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隠れたGNT(グローバルニッチトップ)企業 株式会社福井製作所
~LNG(液化天然ガス)運搬船向けタンク用安全弁で世界シェアNO.1~
担当課室:総務課

最終更新日:平成29年9月1日

創業80年の安全弁専業メーカー

枚方市にある株式会社福井製作所は1936年創業の安全弁の専業メーカーです。国内シェア6割、LNG(液化天然ガス) 運搬船に搭載される安全弁は世界シェアNo.1を誇る、知る人ぞ知るグローバルニッチトップ企業です。

各種エネルギー分野を支える安全弁

安全弁は主にガスを貯蔵するタンクや発電ボイラ設備、化学プラントの配管など圧力がかかる箇所に設置され、機器の爆発や破損を防ぐ役割を担っています。普段は内部のガスや液体等をしっかり密閉する役目を担いつつ、内部の圧力が上昇した場合には自動的に弁体が開き、蒸気やガスを排出し、圧力が所定の値に降下すれば、再び弁体が閉じる機能をもつバルブです。電気などの制御を受けることなく、安全弁そのものの力で圧力と流量を制御する最終安全装置と言えます。

同社の扱う各種安全弁1
同社の扱う各種安全弁2
同社の扱う各種安全弁3
同社の扱う各種安全弁

同社の安全弁は、発電所や採掘、液化設備、LNG運搬船、LNG受入基地の天然ガスサプライチェーンから、水素燃料電池、バイオマス、メタンハイドレートなどの新エネルギー分野まで世界80カ国以上のインフラを見えないところで支えています。船舶・海洋向けマーケットと、プラント等陸上向けマーケットがほぼ半々で、海外ユーザー向けの売上が全体の8割にのぼるなどグローバル展開を行っています。

LNG運搬船

LNG運搬船

国産ブランドによる安心の提供

80年前、現社長の祖父が安全弁の国産ブランドの確立を目指して大阪市で創業されました。安全弁は施設毎に仕様が異なり大量生産が難しいニッチな市場です。当時の安全弁はすべて外国製で、仕様変更への対応が十分ではないなど課題が多くあり、十分ビジネスチャンスがあるとの判断での新規参入でした。

同社の技術にかける思いは強く、当時、蒸気・水・エアー各種で作動可能な検査機器を導入し、万全な品質保証体制を整備したことにも表れています。安全を届けるという思いは現在にも受け継がれており、超臨界の高圧から微圧、600度の超高温から-162度の極低温まで対応できる検査設備や流量試験設備を設置し全数作動検査を行うことにより、安全性を追求しています。また、ユーザーによる立会検査も実施することで安心を提供しています。

安全弁専業メーカーへの転換

転機は2000年、2代目の福井勲社長時代です。それまでは、安全弁の製造販売と製品仕入れの商社機能との二本柱でしたが、厳しい時代を生き残るためのリーダーシップが問われる中で商社部門を廃止し、安全弁の製造に特化することで国内唯一の専業メーカーとなりました。

「商社部門の廃止で売上が半分になりましたが、一方で、専業メーカーになったことで社員のベクトルが合い始め、ものづくりでお客様のニーズに応え続けて来ました。そのことが、福井は最後までやり抜き通すとの評価となり、今につながっているのだと思います」と、2014年末に3代目として事業を承継した福井洋社長は言います。

この時、『安全弁を究め、安全弁に生きる』という経営理念を定め、現在に至るまで専業メーカーであることの強い意識と危機感を持って事業に取り組んできたことにより、現在では国内シェアが6割を超えるに至っています。

拡大する海外マーケットと新規ニーズへの対応

「国内でのシェア拡大には技術力のみならず実績が大きくものを言います。例えば現在、当社の売上の20%を占める発電部門も、当初は国内マーケットには食い込んでいませんでした」。国内でのシェア拡大は難しいと考えた同社は、70年代から海外へ進出しました。海外では、分野毎にマーケットへの意識を強く持ち、売るだけではなくアフターセールスまで考えた提案が求められました。場当たりではない仕事のしくみを作りあげることで、FUKUIブランドの構築を目指しました。海外で評判を呼び、2000年代初頭にはその評判が国内に逆輸入され、国内でも次第にシェアを拡大するようになってきました。

