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最終更新日:平成28年9月1日
企業の競争力強化に向けて、社内と外部のアイデアや技術を有機的に結合させて付加価値を創造する「オープン・イノベーション」の取組が世界的に進展しています。
しかし、中小・ベンチャー企業においては、大手企業や大学、研究機関との共同開発や技術提案等の過程で、知財戦略が十分ではないために、技術・ノウハウが流出したり、不利な条件での契約を交わしてしまったりと、不測の損失を被っているケースも多く見られます。中小・ベンチャー企業がオープン・イノベーションの取組を通じて、自社の技術・ノウハウを活かして付加価値を創造していくには、商談時や契約時における交渉が鍵となります。
そこで、近畿経済産業局では、オープン・イノベーションに取り組む上での中小・ベンチャー企業ならではのポイントをまとめた小冊子「中小・ベンチャー企業のためのオープン・イノベーション ハンドブック」を作成し、公表しています。
<ハンドブック 目次>
皆様の会社では、このような事態に遭遇したことはありませんか?
テレビドラマ化され人気を博した小説「下町ロケット」で、優れた技術力を背景に、特許権を活用し、下町の部品メーカーが大手企業と戦う様子に釘付けとなった方も多いと思いますが、上の漫画にあるような共同開発や企業間連携でのトラブルは決して他人事ではありません。
このような事態を未然に防ぐためにも、「中小・ベンチャー企業のためのオープン・イノベーション ハンドブック」を、ぜひご活用ください。
ここでは、「ハンドブック」から、「外部とのオープンな連携を進めるための賢い交渉術と社内での準備」の部分について、抜粋して紹介します。
「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもののことです。「ここまでは情報を出すけれど、これ以上は出さない」、「これは特許出願を行う予定なので絶対に情報を出さない」といった 自社なりの情報の仕分け方針を検討ください。
発明やデザイン完成の日付を、社内の研究ノート等に印し、関係者の印やサインを取っておくことが第一に求められます。その上で、一番確実なのは、証拠書類とあわせて最寄りの公証人役場にて「確定日付」を取得しておくことです。
忘れがちですが、自社のパンフレットに「発行年月日」を入れて、後に証拠書類として使えるように保管しておいてください。また、新聞や雑誌等に掲載された場合も保管しておいてください。これらは、後に先使用権等の証明書類にできるものがあります。
法的に「営業秘密」として認められるためには、その情報が「秘密」として社内管理されていたかどうかが重要です。情報へのアクセス権制限に加えて、客観的にみて秘密だと分かるように「○秘」のマークを入れるか、秘密として施錠できる場所に保管するなど、管理方法を見直しておきましょう。
話すのは、「こういう可能性がある技術を開発中であって、この先は特許出願前なので詳しくは申し上げられない」というレベルにとどめ 、しかし、技術の「可能性」は伝えることが重要でしょう。
「詳しく話を聴きたい」といった要請が出てきた場合、「秘密保持契約」を結ぶことが必要 です。ただ、「秘密保持契約」が必要なら、「では、話はもう結構です」と取引先に返答される場合もあります。したがって、情報管理のみを優先しすぎて、ビジネス・チャンスを失うのも考えものです。
「秘密保持契約」を結ぶ・結ばないに関わらず、最も避けていただきたいのは、図面、デザイン画、写真、サンプルを渡してしまうことです。
仮に詳細な図面を見せてほしいと言われたとしても、詳細図ではなく内部構造がわからない外観図や模式図にとどめ、一番重要なのは「回収して持って帰る」こと です。
展示会等のブース店頭で、関心のある潜在的顧客に対し、リップサービスでついつい熱心に経営者層が話してしまう、あるいはサンプルや写真を渡してしまうということも発生しがちです。
展示会出展前は、必ず関係者を集めて、情報管理を徹底 してください。渡していいもの、見せるだけで渡さないものを区分し、現場でも徹底してください。
【参考資料】近畿経済産業局「展示会の落とし穴-知的財産の流出リスクとその対策-」(PDF:28.3MB)
オープン・イノベーション時代には、交渉の成否がビジネスの鍵を握ると考えられます。契約時において、準備段階、交渉段階それぞれに交渉の戦術を備え、実践しましょう。
他者との交渉においては、以下の項目を念頭に置き、交渉に臨みましょう。
中小・ベンチャー企業のためのオープン・イノベーション ハンドブック
近畿経済産業局 産業部 創業・経営支援課
電話:06-6966-6014