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最終更新日:平成29年10月2日
関西のものづくり中小企業の海外進出先としてベトナムは、製造拠点としてだけでなく、ASEAN市場を見据えた今後の販売拠点としても、高い関心 を集めています。
近畿経済産業局では、平成24年に関西の自治体、政府系機関、経済団体等とともに、「関西・ベトナム経済交流会議」を立ち上げ、ベトナムとの経済交流を進めてきたほか、ベトナムの政府機関と協力関係を構築するなど、投資環境整備に努めてきました。
こうした中、本年6月にはベトナム商工省、9月にはドンナイ省と協力文書の署名更新を行うとともに、新たな取組としてドンナイ省とベトナムのものづくり拠点化を目指した人材育成事業に取り組むこととなりました。
具体的には、日系企業と現地企業の結節点となるコーディネータ人材の育成及び高等教育機関でのものづくり人材育成プログラムを実施します。
今回、当局におけるベトナム進出のための取組、特にドンナイ省と連携して取り組む人材育成事業を紹介します。
世耕経済産業大臣、ベトナムのアイン商工大臣の
立ち合いの下、署名を行う池森近畿経済産業局長
(当時)とオアン商工省アジア大洋州市場局長
【平成29年6月5日】
当局では、我が国の中小企業の進出先としてベトナムに対する関心が高まる中、平成24年11月にベトナム商工省との間で、関西とベトナムの経済発展を促進することを目的とする協力文書の署名更新を行いました(平成27年5月に更新)。
本年6月5日には、経済産業省で行われた第2回「日ベトナム産業・貿易・エネルギー協力委員会」に併せて、同委員会の共同議長である世耕経済産業大臣及びベトナムのアイン商工大臣立ち合いの下、協力文書の更新の署名を行いました。
本協力文書に基づき、今後3年間ベトナム裾野産業の育成など、5つの分野について、重点的に取り組むこととしています。
ベトナム商工省と締結した協力文書に基づく取組の一環として、ベトナム南部に位置するドンナイ省と平成25年4月に協力文書を締結しました(平成27年5月には内容を見直し後に更新)。その結果、平成25年10月からドンナイ省に進出する日系企業が現地で抱えるビジネス課題の解決を図るため、日本語での相談が可能なワンストップ相談窓口「関西デスク」が、ドンナイ省工業団地管理局内に設置され ました。また、平成26年11月には、同省に進出する日系企業からの投資ライセンス申請のガイドライン作成などの改善要望7項目 について、ドンナイ省と当局の間で協力推進会議を開催し、平成28年4月には、課題の改善状況を確認するためのフォローアップ会議を開催するなど、両地域が一丸となって、投資環境改善に努めてきました。
こうした中、今年9月8日には、ドンナイ省人民委員会チャン・バン・ビン副委員長を団長とする代表団の来阪に併せて、協力文書更新の署名を行いました。
署名文書の交換を行う森近畿経済産業局長と
ビン副委員長【平成29年9月8日】
署名式の後には、当局とドンナイ省の共催により、「ベトナム・ドンナイ省投資環境セミナー」を開催し、ドンナイ省の概況や現地人材育成の取組、進出日系企業からの事例紹介などを行い、約80名の出席を得ました。セミナー終了後もドンナイ省代表団との名刺交換が熱心に行われ、ドンナイ省を進出先候補として検討したいといった反応が得られ、日系企業の関心の高さ がうかがわれました。
(参考)ドンナイ省…ベトナム南部ホーチミン市(ホーチミン市内から省都ビエンホア市まで車で40分程度)に隣接し、人口284万人(2014年)。30以上もの工業団地が開発されており、日系企業の多く進出している。
このように、当局では、ベトナム中央政府及び地方政府との政府間の協力関係を構築しつつ、関西の企業のベトナム進出に向けた投資環境整備を図っているところです。
一方、現地では、進出後の販路及び人材確保に加え、日本と同等の品質水準を担保するためのサプライチェーンの構築が進出の課題となっています。
そこで、平成28年度に「TPP発効を見据えたベトナムのものづくり拠点化調査」を実施し、その実態を明らかにするとともに今後の支援方策をとりまとめました。
