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今、環境ビジネスが熱い!!
環境・エネルギー関連技術の実用化に向けて
担当課室:環境・リサイクル課

最終更新日:令和5年4月3日

環境・リサイクル課では、関西における環境ビジネスの推進に取り組んでいます。 今年度は、「地域中核企業創出・支援事業」として、6つのプロジェクトの新事業創出とそのためのネットワーク形成を目的にセミナーやビジネスマッチングなど様々な取組を行いました。

今回は、大阪府立大学を事業管理機関とした「MIG溶接技術の開発により実現した難燃性マグネシウム合金部材の用途展開と移動体(新幹線・自動車)分野などへの省エネ型部材の販路開拓支援事業」(以下、「マグネシウム合金プロジェクト」とする。)の取組内容を紹介します。

1.はじめに

国内の環境産業の市場規模(推計値)は、2014年に全体で105兆4,133億円と過去最大となっています。(前年比1.3%増、2000年の約1.8倍)

また、全産業に占める環境産業の市場規模の割合は、2000年の6.2%から2014年の11.1%まで増加するとともに、GDPに占める環境産業の付加価値額の割合も、2000年の5.5%から2014年の8.7%まで増加しており、環境産業が我が国の経済成長に与える影響が大きくなっています。

(出典:環境省「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書(平成28年7月)」)

2.マグネシウム合金プロジェクトの概要

マグネシウムは実用金属の中で最も軽量であり、鉄道等輸送機器に採用すれば、車体重量の軽減による省エネ効果が期待できますが、一方で、大型構造物への加工性向上や量産化への対応といった課題もあり、用途が限られていました。そこで、東大阪市の木ノ本伸線株式会社がマグネシウム合金展伸材の生産企業や溶接機器メーカー等と連携して、大阪府立大学と共同でマグネシウム合金用のMIG溶接ワイヤ・TIG溶接棒を開発しました。本事業ではマグネシウム合金の生産加工体制を構築し、今後ますます軽量化が求められる輸送機器分野への進出を目指すとともに、大手輸送機器メーカーの存在や優れた金属加工関連企業の集積といった関西におけるポテンシャルを生かし、さらなる用途拡大と普及促進を図っています。

【平成28年度事業イメージ】
平成28年度事業イメージ

【マグネシウムの優位性】
マグネシウムの優位性
(出典:一般社団法人日本マグネシウム協会)

3.マグネシウム合金溶接・接合セミナーの開催

マグネシウム合金の課題解決に向けた取組を周知し、普及促進につなげる目的でセミナーを開催しました。マグネシウムの「燃えやすい」や「実用的な溶接方法が確立されていない」といった従来のマイナスイメージが実用化への障壁ともなり得ることから、マグネシウム合金に関する研究者や専門家から、加工技術の確立や安全性の確保、活用の展望等について紹介するセミナーを開催しました。セミナーでは、金属加工業をはじめマグネシウム合金を活用したビジネスに関心のある企業など約150名の参加を得ました。

開催日時
2017年2月9日(木) 13時30分~17時30分
場所
グランフロント大阪北館タワーC 8階カンファレンスルームC01&C02
プログラム
□ 開会の辞
 近畿経済産業局 資源エネルギー環境部長 永山 純弘
□ 「Mg合金材の加工技術と活用分野の現状と将来」
 一般社団法人 日本マグネシウム協会 専務理事 小原 久 氏
□ 「Mg合金のTIG溶接、MIG溶接について」
 大阪大学 名誉教授・接合科学研究所 特任教授 中田 一博 氏
□ 「Mg合金のFSW、FSJ接合について」
 川崎重工業株式会社 技術開発本部 システム技術開発センター生産技術開発部 部長 藤本 光生 氏
□ 「世界初のMg合金製高速鉄道の誕生期待」
 公益財団法人 鉄道総合技術研究所 材料技術研究部 主任研究員  森 久史 氏
□ 閉会の辞
 大阪府立大学 地域連携研究機構 教授 辻川 正人 氏

一般社団法人日本マグネシウム協会 小原 久専務理事の講演内容

一般社団法人日本マグネシウム協会 小原 久専務理事

日本のマグネシウム需要推移

世界的に自動車の燃費規制が強化されるなか、軽量化は必須の課題であり、実際に欧州の自動車メーカーでは、軽量化においてマグネシウム合金が採用されている事例をご紹介いただきました。また、他の素材に比べてマグネシウム合金の種類はまだ少なく、今後のマグネシウム需要の高まりとともに、開発も進めていく必要があるとのお話をいただきました。