また、LNG(液化天然ガス)運搬船向け安全弁の需要は1992年に大阪ガスが運搬船を国産化していく流れに乗り拡大していきました。同分野の市場規模は、当時世界で50隻程度であったものが、現在では500隻に増大しており、そのうち同社の安全弁が搭載されている割合は95%程度を占めています。

このようにエネルギー需要の変化に常に対応して新たな安全弁の開発に取り組むことで同社は取り扱い分野を拡大してきました。

80年の歴史に培われた揺るぎない強み

同社の強みは何よりメイドインジャパンにこだわる技術力です。安全弁は対象となる流体や材質、温度等仕様により加工精度が異なり、手作業に頼る面が大きく、同社が安全弁に特化して磨いてきたものづくり技術の蓄積が、極低温や、高温高圧などあらゆる環境下での性能を保証するブランド力につながっています。また、設計から製造、検査までを国内1か所で対応することで、仕様変更にも柔軟かつ迅速に対応することができ、この高い納期対応力が同社への信頼につながり、グローバル展開を後押ししています。

安心、安全を守る熟練の技1
安心、安全を守る熟練の技2
安心、安全を守る熟練の技

同社は、世界17カ国にメンテナンス拠点を有し、アフターサービス体制も万全を期しています。以前は製品販売だけでしたが、現在は海外のパートナーを選定し、メンテナンス技術を教えることで、海外での緊急時の対応を可能にしています。「船舶は国際海事法により5年ごとに検査を受けなければならず、その際に安全弁もパッキンやダイアフラムなどの部品交換が必要になってきます。提携先が部品交換した安全弁は次の検査までの5年間も当社が保証しています。これがお客様、提携先、当社の三方よしにつながっています。」と福井社長。基本的にはパーツの販売は同社、アフターサービスは現地企業という役割分担で事業展開しており、アフターサービス分野向けの売上は同社の総売上高の20%にまで拡大しています。

同社は80年の歴史の中、絶え間ない努力で技術力を磨き、世界市場を見据えたサービス体制を作りあげ、次々と新たな市場を開拓するマーケティング力を備えることでFUKUIブランドを確立してきました。そして何よりもそのベースにある人材が同社の最大の強みと言えます。

FUKUIブランドを支える頼もしい仲間達

FUKUIブランドを支える頼もしい仲間達

エネルギーの変化にあわせ、未来を切り拓く株式会社福井製作所

福井洋社長

福井洋社長

船舶需要は世界的に少しずつ落ちてきていますが、一方で天然ガス向け需要はシェールガスのブームもあり、今後も拡大する可能性が高い分野です。また、新たに拡大してきた発電部門は世界的な人口増加の中、大きく需要拡大が見込めます。

福井社長は、企業理念をさらに発展させ、『エンドユーザーが何を考えているか直接聞こう、発信して応えていこう』という経営方針を掲げ、エネルギー市場の新たな技術動向をいち早く捉えて素早くマーケットインしていく活動を強化しています。

「安全弁は、エネルギーのあるところに必ず必要になります。当社はエネルギーの変化にあわせて、技術力で対応してきました。今後もモノづくりを通じて世界へ日本の存在感を高く示すことを使命とし、次代を見据え新市場に果敢に挑戦していきます。」

掲載企業概要

企業名
株式会社 福井製作所(英語名 FUKUI SEISAKUSHO CO., LTD.)
代表者
代表取締役社長 福井 洋
住所
〒573-1132大阪府枚方市招提田近1丁目6番地(本社、枚方工場)
電話番号
(072)857-4521

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 総務企画部 総務課

電話:06-6966-6001

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