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最終更新日:平成29年8月1日
近畿地域の2府5県には、約2,300商店街が存在するとされており、厳しい経済情勢や大型店舗との厳しい競争にもかかわらず、商品力や地元のニーズに対応した取組により、再生・活性化を図っている商店街は数多く存在しています。
近畿経済産業局では、そのような厳しい状況の中でも、再生と活性化を図る取組で成果を上げている商店街を平成27年度より「近畿のイケテル商店街」として、41商店街をホームページでPRしています。
今回は、「インバウンド対応」と「空き店舗解消」をテーマに、商店街活性化に向けたノウハウを共有することにより、他の商店街における新たな動きの一助とすることを目的としたセミナーを開催しましたので、その内容について、ご紹介します。
「近畿のイケテル商店街」に選定された41商店街の中で、「インバウンド対応」と「空き店舗解消」の分野で成果を上げている商店街に事例発表を行ってもらうことにより、他の商店街の活性化に向けた新たな動きのヒントにしてもらうことを目的として、平成29年6月1日(木)に大阪市内で、「近畿のイケテル商店街セミナー」を開催しました(当日参加者120名)。
以下では、セミナーの概要について紹介します。
加藤先生による基調講演の様子
「外貨を稼ぎ、地元でお金を回す仕組み-地域内経済循環の視点から」と題して人口減少時代において、都市間・集積地間競争が激しくなっており、そのような状況で地域が生き残る解決策は、「交流人口(観光客、インバウンド)」を増やしていくことであり、「地域内経済循環(域外から獲得したマネー(外貨)が地域内で循環させること)」を意識的に促進している事例として、北海道富良野市におけるマルシェ事業を紹介していただきました。
北海道富良野市では、年間200万人前後の観光客が訪れる一方、商店街を中心とした中心市街地は衰退していました。そこで、2007年に「ふらのまちづくり株式会社」を設立し、2010年から「マルシェ事業(飲食店、農産物の販売、地元の特産品、菓子などを販売するまちなか「滞留拠点」)」を開始、2015年には第2弾として、「マルシェ2事業」を行いました。その結果、2017年3月末時点で両施設への入場者数が累計600万人を突破するとともに、建て替えや新規開業を誘発するなど、中心市街地が活気を取り戻しています。
その成功要因としては、地元の熱意ある事業者が中心となり、地域内経済循環を高める施策(1.マルシェ建設で地元事業者を優先、2.地元の事業者をテナントに入れる、3.地域内の取引を増やす努力を行う、4.ふらのまちづくり会社を中心に据える、(5)外部資金の活用)を行ったことが挙げられます。
このように、稼いだ外貨を地域で活かす仕組みができあがった中で、今後は、(1)まちづくり会社がどこまで、いつまで関与していくべきなのか、(2)観光客、インバウンドと共存しながら、地元住民をどのように巻き込んでいくのか等が課題であると述べられました。
山本理事長による事例発表の様子
黒門市場(大阪府大阪市中央区)は、約180の店舗からなる鮮魚を中心に野菜・果物・肉・漬物などを扱う市場です。
外国人観光客の誘致に向けて、まずは外国語表記の商店街マップ、ホームページ、小冊子の作成を行いました。続いて、フリーWi-Fi環境の整備や経済産業省の助成金を活用した無料休憩所「黒門インフォメーションセンター」を設置し、外貨両替機の設置・多言語対応スタッフの常駐・手荷物の一時預かりサービス・トイレの増設を行う等、外国人観光客の訪れやすい環境整備を行いました。
その結果、1日あたりの来街者約3万人の中で、約85%を外国人が占めています。
今後としては、増加する外国人観光客と地元顧客が共存できる商店街にすることを目指しています。
田中専務理事による事例発表の様子
亀岡商業協同組合(京都府亀岡市)は約135の店舗からなる亀岡市全域の中小商業者が加盟する協同組合です。
2020年に向けて訪日観光客の増加が見込まれる中で、亀岡にも観光資産(湯の花温泉、保津川下り、トロッコ列車等)があり、外国人観光客向けの新たな商機が期待される中で、まずはできることからということで、(1)免税手続カウンターの設置(2)メニューの多言語対応③フリーWi-Fi環境の整備(観光協会と協力し、市内の8ヶ所にフリースポットを設置)を行っています。
