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最終更新日:平成29年3月1日
近畿経済産業局は中小企業等の海外展開支援を実施しています。今回はベトナムに焦点をあてベトナムの支援状況等についてご紹介いたします。
ベトナムは、日本(約38万k㎡)よりやや小さい面積(約33万k㎡)で、現在の約9,000万人 の人口が2029年には1億人を超えると予測されており、平均年齢は20代後半という非常に活気あふれる国です。ASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟し、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)にも参加しています。近年、チリや韓国とのFTAが発効し、EUともFTA交渉を進めるなど、経済連携に積極的な国です。
ベトナムへの進出を考える中小企業から見た魅力は、高い成長率を誇る需要の取り込み、ASEAN経済共同体への対応、安定している政治体制、豊富な労働力などが挙げられます。
特に、人口ボーナス(*1)を享受している非常に若い国の一つであるベトナムの人件費は、近年高騰傾向にあるとはいえ、中国やタイなどの周辺諸国と比べると3分の1から2分の1程度で、ワーカーの月額賃金は約180米ドルと、ブルネイを除くASEAN9カ国中3番目に抑えられた水準となっています(中国約450米ドル、タイ約350米ドル、マレーシア約300米ドル、インドネシア・インド約250米ドル、)。また、1億近くの人口を有することから、生産拠点だけでなく新たなマーケットとしても期待されています。
ベトナムは、日本と同じく仏教国で、最大のODA援助国(2015年度は約2,000億円)(*2)でもあり、対日感情が良好とされています。
(*1) 労働力増加率が人口増加率よりも高くなることにより、経済成長が後押しされること
(*2)同国への主要援助国は1位日本、2位韓国、3位フランス、4位オーストラリア、5位ドイツ
上記のように魅力的な進出先であるベトナムへ進出を考える中小企業を、当局では支援しています。
近年行われた各種調査では、企業のベトナムへの進出ニーズは高いものになっています。例えば、株式会社帝国データバンクの中小企業を対象とした調査(2015年11月)では、「新たな海外進出予定のある企業」のうち、「今後新たに進出予定のある国・地域」は、ベトナムが最も多く31.1%を占め、2位タイ(19.3%)や3位インドネシア(16.3%)からも抜きん出た結果になっています。また、みずほ総合研究所株式会社の製造業を対象とした調査(2016年2月)でも、「海外展開で最も力を入れていく地域」ではASEAN(43.8%)が中国(30.5%)を押さえてトップであり、その中でベトナムを重視すると回答した企業は53.5%(タイに続いて2位)に及びました。このベトナムへの注目の背景としては、TPPへの期待の他に、低い労働コストや多人口による国内市場の有望性が挙げられています。
近畿地域でもベトナムへの期待は大きく、昨年度(2015年4月~2016年3月)、中小企業基盤整備機構近畿本部が受けた相談件数のうち、ベトナムに関する相談が最多で、全相談件数の2割以上を占めました。特に、直接投資(進出)に関する相談の半分はベトナム進出に関するもので、高いニーズを示しています。
次に、当局でのベトナム支援関係についての取り組みをご紹介します。
上記のように魅力的な進出先であるベトナムへ進出を考える中小企業を、当局では支援しています。当局の呼びかけにより、 平成24年に「関西ベトナム経済交流会議」を設置しました。関西の支援機関等(*3)の各々が支援ツールを持ち寄り情報共有することで、関西一体となって中小企業等のベトナム進出を支援することを目的としています。
具体的には、ベトナム商工省が平成27年10月に大阪で行ったベトナム裾野産業セミナー・ビジネス交流会の広報協力や、平成26年11月、平成28年4月に大阪で開催されたベトナム・ドンナイ省の投資環境改善に向けた協力推進会議に参画機関が出席し、同地のビジネス課題や対応状況について知見を深めています。
(*3) 参画機関(順不同):近畿経済産業局(事務局)、日本貿易振興機構(JETRO)大阪本部、中小企業基盤整備機構近畿本部、(公社)関西経済連合会、大阪商工会議所、(公財)大阪産業振興機構、国際協力機構(JICA関西)、(一財)海外産業人材育成協会(HIDA)、(公財)太平洋人材交流センター(PREX)、大阪府、大阪市、兵庫県、堺市
また当局では、ベトナム政府機関(中央政府・地方政府)との連携強化を図っています。ベトナム商工省(*4)や、ベトナム南部に位置するドンナイ省(*5)、ホーチミン市(*6)と経済発展促進にかかる協力文書を締結し、現地の投資環境の改善 等に努めてきました。ベトナム商工省とは2012年11月(2015年5月更新)、ドンナイ省とは2013年4月(2015年5月更新)、ホーチミン市とは2014年6月(2016年9月更新)に協力文書を締結しています 。その内容としては、裾野産業育成に関する協力や産業人材育成に関する協力などを実施しています。
詳細は以下をご参照ください。
(*4)ベトナム商工省:中央省庁であり、日本の経済産業省のカウンターパートにあたる
(*5)ドンナイ省:ベトナム南部に位置し、ホーチミン市に隣接する地方自治体
(*6)ホーチミン市:ベトナム最大の経済都市(中央直轄市で省には属さない)
上記のベトナム政府機関との協力文書締結によって実現したことの一つに、日本語相談窓口「関西デスク」の設置があります。日本企業のベトナム進出にあたり各種行政手続関係のサポートを行う目的で、ドンナイ省とホーチミン市の工業団地管理局内に設置されており、双方ともメールでは日本語対応が可能です。
ベトナムでは事業を開始するにあたり法律に則ったライセンス等の申請が必要であり、その手続のサポートをワンストップ・無料で行います。また、進出後においても、現地政府関係部局へのつなぎ役など相談窓口として企業の方にご利用いただいています。
2016年10月には「TPP発効を見据えたベトナムのものづくり拠点化研究会」を設置しました。本研究会では、ベトナムに進出した中小企業の事業状況や今後進出の可能性のある中小企業の動向等を把握し、更なる中小企業の進出支援やものづくりネットワークの形成を促すための方策等を検討しています。
ベトナムでは進出日系企業の現地部材調達率が32.1%と、周辺国と比べても低く、不足する裾野産業(*7)への進出を望む声があるものの、中小企業が独力で現地における販路を開拓していくことは容易ではなく、販路ニーズに沿った企業間連携を促すような機関もほぼ存在していません。
また、ベトナムから日本に多くの人材が留学や技能実習で来日しているものの、留学生情報の不足やベトナム人材と中小企業との交流機会が乏しいという事情もあり、そのメリットが十分には活かされていません。
当局では、これら課題の解決のため、関西ベトナム経済交流会議メンバーやベトナム現地政府・関係機関と連携し、中小製造企業等の支援ネットワークを形成することで、関西企業の更なるベトナム進出へと繋げていきます。
(*7)裾野産業:材料、部品、半製品を製造し、生産原料又は消費財としての完成品の製 造・組立を行う分野へ提供する工業分野
近畿経済産業局 通商部 国際事業課
電話:06-6966-6032