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伝統的工芸品若手職人の挑戦
京指物(さしもの)の未来のために【京都木工芸協同組合】
担当課室:製造産業課

最終更新日:平成28年12月1日

伝統的工芸品と聞くと、高齢の職人が黙々と手仕事を行っている姿を皆さん、頭に思い浮かべるのではないでしょうか。そのようなイメージがある伝統的工芸品の世界ですが、若手職人も精力的に活動を行っています。

今回は京都木工芸協同組合青年部が新たな活動に取り組み始めたと聞き、京指物の若手職人の方々からお話をお伺いしました。

民間企業から伝統的工芸品の世界へ

京都木工芸協同組合青年部に所属し、京指物のうち彫物の技法を生かして様々な作品を製作している「彫刻工房小谷」の小谷純子さんを訪ねました。

小谷さんは、元々コンピューター関係の職に就いていましたが、ハードワークで体を壊したことがきっかけで、自分のペースで長く続けられる仕事をしようと、 京都伝統工芸大学校(TASK(10月号参照))へ入学し、木彫刻を学びました。

卒業後は親方の下で8年間修行したあと、独立し、現在は自宅を工房として活動しています。

茶道具や仏壇関係の仕事が多いそうですが、合間に展示会用の作品等オリジナルの作品も製作しています。

「金魚玉図」をモチーフとした作品

「金魚玉図」を
モチーフとした作品

(※写真は小谷さんの作品。金魚玉図をモチーフに、彫刻のうちの象嵌の技術を駆使しています。)

独立した当初は仕事もなく、アルバイトをしながら日々技術を磨いてきました。少しずつ組合内から茶道具の仕事が回ってくるようになり、展示会や百貨店の催事等で作品を気に入ってもらった人から注文が入るようになり、ようやく軌道に乗ってきたところです。

親方の下での修行時代も、独立当初も、自宅暮らしで衣食住の保証があったことや、会社員時代の貯金があったから、ここまで来られた、と話してくれました。

まだ弟子を雇うには至っていないそうですが、親方から学び受け継いできた技術を、これからの京指物を担う若者に伝え、後継者を育てていくことが恩返しになると常日頃考えておられます。

伝統的工芸品産業との出会い、弟子入り、修行、独り立ち

次に「一○八 chaju」のヒノタケシさんと「木工藝もりち」の森地正和さんを訪ねました。ヒノさんは指物の技術を活かして、主に椅子や棚等の家具をオーダーメイドで製作しています。森地さんは木工品の製作や古道具の修繕等を行っています。

ヒノさんは実家の家業である花卉生産農家を継ぐものと考えていたところ、ふと訪れた京都伝統産業ふれあい館に展示されていた京指物の飾り棚にひとめぼれし、自分でも作りたいと思ったそうです。棚の製作者の元に行き、直接修行させてほしいと直談判し最初は断られましたが、職業訓練校、九州の同業他社での下積みという5年の年月を経て弟子入りできるようになり、現在は独立して活動しています。

仕事は口コミや展示会等を通してオーダーを受けており、仕事が回り始めているそうです。まだ若いため技術の伝承は考えていないものの、自分の工房で組み椅子や曲げわっぱを作るワークショップを開催し、木に触れる楽しさ、本物の良さを体験してもらって、伝統工芸の良さを伝えています。

製作したソファー

製作したソファー

(※写真はヒノさんが製作したソファー。背もたれから肘掛けへの曲線の動きや背もたれの細工がとても優美です。)

森地さんは、平安遷都1,200年の記念事業の一環で平安京の模型を作るアルバイトに携わったことで、ものづくりに興味を持ち、小谷さんと同じくTASKに入学したそうです。卒業後は先生の指導の下、1年半程修行した後、独立しました。独立した当初は仕事がなかったそうですが、知人から仕事を回してもらったり、高齢のため引退した職人の分の仕事が回ってくるようになりました。

指物の需要はあるものの、後継者がいないため、その職人の代で廃業してしまったり、技術ある職人が弟子をとれず若手が育っていないことに憤りを感じるそうです。

京指物の未来のために

京都木工芸協同組合青年部は8人のメンバーで構成されています。

青年部メンバーの共同作品

青年部メンバーの
共同作品

個人の活動だけでなく、青年部としても新たな活動に取り組み始めています。本年11月には「音楽」をキーワードに9名の木工芸家たちが、独自のインスピレーションを働かせ、製作した新作を発表しました。それも、ただ展示するのではなく、ギャラリーを仮想リビングと見立て、家具や雑貨をレイアウトし、空間をつくるといった新しい展示会でした。来年3月にはテキスタイルの企業とコラボした展示会を開催予定です。

一言で「指物」といってもタンスや飾り棚から彫物まで、一人一人が皆違った個性ある作品を製作していますが、それだけに留まらず、青年部のメンバーのそれぞれの技術を一つの作品に駆使し、ブランド化しようという取組も始まっています。

若手の自分達ががんばることによって、京指物の未来を作っていこうという強い思いが感じられました。

(※写真は青年部メンバーの共同作品です。)

終わりに

青年部として京指物の未来のために何ができるのか、試行錯誤しながらの取組はまだ始まったばかりです。

伝統的工芸品の技術・技法を今の若者に伝えていくためには、潜在的に伝統的工芸品に興味を持っている若者が安心して伝統的工芸品の世界に飛び込んでいける、将来への不安を取り除く施策が必要だと改めて感じました。

※指物とは、釘等を使わずに木と木を組み合わせて作られた家具・建具・調度品等やその技法を指します。京都の京指物、大阪の大阪唐木指物がよく知られています。

掲載関連情報

企業名
京都木工芸協同組合青年部外部リンク
所在地
京都市北区紫野下柏野町15-9
電話番号
075-204-1739

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近畿経済産業局 製造業の振興

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このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 産業部製造産業課

電話:06-6966-6022

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