トップページ > 広報誌・E!KANSAI > 4月号TOPICS
最終更新日:平成29年4月3日
2016年4月に電力の小売全面自由化が始まりました。
電力の小売全面自由化は電力システム改革の第2段階(第1段階は広域的運営推進機関の設立、第3段階は送配電部門の法的分離)にあたり、①電力の安定供給の確保、②電気料金の最大限抑制、③需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大を目的として2000年から段階的に実施しています。
図1. 電力システム改革全体像
2000年から段階的に進めてきた電力の小売全面自由化は電力システム改革の最大の柱です。これまで、一般家庭では、地域毎に独占している電力会社から、規制を受けた料金メニューしか選ぶことが出来ませんでした。しかし、2016年4月からは、一般家庭やコンビニ等を含む全ての需要家が、電力会社や料金メニューを自由に選択出来るようになりました。
図2. 電力自由化の推移
今回は、関西エリア(自由化以前の関西電力の供給エリア)における電力の小売全面自由化の特徴を、データとともにご紹介します。
電力の小売全面自由化により、関西エリアにおける新電力事業者(電力自由化後に参入した電力事業者)との契約(新たな電力供給会社への変更(以下「スイッチング」))と電力供給会社の変更を伴わない供給契約(自由化料金の契約)の変更(以下「社内変更」))の状況と推移を見てみます。
関西エリアでは、2016年4月までに139,134件のスイッチングがあり、その後は、月約40,000件のスイッチングで推移しています。一方、社内変更は、4月から10月までは月平均に約 20,000件で推移していましたが、11月は53,119件の変更があり、はじめて単月でスイッチングの件数を超えました。(表1)
その要因としては、自由化以前に供給をしていた関西電力(以下「旧一般電気事業者」)が10月から新料金メニューを始めたことが考えられます。
なお、関西エリアにおいてスイッチングが社内変更よりも高く推移しているのは、①関西エリアに多くの小売電気事業者が新規参入し、②関西電力の電気料金よりも安価に提供していることが考えられます。その巻き返しとして、関西電力が新料金メニューを打ち出し、11月はそれが功を奏したものと思われます。
表1. 関西エリアのスイッチング推移
図3. 月別契約変更件数と契約変更割合
全国的にみると、スイッチングや社内変更は地域によって全く異なった様相となっています。
東京や関西の大都市部では、多くの小売電気事業者が参入したためスイッチング率が高くなっていますが、その他の地域のスイッチング率は、北海道を除いてあまり高くなっていません。(地域別のスイッチング率は、東京エリアが5.68%と最も高く、関西エリアが4.57%、北海道エリアが4.14%と続きます。)
東京・関西・北海道の電気料金(規制料金)が他地域と比べて高いため、新規参入事業者がネット事業や携帯電話等と電気料金をセット販売で安くする新サービスを提供するなど、旧一般電気事業者との差別化を図ることができたことによりスイッチングが多くなったものと考えられます。
一方、東京・関西以外の地域では、社内変更率が高い地域が多くなっています。(中部エリアが12.54%と最も高く、中国エリアが8.49%と続きます。)
この要因としては、前述したように大都市部以外では、新しい小売電気事業者の参入数があまり多くないほか、もともと電気料金(規制料金)が安い旧一般電気事業者の新たなメニューが需要家にとって魅力的であるところが大きいと考えられます。
表2. 全国の低圧部門のスイッチング状況(12月までの累計)
電力の小売全面自由化以降、関西エリアでは、平均して月40,000件のスイッチングがあり、新しい制度としては非常に良いスタートであるといえます。
なお、経済産業省が昨年9月に実施したアンケートでは、電力の小売全面自由化の認知度は90%を超えており、電気料金が下がれば変更したいといった人も多いことから、今後も継続的にスイッチングあるいは社内変更が行われるものと思われます。
スイッチングのきっかけとなる電気料金の比較については、燃料費の影響も大きいのですが、電力の小売全面自由化後の2016年11月には2015年11月と比較して全地域で下がっているものの、電力会社毎の料金には大きな差があります。(表3)
表3. 全国の電気料金(規制料金)
関西エリアにおける新電力事業者の販売電力量は、低圧部門では電力自由化が開始した4月は11,249千kWh、8月には134,435千kWhとなっており(季節要因が大きいため、単純な比較は出来ませんが、新電力事業者がこれだけの電力量を調達したとお考えください)、その後も新電力事業者の電力販売量は、順調に増加しています。
関西エリアにおける新電力事業者の販売電力量の全体に占める割合(低圧部門)は、4月に0.27%であったものが12月には、4.37%と約16倍になっており、今後も新電力事業者のシェアが増加していくものと思われます。
表4. 新電力の販売電力量
昨年4月の電力の小売全面自由化から、関西エリアでは12月までに約4.5%の方が新電力事業者に変更されています。また約2%の方は、関西電力を供給会社として選択しつつ、自由化された料金に変更をされています。
しかし多くの方は、これまでと同様の契約により関西電力からの電力供給を受けられているのも事実です。
また、今年4月1日からは、ガスの小売全面自由化がはじまります。
どちらにも共通していえることは、「あわてて契約変更をする必要はない」ということです。何もしなければ、これまで供給している電力会社、ガス会社から引き続き電気及びガスの供給が行われます。
電力会社の変更を二重に申し込んでいた事例や電力自由化に乗じた投資勧誘などのトラブルも多く報告されていますので、電力・ガスの供給契約の変更を検討されるときは、①正確な情報を収集し、②契約内容をよく理解し、③便乗した勧誘(太陽光発電パネルを一緒に買わせるなど)にも気をつけましょう。
そして、最低限、次の点に留意して頂き、納得した上で、変更を行ってください。繰り返しますが「あわてて契約変更する必要はありません」。
近畿経済産業局 資源エネルギー環境部 電力・ガス事業課
電話:06-6966-6046