トップページ > 広報誌・E!KANSAI > 5月号特集
最終更新日:平成29年5月1日
政府の成長戦略の中では、医療費が増え続けている現状において「国民の健康寿命の延伸」に向けた取組が位置付けられており、保険者や企業に対してはデータヘルス計画に基づく健康づくりや疾病予防、重症化予防が求められています。特に企業においては今後労働力人口が減少していく中で、生産性の維持・向上のためには従業員の健康保持・増進が不可欠であることから、健康管理に必要な経費を「コスト」から「投資」へと転換し、健康づくりを経営的視点から戦略的に実践する「健康経営」を推進していくことが重要となっています。
※健康経営は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
「健康経営」とは、従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、従業員の健康管理を経営的視点から考え戦略的に実践することです。企業が経営理念に基づき、従業員の健康保持・増進に取り組むことによって、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や組織としての価値向上へ繋がることが期待されています。
経済産業省では、健康経営に取り組む法人を顕彰する制度として、平成26年度から東京証券取引所と共同で、上場企業を対象とした「健康経営銘柄」の選定を実施するとともに、平成28年度から、上場企業に限らずより多くの法人による優良な健康経営の取組を「見える化」するための「健康経営優良法人認定制度」を実施しています。
近畿経済産業局では、健康経営について、中小企業を含めたより多くの企業まで裾野を拡大していくことを目的に、平成28年度に近畿地域の中小企業を対象とした健康経営に対する意識や取組状況及び健康経営実践企業に対する支援のあり方についての実態調査を実施し、事例集に取りまとめました。
その調査事業の一環として、中小企業が健康経営に取り組む際のポイントやノウハウの紹介と、健康経営に取り組む際に活用できる健康関連機器やサービスの紹介による健康経営の促進及び健康関連産業のビジネス展開支援を目的として、平成29年2月10日(金)にグランフロント大阪において、健康経営普及啓発セミナー「健康経営は難しくない!中小企業における健康経営のススメ」を開催しました(当日参加者117名)。
以下では、セミナーの概要について紹介します。
基調講演は「やってみる!中小企業での健康経営」と題して、講師の山本氏から健康経営の必要性やその考え方、現在の保険制度の仕組み、そして中小企業の方々がこれから健康経営に取り組むにあたってのポイントと具体的な取組の進め方について分かりやすく説明をいただきました。 健康経営は企業にとって、「ブランドの向上」、「コストの削減」、「活気の増加」などメリットの大きい経営コンセプトであり、取り組むにあたっての重要な考え方として「後手に回らず先手で取り組む」、「現場の実態に即したポートフォリオを組む」、「支え合うことで孤立させない」の3点が基本となると説明がありました。また、具体的に取組を進めていく上では、日常の身近な健康課題の改善から始めること、シンプルでも目標を立てて取り組むこと、また互いに声かけをするなど顔が見える関係づくりを行うことなどが大事であるということや、取組を継続していくには、経営層が従業員、労働組合、保険者など周囲の関係者を巻き込む一方で、自らが率先者となって納得感と切迫感を持つことが必要であると述べられました。
日新工芸株式会社(京都府久世郡久御山町)は、主にカップやトロフィー等の褒賞品の製造及び販売を行っている中小企業で、健康経営の取組を3点紹介していただきました。
1点目は協会けんぽ京都支部が推進する禁煙メリットの啓発活動への取組と段階的な敷地内禁煙の推進、2点目は産業保健総合支援センターの促進員を活用したメンタルヘルス等に関しての無料アドバイスや各階層別の従業員向けの研修の実施、3点目は2ヶ月に1回発行している社内広報誌「管理部letter」による生活習慣病予防等の健康情報の提供です。健康経営の進め方として、「お金をかけなくても工夫してできることからやる。やってみて従業員の反応を見ながら軌道修正する。」というメッセージを述べられました。
小西化学工業株式会社(和歌山県和歌山市)は、主に精密化学品や機能性化学品の研究開発及び製造を行っている中小企業で、24時間稼働プラントの三交替制勤務などがある中で、従業員には少しでも長く健康で勤務を続けてもらえるよう健康経営に取り組んでいます。
具体的には、定期健康診断等の受診率100%の継続、腫瘍マーカー検査補助やインフルエンザ予防接種補助、禁煙キャンペーンやエコ通勤手当の支給、協会けんぽ和歌山支部による「健康づくりチャレンジ運動」を活用した歩行測定などの様々な取組に加え、「心」の健康づくりのための「キラリ!KONISHI」という社内活性化活動として、全従業員参加によるチーム活動の見える化やポスターコンテスト、社長との昼食会やコミュニケーションなどを通じたモチベーションアップのための取組について紹介をしていただきました。
「TAVENAL OKIBEN」は、素材や調理方法にこだわることで、一般的な市販弁当と比べて最大80倍もの抗酸化力を実現し、7大栄養素をバランス良く摂取できるという「社食」サービスです。利用形式は、各自が都合に合わせて予約注文する「日替わりメニュー」、毎週火曜日に届け金曜日に回収する「定期配送プラン」があり、週替わり3種類のメニューを提供しています。
「健康100日プロジェクト」は、従業員一人一人に健康行動の習慣を促し、セルフマネジメント能力の向上と職場の活性化を目指すプログラムです。各自が設定した健康行動やダイエット等の目標をメンバー間で共有し、互いに競い励まし合うことで、一人では難しい健康活動の行動継続が可能になるとともに、職場コミュニケーションの活性化にもつながります。
「メディカルフィットネス」は、健康診断情報や整形系の症状、体調といった情報を入力するだけで、医学的根拠に基づいた最適な運動メニューを提供できるサービスです。ユーザー情報は、健康診断結果や問診結果のほか、体組成計などの家庭用の計測機器等による情報を活用することが可能で、一人一人に合わせたオーダーメイドの運動メニューが提供できます。
「疲労ストレス測定システム」は、指を測定器に挿入するだけで脈波と心電波を同時に測定し、疲労・ストレスの評価基準である自律神経バランスと自律神経機能年齢を示すことができます。疲労・ストレス度合いを客観的・高精度に測定することができるため、日常的な計測により従業員自身による「未病段階」でのリスク把握に活用できます。
セミナー会場内に展示ブースを設け、ヘルスケア関連製品・サービスの紹介をしていただいた4社に出展していただきました。各ブースでは、会場の時間終了まで多くのセミナー来場者で賑わっており、登壇企業を含めたセミナー参加者にとって、健康経営への更なる取組とヘルスケア産業の活性化に向けた活発な情報交換の場となりました。
近畿経済産業局では、平成28年度に実施した近畿地域における健康経営普及啓発調査について、調査結果を「中小企業における健康経営のススメ~健康経営の実践に役立つ事例集~」として取りまとめましたので、是非ご覧ください。
「中小企業における健康経営のススメ~健康経営の実践に役立つ事例集~」
地域経済部 バイオ・医療機器技術振興課
電話:06-6966-6163