この結果に基づき、平成29年度より、現地で特に不足しているとされる業種(「めっき」、「精密加工」、「金型」、「熱処理」)を中心に、新たな進出案件の発掘に努めるとともに、進出に際して必要な人材の確保に向けた留学生等と中小企業との交流機会の場づくりや、取引や連携を図るための現地コーディネート機能の育成、日本型ものづくり人材の育成などに取り組んでいくこととしています。
ものづくり拠点として有望なベトナムにおいて、販路ニーズや進出の際に必要となる人材について現状を確認し、これを踏まえ、関西の中小企業がベトナムに進出する際の支援方策を検討する。
(1)文献調査、(2)日系企業アンケート、(3)関西の大学アンケート、(4)現地ヒアリング(日系企業、ベトナム企業、第三国企業、大学等)、(5)研究会・分科会の開催(全5回)
(1)現状と課題
(2)支援の方向性
(1)現状と課題
(2)支援の方向性
(1)現状と課題
(2)支援の方向性
ベトナム裾野産業の強化には、ポテンシャルの高い関西中小企業の進出促進と、現地ローカルの底上げが必要です 。これらの実現には、日本からの投資に見合う販路や分業体制を確保するためのネットワークの存在、あるいはローカル企業への技術指導のほか、技術提携など取引を通じた育成が不可欠です。
平成28年度の調査結果においても、ベトナムでは、日本商工会と工業団地以外の企業間ネットワークは僅かであり、ローカル企業との取引を望む声は高いものの、ローカル企業側の技術不足や受け身な姿勢による日系企業との連携欠如が課題となっています。また、現地団体等によるネットワーク形成に向けたコーディネート機能はほとんど見られません。
そこで、今年度からの新たな取組として、ベトナム企業、日本企業、地元大学等をつなぐネットワーク形成に向けたコーディネート機能の育成を、南部地域(ドンナイ省)をモデルに展開していくこととしています。
まずはドンナイ省が、省政府、大学、企業団体などから現地コーディネータ候補10名を選定し、これら候補者を10月2日~6日に日本へ招聘し、産学連携や産業支援コーディネートの現場において研修を実施します。また、11月には、ドンナイ省に日本の専門家を派遣して現地コーディネータ候補の日系企業のニーズ把握やニーズに基づくマッチング等の指導を行う予定です。
現地コーディネータ候補者:
ドンナイ省計画投資局(2名)、ドンナイ省商工局(2名)、ドンナイ省工業団地管理局(3名)、ラックホン大学(1名)、ドンナイ高度技術職業訓練短大(1名)、ドンナイ若手企業家協会(1名)
今後3年程度の予定で、現地コーディネータ候補の育成を行い、自立化と現地の日系企業やローカル企業などとのネットワーク形成を進める予定です。
現地進出日系企業では、生産現場における有能なワーカーや熟練技術者の人材確保が課題となっています。こうしたニーズに応えるため、公益財団法人太平洋人材交流センター(PREX)が実施主体となり、国際協力機構(JICA)の草の根事業として2014年度から3年間にわたり、現地の職業訓練短大・大学を対象に、3S(整理・整頓・清掃)・労働安全について学べるカリキュラムの開発に努めてきました。
本取組については現地でのニーズも高く、この成果を受け継ぐ形で、今年度は3Sコース、安全コースの向上及び他校への展開を視野に入れた活動を行っています。
9月5日~12日には、日本からの専門家派遣(大阪府立大学高専教授他)を実施しており、来年2月頃には、2回目の専門家派遣プログラムを実施する予定です。
ものづくり人材育成事業の活動イメージ
「4.現地コーディネータ人材の育成事業」及び「5.ものづくり人材育成事業」は、経済産業省委託事業平成29年度技術協力活用方・新興国市場開拓事業(制度・事業環境整備)【受託事業者:一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS)】により実施します。
当局では、関西企業と現地企業の連携を促進し、ベトナムの裾野産業の育成と、関西ものづくり企業のベトナム進出支援を通じて、同国のものづくり拠点化を目指します。
近畿経済産業局 通商部 国際事業課
電話:06-6966-6032