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最終更新日:平成29年1月4日
関西地域(近畿経済産業局管内)は、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県の2府5県からなっています。全国におけるシェアをみると、総面積は8.3%(2015年10月1日現在)ですが、輸出通関額(2015年)が21.3%、百貨店・スーパー販売額(2015年)が19.5%、製造業事業所数(2014年)が19.5%、製造品出荷額(2014年)が16.3%、総人口(2016年1月1日現在)が16.9%、域内総生産(2013年度)が16.1%となっており、関西地域の経済規模は全国に対して概ね2割を占めていると言えます(図1)。
また、主要国の名目GDP(図2)をみると関西はインドネシアやオランダに匹敵する経済規模となっています。
図1 全国における関西地域のシェア
図2 主要国の名目GDP
注)関西は2013年度、他は2013年の暦年計数。為替レートは世界の統計より(97.596円/ドル)
関西地域の域内総生産の産業別構成比をみると(図3)、農林水産業0.4%、製造業19.2%、サービス業20.8%を含む第3次産業は全体の概ね四分の三のシェアを占めます。
図3 関西地域内総生産(名目)の産業別構成比(%)
出所:内閣府「平成25年度県民経済計算」
工業統計により製造業の出荷額構成比をみると(図4)、全国と比較して、化学、鉄鋼、電気機械等のウェイトが高くなっています。なお、製造品出荷額は1985年以降概ね横ばいで推移しています。また、全国におけるシェアは、2006年まで低下した後やや上昇し、近年では概ね横ばい傾向となっています(図5)。
図4 関西と全国の製造品出荷額構成比
図5 関西の製造品出荷額の推移(従業者4人以上の事業所)
出所:経済産業省「工業統計調査」
我が国経済は、2016年7-9月期のGDP成長率(2次速報)が物価変動の影響を除いた実質で3四半期連続のプラスとなりました。また、景気動向指数のCI一致指数は10月時点で2か月連続で上昇しており、基調判断は「改善を示している」として、1年10か月ぶりに判断を上方修正しています。
当局では毎月公表の「近畿経済の動向」の中で関西の景況判断をしています。1年間を振り返りますと、中国を始めとするアジア新興国等の景気減速や、年初から進行した円高株安の影響が、輸出や個人消費にみられましたが、設備投資や住宅投資は持ち直しており、雇用情勢も改善を続けていることから、基調判断は「一部に弱い動きがみられるものの、緩やかに改善している」としています。
生産は、海外経済減速や円高の進行により、輸出環境に厳しさがみられましたが、スマートフォン向け電子部品・デバイスや電気自動車等に用いられる蓄電池が高水準を維持したことから、夏頃までは横ばいで推移しました。その後、スマートフォンの高機能化に支えられた需要の拡大もあって電子部品・デバイスが一段と伸長するなど、足下の生産は、緩やかな持ち直しの動きがみられます(図6)。
図6 鉱工業指数
出所:近畿経済産業局「近畿地域鉱工業生産動向」、経済産業省「鉱工業指数」
個人消費について、百貨店・スーパー販売額(図7)は、天候不順等から衣料品の不振が続くとともに、年初からの株価下落の影響等により消費マインドの低下がみられたことから高額品が鈍化するなど、前年を下回る状況が続いています。乗用車新規登録・届出台数(図8)は、普通車が新型車効果から前年を上回っていますが、軽自動車は、軽自動車税引上げ以降の低迷が続いており、また燃費不正問題の影響等もあって回復が遅れています。家電販売額(図9)も白物家電は堅調ですがその他は弱含んでおり、個人消費全体としては改善の動きに足踏みがみられます。
図7 百貨店・スーパー販売状況
出所:近畿経済産業局「百貨店・スーパー販売状況」
図8 乗用車新規登録・届出台数
出所:(一社)日本自動車販売協会連合会、(一社)全国軽自動車協会連合会
図9 家電販売額
出所:GfK Japan
関西国際空港の国際線を利用する旅客数をみると、国際線LCC(格安航空会社)旅客便数の増加等を背景に外国人旅客数は増勢が続いており(図10)、ホテルの稼働率も高水準で推移しました。一方、中国人観光客による「爆買い」は、中国の関税強化に加え円高も進行したことなどから一服し、高額品から化粧品等の消耗品へのシフトがみられるようになりました。
図10 関西国際空港の国際線を利用する航空旅客数の推移
出所:関西エアポート㈱報道発表資料
貿易(輸出)額(図11)は、海外の景気減速や円高の進行もあって、前年を下回る状況が続いています。地域別にみると、アジア向けが全体的に低調であり、中国向けの減少も続いています。また、品目別では、鉄鋼や科学光学機器などの減少が目立っています。
図11 輸出
出所:大阪税関、財務省「貿易統計」
雇用情勢は、有効求人倍率(図12)、新規求人倍率(図13)ともに上昇が続き、有効求人倍率はバブル期をも上回る高水準となっています。また、完全失業率(図14)は前年を下回っており、概ね3%台の低水準で推移するなど、雇用情勢は改善しています。
図12 有効求人倍率
出所:厚生労働省「一般職業紹介状況」
図13 新規求人倍率
出所:厚生労働省「一般職業紹介状況」
図14 完全失業率
出所:総務省「労働力調査」
これから関西経済が持続的に回復していくためには、積極的な設備投資や所得改善による消費の拡大が不可欠です。また、外国人観光客が増加する中で、一層のインバウンド観光需要を取り込み、関西経済の成長へつなげていくことが期待されているところです。
ただし、海外経済の不確実性の高まりがみられるなか、中国を始めとするアジア新興国等の景気の下振れが懸念されます。2015年の貿易統計から海外との結びつきをみると、全国ではアメリカ向けのシェアが高いのに対し、関西では中国向けシェアが高くなっています。関西は中国との結びつきが強いため、引き続き中国経済の動向について注視が必要です(図15、16)。
図15 関西の輸出額の国別構成比(2015年)
出所:大阪税関「近畿圏貿易概況」
図16 全国の輸出額の国別構成比(2015年)
出所:財務省「貿易統計」