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京都 若者がつくる伝統的工芸品の未来
京都伝統工芸大学校の魅力にせまる
担当課室:製造産業課

最終更新日:平成28年10月3日

京都府南丹市園部、街の喧騒から離れた山の中に、一つの学校があります。

その学校とは、TASK(タスク=Traditional Arts Super College of Kyoto)という愛称で親しまれる京都伝統工芸大学校。

その名のとおり、伝統工芸の技を専門的に学ぶことのできる、日本で唯一の学校です。平成7年に設立されて以来、伝統工芸の技を身につけた優秀な人材を輩出し続けている、この学校の魅力に迫ります。

盗んで覚えろ?

(※写真は木彫刻専攻の実習の様子。先生に指導を受けている最中です。)

(木彫刻専攻の実習の様子 先生に指導を受けている最中です。)

「伝統工芸の技術を学ぶ。」と聞いた時、皆さんはどう思われますか?「なんて難しいことだろう。」と思われる方が多いのではないでしょうか。「職人の元に弟子入りして、下働きをしながら技術は師匠の作業を見て盗んで覚える。」そういうイメージのある伝統的工芸品。しかし、今の時代それでは人は育ちません。「伝統工芸を学びたい」という気持ちがあれば誰でも伝統工芸の技術を身につけられる、体系的な教育システムによる学校。そのような思いから始まった、そんな画期的な学校が京都伝統工芸大学校(以下TASK)です。

学生の声、声、声

陶芸専攻2年生のSさんとTASKとの出会いは1枚の図書カード。図書カードを目当てに資料請求して目にとまったのが、TASKの分厚い卒業・修了作品集。元々盆栽に興味を持っていたSさん、盆栽の鉢から自分で作りたいと陶芸を学ぶ道へと進みました。卒業後もTASKで学んだ京焼・清水焼の技術を活用し、生活に寄り添った陶芸品を作り続けたいと話す彼女の目からは、陶芸への愛と伝統工芸の技術を受け継ぐ誇りが感じられました。

実家がお寺のKさんは漆工芸専攻の2年生。小さい頃から仏壇にふれ漆器が身近なものでした。文化財の修復に携わりたいとTASKで学んだ知識と技術を武器に寺社の修復を行う職人の元へインターンシップに行ったそうです。文化財修復はまだまだ男社会。「こいつの腕が欲しい」と言ってもらえるようになることを目標に今日も夢に向かって努力しています。

木工芸専攻4年生のFさんは元々TASKの隣にある京都建築大学校が志望校。京都建築大学校を見学したけど、隣のTASKの方に興味がわき、木工芸の道へ進むことに。卒業後は家具製造会社でオーダー家具の制作等に携わります。

(※写真は仏像彫刻専攻の実習の様子。)

(仏像彫刻専攻の実習の様子)

Oさんは今年の春開講されたばかりの京手描友禅専攻の1年生。着物が好きで和裁を学んでいましたが、反物から自分で作りたいとTASKに入学。今は狛犬をモチーフに染帯をデザイン中。将来は職人として工房に就職することを目標に日々勉強中。

金属工芸専攻4年生のKさんは七宝の道へ進むことに。進路に悩んでいたKさんは、昔から伝統工芸に興味があったことから「伝統工芸」をキーワードにTASKを高校3年の夏に発見。早速オープンキャンパスで様々な工芸体験に参加しましたが、なかなかしっくりくるものがありません。最後に参加した金属工芸の体験でやりたいことが見つかりました。

今回、私たちは5人の学生にインタビューをさせていただきました。お話を聞かせていただいた学生皆に共通して言えるのが、伝統的工芸品が好きで、これからも伝統的工芸品に何らかの形で携わっていきたいという思いでいっぱいということです。

未来へつなぐ人材を

永年にわたり、国民生活にゆとりと潤いを与え、地域経済の発展に大きな役割をはたしてきた伝統的工芸品産業ですが、昨今はライフスタイルの変化等に伴う需要の低迷、後継者不足等厳しい状況が続いています。中でも後継者の確保は解決すべき喫緊の課題です。

TASKで学んだ技術をそのまま活用できる企業等からの求人はまだまだ限られています。そのような状況でも皆さん、卒業後も学んで身につけた伝統的な技術を活かせる仕事をしたいと今も毎日自分の技術を磨くべく研鑽を積んでいます。

長い歴史の中で育まれてきた伝統的技術・技法を学ぶのは非常に難しいこと、限られた人にしかできないことと思いがちです。しかし、京都伝統工芸大学校の学生を見れば、そのような考えは思い込みに過ぎないのかもしれません。

学校で伝統工芸の技術を身につけようと思ったきっかけ、そこに後継者育成の課題のヒントがあるのかもしれません。

TASKで学んだ学生が伝統的工芸品産業の未来を担うことができるように、まだまだ課題は多くありますが、関係機関が一丸となって取り組み、伝統的工芸品の未来へつなぐ人材を育てたい、そのような思いを胸に学校をあとにしました。 

(※本原稿は、当局インターンシップ生 鈴木ひかるさん(奈良女子大学3回生)の取材レポートに基づくものです。)

掲載関連情報

学校名
京都伝統工芸大学校外部リンク
所在地
京都府南丹市園部町二本松1-1
電話番号
0120-63-1752

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近畿経済産業局 製造産業

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電話:06-6966-6022

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