大阪大学 名誉教授・接合科学研究所 中田 一博特任教授の講演内容

大阪大学 名誉教授・接合科学研究所 中田 一博特任教授

溶接・接合法

大型構造物である輸送機器の軽量化におけるマルチマテリアル化が進むなかで、溶接構造部材、複合部材、異材接合部材等の新たなニーズに対応するにはマグネシウムの溶接・接合技術が不可欠であるとしたうえで、マグネシウム合金の各溶接法が他の溶接同様に可能であることについて詳しく解説していただきました。

川崎重工業(株) 技術開発本部 システム技術開発センター 生産技術開発部 藤本 光生部長の講演内容

川崎重工業(株) 技術開発本部 システム技術開発センター 生産技術開発部 藤本 光生部長

講演資料の一部抜粋

マグネシウム合金におけるFSW(摩擦攪拌接合)、FSJ(摩擦攪拌点接合)による接合性、自動化及び省エネ化についてお話しいただきました。また、マグネシウム合金は軽量化に加え、リサイクル性にも優れており今後の実用化に期待しているとのお話をいただきました。

公益財団法人 鉄道総合技術研究所 材料技術研究部 森 久史主任研究員の講演内容

公益財団法人 鉄道総合技術研究所 材料技術研究部 森 久史主任研究員

講演資料

鉄道車両におけるこれまでの省エネに関する取組や軽量化事例をご紹介いただくとともに、マグネシウム合金については、さらなる軽量化による省エネ効果や需要拡大によるコスト削減、リサイクル性による環境負荷低減等に大変期待しているとのメッセージをいただきました。

セミナー参加者の声

セミナー風景
  • 今回に続き基礎技術と実用等について紹介して欲しい。(精密部品加工)
  • マグネシウムの普及に向けた取組、実例等も交えて最新の研究事例の紹介を希望。(車両メーカー)
  •  自動車等業界のニーズと今後の課題などさらに詳しく知りたい。(産業支援機関)

4.プロジェクトの実施にあたって

写真:以下に解説
松井PM

本プロジェクトの実施にあたり、支援人材として事業を推進した兵庫県立工業技術センター特別顧問の松井 繁朋プロジェクトマネージャー(川崎重工業(株)出身)にお話を伺いました。

 現在、最軽量実用金属としてマグネシウム合金が熱い目でみられています。マグネシウムの密度は1立方センチメートル当たり、1.74グラムと鉄の1/4、アルミニウムの2/3の軽さです。さらに金属特有のリサイクル性の高さも持ち合わせている材料です。

 地球環境対策(温暖化の抑制-CO2排出量の削減)として自動車に対する燃費規制(走行距離1km当たりCO2排出量)が欧米日中で強化されていきます。ドイツにおける目標は2025年は2020年比△18%、2030年には2020年比△37%ですが、これは車両の軽量化はもちろんのことエンジンの燃費効率など総合的な対策が必要となります。   

 高速鉄道車両をはじめとする輸送機器についてもマグネシウム合金の構体の開発が進められています。車体重量を軽減することによって省エネルギー化を促進しようとしているのです。このためにマグネシウム合金材の難燃化技術や展伸材の形状の高度化と塑性加工技術の進歩、その溶接・接合技術の開発と実用化が進んでいます。  

 去る2月9日(木)に関西で初めてマグネシウム合金の溶接・接合セミナーが開催されました。マグネシウム合金に携わっておられる専門家から、マグネシウム合金の溶接を中心に、その他の加工技術並びに適用製品やその将来性について話していただいたこのセミナーには、地域の企業はもちろんのこと他府県からも企業、大学、公設試などから150名を越える参加があり、大変盛況でした。参加者からは引き続きマグネシウム合金の溶接のセミナー等の開催を期待するとの要望もありましたが、今後もプロジェクトを充実させるべく、マグネシウム合金溶接・接合セミナー等で、鉄、鋼、アルミ、CFRPなどとの異種材料との接着接合技術も含め、そこから生まれる製品の幅をさらに拡大していきたいと考えています。

事業管理機関である大阪府立大学URAセンター長 辻川 正人教授より

 本プロジェクトはリサイクル性、省エネルギー化に優れた最軽量実用金属マグネシウム合金の利用範囲を広げるものです。事業管理機関としては地域の中核企業の創出や地域の中小企業の新事業の拡大により地域経済活性化のお手伝いができればと思っております。

5.おわりに

環境ビジネスの推進により地域の持続的な発展に資する取組の一つとして、マグネシウム合金プロジェクトを紹介しました。前述のように、セミナーでは多くの参加者で活気にあふれ、講師の方々からも今後様々な分野への展開が期待できるとのお話をいただきましたが、同時に未だ課題もあり、今後はこのセミナー等を契機としたネットワークの形成により、地域一体となったサプライチェーンの構築やユーザー企業の発掘を目指していく必要があります。ご関心のある企業や支援機関等がありましたら、是非下記までご連絡ください。

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 資源エネルギー環境部 環境・資源循環経済課

電話:06-6966-6018

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