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最終更新日:平成29年3月1日
近畿経済産業局では、関西の起業環境整備の加速化を目的に、新たな産業と雇用を生み出すベンチャーを関西一体となって支援し、「地域でイノベーターを生み、育てる好循環の確立」に向け、今後3年の取組方針となるアクションプランを策定しました。平成29年度より、多くの関係機関と共同してプロジェクトを推進する予定です。
本プロジェクトでは、「テックベーター(技術系ベンチャー)」「リノベーター(ベンチャー型事業承継)」「ジノベーター(地域課題解決型ベンチャー)」という3つのイノベーターを対象として様々な事業を展開する予定です。
今回は「ベンチャー型事業承継」の好事例である株式会社ナンガ 代表取締役社長 横田智之さんにインタビューをしました。
会社の成り立ちはまず、祖父が自転車の修理事業を行うことからスタートし、その後、昭和16年に当時、米原市周辺で盛んに行われていた布団の縫製加工を開始したのが始まりです。
昭和40年にはキャンプなどで使用するシュラフ(寝袋)の下請加工を開始し、平成7年には2代目である父が自社ブランド「NANGA」を立ち上げました。
私はというと、小さい頃から父と母のやりとりから家業の状況は肌で感じており、いつかは継ぐことになるだろうと想像しながらも、すぐには家業に入らず、小さな家族経営の会社に営業職として就職しました。
父は職人肌で、会社の営業面が弱いことは何となく分かっていたので自然と営業職を選んでいました。
23歳の時、父から「おまえを会社で受け入れる準備が整った」と言われ、入社するもすごく安月給で(笑)。
しかも、入社するやいなや全国の得意先リストと大量の在庫を積んだ車を渡され、一言「営業に回ってこい」と言われました。製品の強みや良さがあまり分からないまま営業に回り、逆に得意先から教わることになりました。
今思えば、この荒修行がなければ、会社の存在意義などに気付くこともなかったので非常に良い経験でした。
私が社長に就任したのは32歳の時。当時、業界では少しずつ自社製品の品質が認められていたころでした。シュラフは季節によってかなり工場の稼働率の偏りがあり、安定した受注生産の体制を整えるため、シュラフ以外にも会社の主力商品を生み出そうと様々な挑戦をしてきました。しかし、ことごとく失敗。そんなある日、「OEM(委託者のブランドで製品を生産すること)でダウンジャケットを作らないか」というお話しをいただき、私自身、ファッションにも興味があったため、すぐに受けました。
今現在、自社の売上7割にあたるアパレル事業も最初は私と従業員の二人で取りかかることになったため、本当に苦労の連続でした。
ダウンジャケットはシュラフの縫製技術を転用すれば容易に生産できると考えていたのですが、一筋縄ではいきませんでした。デザインをはじめ、細部に至るまで、別次元の技術が求められ、一からのスタートを切ることになりました。
最初はOEMで始まったアパレル事業ですが、今では約40社のセレクトショップとの取引があり、ショップとのダブルネーム商品の売れ行きも好調です。今後はここで蓄積したノウハウを活かし、シングルネームでのブランド確立に力を入れていきたいと考えています。
2月7日に開催された近畿経済産業局主催「NEXT INNOVATION Conference」のトークセッションでは、 “ベンチャー型事業承継”を行った経営者の方々とお話しする機会がありました。それぞれやり方も事業や業種、地域も違うけど、苦労しながらも自分たちのやり方で新たな道を切り拓いておられる方ばかりで非常に参考になり、視野も広がりました。
事業承継については、よく世間一般でも言われている株式や人の問題など、先代の作り上げた会社のストーリーを良いところもそうでないところもすべて引き継ぐことになります。
親しい同級生の中には起業家も多く、会社の事業基盤が既にあって羨ましいと言われることもありましたが、本当にくじけそうになるときが多くありました。でも私は根っからの負けず嫌いなので、「同級生に負けるもんか」と必死にアパレル事業を展開してきました。
よく新しいことに挑戦すると、周りが反対してくるという話を耳にします。弊社もアパレル事業をはじめた時、社内でかなり反対もありました。
ですが、経営者としてなぜ今、この事業に取り組むのか、会社の未来をどう考えているのか、会社のビジョンを共有することで乗り越えてきました。
私は普段から積極的に社員とコミュニケーションをとり、“夢のはしっこを語る”ようにしています。暑苦しいくらい(笑)
すると一人、また一人とその想いに共感してくれる社員が増え、社内全体に浸透させることで、会社が出来上がっていく。引き継ぐ人次第で会社の未来はいかようにも変えることができると感じました。
アパレル事業を展開してから売上は10倍、従業員は5倍に増えました。人を採用するということはその人の人生、そして未来を預かるということだと考えているので自分が採用に関わった従業員の退職までの仕事は自分の代で作りたいと考えています。
そのためにはもっと社会に自社ブランド「NANGA」を認知してもらい、ゆくゆくは世界で認めてもらえるように「まずはやってみる」。
父から受け継いだ企業マインドをもとに、新たな挑戦を繰り返していくことで、従業員が胸を張って「NANGAで働いていて良かった」と言えるくらいの世界ブランドを確立していきたいと考えています。
「関西起業家・ベンチャーエコシステム構築プロジェクト」Defining The INNOVATOR
近畿経済産業局 産業部 創業・経営支援課
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