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最終更新日:平成28年12月1日
ばね式上皿はかり
アンティークなデザインに
こだわったばね式上皿はかり
キッチンスケール(TM)
アンティーク(TM)
大和製衡株式会社は、1945年に設立された計量器メーカーで、その母体の産業機械メーカーの株式会社川西機械製作所の衡器部を含めると2020年に創業100年を迎える老舗の企業です。
同社の製品には、商店で見かける「Yamato」ブランドのばね式上皿はかりの他、同社の製品名がルーツとなっている「ヘルスメーター」や「キツチンスケール(商標登録第0577620号)」等もありますが、売上の大部分は自動車、重工業、食品製造といった産業分野向け製品で、世界中の製造現場等で活躍しています。
今回、このように幅広い産業を対象に製品を展開されている川西社長に、同社の強みや特許を活用した経営戦略等についてインタビューしました。
川西 代表取締役社長
古代エジプトの壁画に天秤の絵が描かれているように、計量は数千年もの歴史を有していますが、その技術は今も進化を遂げ続けています。
弊社は技術革新により卓越した製品を開発しており、トラックが高速道路の料金所ゲートで止まることなく、総重量はもとより軸重、輪重、さらに積み荷の片寄り(水平方向におけるトラックの重心位置)までを一度に計測し計量する弊社の「軸重計」は、時速80kmまで計測が可能で、国内では最速です。また、実際に飛行機が空を飛ぶときに、どのような力がどの程度飛行機にかかるのかを計測する航空機形状開発用の風洞実験装置(風洞天秤)には弊社固有の6分力測定技術が用いられています。
高性能の機種も揃えた
組み合わせはかり
データウェイ(TM)
そして、この高速道路用軸重計の高速重心 測定技術と風洞天秤の6分力測定の技術が今や食品産業で使用されている 「組み合わせはかり」に展開され、インダストリー4.0に対応する新たなる計量計測文化を日本から発信しようとしています。食品用「組み合わせはかり」とは、重さやサイズが一定しない、壊れやすい等の食品の定量詰めを迅速かつ正確に計量する製品で、弊社は最高クラスの処理速度及び精度を備えた機種を揃えており各国のクライアントから最高ランクの評価を受けています。このほかにも世界初またはトップクラスの技術や性能により高いシェアを持つ製品を各国へ展開しています。
このような競争力の高い製品には、特許または特許出願中の発明を活用していますが、500人にも満たない企業が効果的に海外で業績を上げるには、特許は何よりも強力な営業ツールであると考えています。
以前は、特許を活用した競争力のある製品を開発しても、特許が公開されると他社に特許を回避された製品を開発され、取得や維持に多額の費用負担が生じる特許が利益を上げていない状況が続いていました。これを重大な経営課題と考え、当時、取得した特許を改めて検証したところ、出願内容に他者が特許を回避できる「穴」があることに気づき、出願件数を絞り可能な限り広い権利範囲と「穴」のない特許に徹底的にこだわった出願に取り組むことを決断しました。
新たな出願方針の実現には、開発を担う事業部員の能力向上は不可欠です。弊社では、経営方針に沿った知財戦略の実施部門で、社内弁理士が在籍する「情報特許課」において特許公報等の特許情報を収集及び分析し、各事業部へ情報提供を行っています。また、定期的に事業部と共同での社内の勉強会を通じて質の高い出願スキルの向上に取り組んでいます。
「常に研究者の心を失わない経営者」をモットーに、社長である私も「特許で稼ぐ経営方針を定めている以上、経営者も特許に関して社員任せではいけない」との考えから、「難しい」と思いながらも特許に関する追求を欠かさず、出願の検討会議において最善を尽くした出願内容なのかを社員と議論を重ねています。出願後もこの内容で本当によかったのかを何度も思い巡らすこともあります。
出願には決まった弁理士を活用していますが、弁理士は特許出願の専門家であって計量器の専門家ではないので、自社の製品や技術、出願方針を理解してもらうための弁理士への説明は非常に重要と考えています。
また、模倣品対策については、中国では社名や製品名まで同一の模倣品が出回ることもありますが、「B to B製品」の場合は、模倣品が使用されている現場に踏み込むことが困難で特許侵害の確証が取れないため、全製品のパンフレットに商標を意味するTMマークを記載し、情報特許課で原稿を確認しています。
これらの取組により「特許で稼ぐ」経営方針が着実に実を結び、特許でガードされた製品は弊社の6割を占めており、営業部門においても知財の重要性が理解されています。
弊社の革新技術は、新しい計量のコンセプトの創出を可能にしています。
鮮魚の脂肪を簡便・迅速・高精度に
測定できる魚用品質状態判別装置
フィッシュアナライザ(TM)
魚の脂肪量を測る「Fish Analyzer(登録商標第5759976号)」は鮮魚の美味しさの評価の1つである「脂のノリ」を計測する装置で長崎大学及び国立研究開発法人水産研究・教育機構や長崎県や千葉県の水産関係の研究機関との共同研究により製品化したもので、鮮魚か解凍魚かの判別も可能です。従来、鮮魚の良し悪しの評価は経験豊富な専門家のみが五感を駆使して鑑定していましたが、本装置により魚の旨味の品質管理等をサポートすることで、ブランド魚を活用した地方創生を目指す全国各地の漁港や料理店等での使用が期待されています。
弊社の技術をもってすれば、従来、無理と思われていた、または、発想すらなかった計量を実現することは可能で、これからも国内外のライバル企業と切磋琢磨しながら、世界初の計量コンセプトを提供する製品作りを推進することが日本のものづくり企業のあり方と考えています。
近畿経済産業局 地域経済部 産業技術課 特許室
電話:06-6966-6016