか」といった疑問や不安に対し徹底的にコミュニケーションを図り、一つずつ解消していったことで、高いモチベーションをもって新たな職場で活躍し始めています。現在は、全体で500人超の部門所属者の中で30 人ほどの女性点検員が活躍しています。

また、本社所属の技術者が商品企画を行う通例に対し、事務職入社の女性社員による業務改善活動から新たな住宅モデル棟の企画が提案される事例も出てきました。例えば富山支店では、共働き率の高い地元のニーズに合致した理想の住まいを企画し、いわゆる女性視点として主流の「女性が家事のしやすい家」から、「家族が家事シェアできる家」へとコンセプトを転換しました。事務職はサポートに留まるケースが大半の中、業務改善プロジェクトを「企画・提案」の機会として活用した事例であり、女性社員が主体的に考え、提案するという初めての動きとしてマネジメントがサポートし、実現に結びつけています。

成果

前述の事務職入社女性社員の職域拡大の結果として、各部門でそれぞれに成果が上がり始めています。例えば、女性点検員の育成を開始したアフター点検部門では、顧客から「住宅のお手入れ方法など女性目線のアドバイスが良かった」や「平日の昼間、女性一人の家への男性点検員訪問に不安があったが女性点検員で安心した」など好意的なコメントが寄せられました。また、点検員の対応に関するアンケート調査では、「大変満足」の回答が全国平均で46.0%のところ、女性点検員は58.9%と非常に高い結果となりました。毎年実施される点検員評価の中で、2015 年にはトップ10 の中に女性点検員が4 名も入る快挙となり、業務内容と適性を踏まえたマネジメントが奏功した結果となっています。

また、富山支店の商品企画の例では、共働き率の高い市場において来場者の支持を得て、イベント来場者も通常の約4 倍と大変な盛況となりました。これに自信を得て、次なる企画提案の動きにつながっています。

こうした変化は数字でも表れており、社員意識調査で「当社は女性にとって働きやすい職場だと思いますか」に肯定的な回答をした女性が、2004 年の19.9%から2012 年には50.5% にまで増加しました。また、「あなたは当社で何歳まで働きたいですか」には2008 年で「30 歳代まで」が30.2%と最も多かったのですが、2012 年には「定年まで」が34.6%となるなど、中長期的なキャリアを考える社員が急増しています。働き方そのものを変革する会社の本気度を実感した社員らのモチベーションが上がり、同社の目指すグローバルな「生活総合産業」への転換への道筋が立ち始めています。

職種転換した女性のアフター点検員が活躍
職種転換した女性のアフター点検員が活躍

掲載関連情報

企業名
大和ハウス工業株式会社外部リンク
所在地
大阪府大阪市北区梅田3丁目3番5号
電話番号
06-6346-2111

関連施策へのリンク

新・ダイバーシティ経営企業100選外部リンク 新しいウィンドウで開きます

E!KANSAI ダイバーシティ経営企業 事例紹介シリーズ

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 地域経済部 産業人材政策課

電話:06-6966-6013

他の記事を読む