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老舗石鹸メーカーを事業承継し、大病の克服を経営に活かす
~株式会社マックス 5代目 大野範子社長の挑戦~
担当課室 中小企業政策調査課

最終更新日:平成29年6月1日

老舗石鹸メーカー 株式会社マックスの概要

株式会社マックスは、創業112年の老舗石鹸メーカーで、古くは小学校の手洗い用のレモン石鹸を製造してきました。その後、時代やライフスタイルの変化に合わせて、固形石鹸から、液体洗浄剤、入浴剤と商品の幅を広げてきました。主力商品のお中元・お歳暮用のギフト石鹸の需要が減少する中、お風呂場からお客様の「悩み」を解決するというコンセプトのもと、最近は「臭い」の悩みを解決する柿渋石鹸や、「肌トラブル」の悩みを解決する敏感肌用石鹸など、新商品開発に積極的に取り組んでいます。

写真:レモン石鹸

レモン石鹸

写真:臭いの悩みを解決する柿渋石鹸

臭いの悩みを解決する柿渋石鹸

今回は5代目社長の大野範子氏に、ご自身の社長就任までの取組、闘病生活を経て開発に至った敏感肌用石鹸の経緯、そして大病の克服法を経営にどのように実践しているかについてお話を伺いました。

新事業の立ち上げから事業承継まで

写真:大野社長

大野社長

大野社長は、他メーカーで初の女性営業職の経験を経た後、新事業立ち上げをミッションに株式会社マックスへ中途入社しました。入社後、新事業の柱としてOEM(相手先ブランド名での製造)に注力しましたが、これは単なる下請けによる販売量拡大でなく、戦略的にレベルの高い企業の商品を手掛けることで自社の設備・品質・技術向上を狙ったものでした。そして現在は、会社を支える事業の一つと位置づけられています。

また、幅広い視野からギフト石鹸事業やOEM事業を越える次の100年を支える新事業とは何か模索するため、夜間のビジネススクールにも学び、2009年4月に父親の後を引き継いで社長に就任しました。

社長就任後の闘病生活を経て、信念に沿った敏感肌用石鹸を開発

大野社長は、社長就任の5か月後、これからというタイミングで「がん」で入院しました。4回の転移、ステージ4の診断といった壮絶な経験を経て復活をとげました。

写真:敏感肌用石鹸「素あわシリーズ」

敏感肌用石鹸「素あわシリーズ」

それまでリラックスや気分転換の場であったお風呂は治療中の社長にとっては荒れた肌がヒリヒリする苦痛の場になりました。もともと体にやさしい無添加石鹸等を手掛けていたものの、肌が弱い人でも楽しいバスタイムを過ごせる石鹸を開発したいという思いを自らの闘病経験から強く持つようになりました。そして復帰後、肌を洗う時の摩擦を極力抑えるよう泡にこだわった医薬部外品の敏感肌用石鹸を開発しました。

社長によると、老舗メーカーの長寿の秘訣は経営理念、信頼性、品質など不変であるべきものは守り、商品、技術、サービスなど変えるべきものは変えるところにあります。「お風呂場でお客様の悩みを解決できる商品を提供したい」という自らの経験から生まれた経営者としての信念は、同社がそれまで受け継いできた経営理念の本質とも重なっています。今回開発した敏感肌用石鹸は、「加える」ことでより良くすることよりも、「問題を解決する」ことで普段の生活に戻ることに重点を置いており、社長の中で明確化された会社のあるべき姿に沿った商品となりました。信頼性・品質を守る取組としては、敏感肌用石鹸は、GMPという医薬品等の製造品質管理基準に沿った対策を行った工場で生産されていますが、同じラインで医薬部外品以外の石鹸も広く製造することにより、全ての石鹸が高い品質を確保しています。

大病の克服法を経営で実践する

大野社長は、闘病中、病気と正面から向き合い、絶対にあきらめなければ道は開けるという強い思いを持って、「医師による表面化した病の治療」と「野菜中心の食事療法による病を生み出さない体質作り」の2本柱により復活を果たしました。

それまで創業以来記録のある限り黒字経営が続いていた同社でしたが、社長復帰後、固形石鹸の需要減少の影響等により、初の赤字転落の見込みという危機に直面しました。ここで、強い思いを持って復帰した社長は、大病の克服法と経営危機の克服法に共通点を見出しました。経営においても、「可視化による支出の削減」と、「理念に沿った新事業・体制による成長に向けた体質作り」の2本柱からの取組が赤字回避の成果をあげ、V字回復を果たしました。現在は、先に紹介した敏感肌用石鹸のほかにも、自社農園や産地を明示した柿渋エキスの利用などトレーサビリティを確保した商品改革や、医療介護向け石鹸、海外展開、通販などの販路改革、口コミサイトでの話題化による販促改革等に取り組んでいます。

写真:大病の克服法を経営に応用

今後は、世界中の人々の肌トラブルの悩みを解決したい

不変であるべきものは守り、変えるべきものは変える、そして、厳しい環境変化に俊敏に対応し、常に新たな選択肢を創造する自己変革企業を目指した挑戦は続いていきます。今後は、肌トラブルに悩む世界中の人々を、石鹸のみならず、スキンケアにも分野を広げて解決していきたいという大野社長のこれからの益々の活躍を期待しています。

掲載企業情報

企業名
株式会社マックス
所在地
大阪府八尾市植松町2丁目9番29号
電話番号
072-994-5050

このページに関するお問い合わせ先

総務企画部中小企業政策調査課

電話:06-6966-6057

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