松本副理事長による事例発表の様子
具体的には、協同組合に所属しているのは中小商業者なので、なるべく組合員の負荷を少なくする取組(組合が免税手続きを一括して行う、商店主向けの多言語メニュー作成講座の開催等)を協同組合が実施しています。
今後としては、整備した仕組みを組合員に使いこなしてもらうことに加えて、外国人に対しても、日本人と同様に、おもてなしの心を持った接客を行うことにより、外国人観光客が訪れる商店街を目指しています。
泉理事長による事例発表の様子
セルバ名店会(兵庫県神戸市東灘区)は、1992年に建設された13階建ての民間再開発ビルの地下1階~2階の専門店の集まりです。
民間再開発ビル内における大型商業施設の撤退等で厳しい状況の中で、大型商業施設に頼らない取組として、神戸市の補助事業を活用して、地下1階部分について、(1)共同店舗「もり市場」の実施(2)多目的スペースの効果的な活用(3)不動産会社との連携により、10の空き区画のうち、9つが埋まるという成果が出ました。
北野理事による事例発表の様子
具体的には、(1)共同店舗「もり市場」の実施により、各店舗の売上・やる気の向上(2)多目的スペースは来客者の回遊率向上とわくわく感の演出(3)不動産会社にセルバの活性化に向けた計画を提示することで、不動産会社がテナント誘致に向けた積極的なPRの実施を行うことで、活気のあるスペースとなり、新規出店が増加しました。
今後としては、店主の高齢化が目立つ中で、店舗の新陳代謝を効率よく行い、継続的な活性化に向けた取組を行うことを目指しています。
日茂参事による事例発表の様子
ぶらくり丁商店街(和歌山県和歌山市)は、約50の店舗からなり、約170年以上の歴史を持つ和歌山市の中心的な商店街です。
域外における大型店の出店や、公共交通機関の不便さ等により、来街者の減少とそれに伴う空き店舗が増加する中で、まちづくり会社(株式会社紀州まちづくり舎)と連携して、空き店舗を活用したリノベーションやトライアル出店、賑わい作りを実施することにより、空き店舗率(2013年:約31%→2016年:約24%)が減少してきました。
吉川代表による事例発表の様子
具体的には、まちづくり会社がリノベーションスクール(遊休不動産を活かしたまちづくりを実践で学ぶ新規事業立案型の合宿プログラム)の開催、チャレンジショップ(2日間限定のトライアル出店)や賑わい作り(実証実験「ポポロハスマーケット」、アート展、ハロウィン、クリスマス等の実施)を行うことで、エリア価値の向上を図ることができ、新規出店へと繋がっています。
今後としては、引き続き、空き店舗のオーナーの協力を得ながら、エリア価値向上による商店街の活性化を目指しています。
トークセッションの様子
講演者と会場とのトークセッションが行われ、「商店街全体として、意思統一を図る方法」、「商店街以外の支援者を巻き込む方法」等数多くの質問が出ました。
総括コメントとして、座長の加藤先生から、「商店街活性化には、インバウンドの呼び込み、空き店舗の活用は重要であるが、そのためには、商店街全体が危機感を共有し、周りのサポーターを巻き込み、徹底的に議論するという地道な努力しかない」という発言がありました。
なお、経済産業省(中小企業庁)においては、既存のアプローチにとらわれず、地域の経済循環の中心となり得る商店街を生み出す新たな商店街政策の在り方を考える「新たな商店街政策の在り方検討会」を昨年12月に立ち上げ、本年6月に中間取りまとめを発表しました。
今後は、他省庁や自治体と連携した、商店街が真に必要とする施策を実施する必要があり、本中間取りまとめを踏まえ、今後どのような施策を取ることができるのか、フォローし、検証していくことを考えています。
商店街を取り巻く環境は「近隣地域への大型商業施設の進出」や「地域住民の少子高齢化」、「後継者の不在」等の要因により厳しい状況が続いています。
その中、当局では優れたリーダーやキーパーソンが中心となって、にぎわい作りなどの「商機能」、子育て支援などの「公共機能」、店舗誘致による新陳代謝などの「組織」の3つの強化に基づく取組を継続的に推進し、成果を挙げている商店街を「近畿のイケテル商店街」として選定し、その取組内容と成功要因を当局のホームページで公表しています(現在、41商店街を選定)。
近畿経済産業局 産業部 流通・サービス産業課
電話:06-6966-6025