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最終更新日:平成29年10月2日
エネルギーはあらゆる国民生活、産業活動を支える基礎であり、我が国ではそのエネルギー源のほとんどを海外に依存しています。このような中、将来のエネルギー利用、エネルギー源の選択、エネルギー技術開発を担う次世代の子供達に対して、エネルギーを巡る現状やエネルギー問題に関する総合的な見方や考え方を育成する「エネルギー環境教育」は大変重要です。
現在、学校教育の場だけで無く、民間企業においても、教材の開発や体験学習など、工夫を凝らした取り組みが積極的に進められており、それらの取り組みを「シリーズ:エネルギー環境教育の取り組み」として、ご紹介いたします。
今号では、NPO法人プラス・アーツの取組について紹介します。
NPO法人プラス・アーツ(以下、プラス・アーツという)は、代表である永田氏が2006年に設立した団体で、その名の通り、社会の既にある分野(教育、まちづくり、防災、福祉、環境等)に、”アート”的な発想をプラスすることで、既成概念にとらわれない創造力で課題を解決し、再活性化させるイベントの企画・運営を行っています。
代表の永田氏は、大手ゼネコン時代に阪神大震災の復興に貢献出来ず悔しい思いをした経験から、ゼネコン退社後、まちづくりの企画・プロデュースを手がけるようになりました。その中で、震災イベントで出会った美術家 藤氏の「防災とアート」のコンセプトに共感したことをきっかけに、同法人を設立し、様々な企業とのコラボレーションによる「防災」、「環境」、「まちづくり」等の教育プログラムの開発に取り組んでいます。
大阪ガス(株)や東京ガス(株)は、子供向けに「火に親しみ、火を学ぶ」体験型学習プログラム等を通じた「火育」を、CSR(企業の社会的責任:Corporate Social Responsibility)における「エネルギー環境教育」の一つとして取り組んでいます。
プラス・アーツは、両社の事業に対して企画協力を行っており、火との関わりの理解を深めるためのショートストーリーの開発や火に親しむワークショップを開催するとともに、2011年からは、大阪ガスとのコラボレーションにより、災害時にも役立つサバイバルな技を身につけることができる「レッドベアサバイバルキャンプ」を展開しています。
このイベントは、火おこし体験、カマドでのご飯づくりから、救急救命やロープワーク講習まで、火に関する知識を学ぶだけでなく、もしもの時の備えを、頭と体に刻み込む避難生活体験が合わさったプログラムになっています。
また、キャンプでは、プラス・アーツがデザインした「火おこし」「ロープワーク」等のサバイバル技が描かれた缶バッチが用意され、子供達は缶バッチをより多くゲットするために、楽しみながら技の取得を積極的に挑戦していきます。
本イベントは、2011年から2016年の5年間で、累計47回開催、延べ約3,000人以上が参加するなど、その活動は年々広がっています。
火おこし体験
ロープワーク講習
オリジナル缶バッチ
紙芝居のショートストーリー
環境やエネルギー問題の解決など社会的課題には堅苦しい説明が多く、国民の生活に直結した身近な問題として捉えにくくなりがちです。
とりわけ、子供達に対して説明する際には、より馴染みのある話題や身近なものに置き換えて、イメージを膨らませながら理解させる配慮と工夫が重要となります。
このようなことから、プラス・アーツでは、様々なデザイナーやイラストレーターとの連携により、低学年の子供向けに、環境問題などをテーマとしたショートストーリーを紙芝居として紹介するプログラムを開発しています。
今後は、企業や自治体とのコラボレーションにより、環境やエネルギー問題を切り口とした新たな取り組みを進めていく予定です。
プラス・アーツは、環境、エネルギー教育以外にも、「防災訓練イベント」や「ゲーム・教材開発」など、創意工夫に富んだ「防災教育プロジェクト」を展開しています。
「イザ!カエルキャラバン!」は、プラス・アーツを立ち上げるきっかけとなったイベントで、阪神・淡路大震災の10周年記念事業として始まった防災訓練プロジェクトです。
本イベントは、子供達がいらなくなったおもちゃを持ってきたり、色々な防災体験に参加することによって「カエルポイント」を貯めて、そのポイントを別のおもちゃに交換することが出来る仕組みで、子供達は楽しみながら防災知識を身につけていくことが出来ます。
また、防災訓練プログラムは、阪神・淡路大震災や東日本大震災で被災された方々からの声を反映して、開発・改良された内容であるとともに、「対決!バケツリレー」や「毛布で担架タイムトライアル」などゲーム性を持たせているため、遊びながら学べる実践的なプログラムとなっています。
本イベントは、東京ガス(株)、東京地下鉄(株)、三井不動産(株)、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンなど様々な企業や団体と連携し、全国各地で開催され、2016年度までに累計384回、受講者数は延べ約15万人以上と大変高い実績を誇っています。
また、その取組は海外にも拡がり、インドネシアやモンゴル、ブータンなど、19ヶ国でそれぞれ独自の形で発展を遂げています。
イザ!カエルキャラバン!ロゴ
イベントの風景
イベントの風景
インドネシアでのイベント風景
「地震ITSUMO」は、地震の備えを“いつも”の生活の中で備えに取り組んでもらうための防災啓発プロジェクトです。本プロジェクトは、阪神・淡路大震災の被災者167人の体験をまとめた防災マニュアルである「地震イツモノート」を作成したことを契機に生まれ、その後の防災啓発の教材やグッズ開発にも広がっています。
多数の企業や自治体とのコラボレーションの実績があり、「無印良品((株)良品計画)」とは、展覧会や無印良品の店舗で防災啓発キャンペーンを展開、神戸市とは市役所の危機管理センター内に「SONAE to U(備えとう?)」を開設して、防災啓発展示による市民の地域防災意識向上の一翼を担っています。
地震イツモノート
無印良品とのコラボイベントの風景
SONAE to Uの風景
SONAE to Uの展示
効果的で持続的なエネルギー環境教育の実施には、子供が楽しんで積極的に取り組む創意工夫が重要なポイントとなります。
このため、既成概念にとらわれない新たな発想や新しい価値観、アイデアを企画提案するプラス・アーツのような創意工夫のコラボレーションは、エネルギー環境教育に取り組む企業や自治体の活動の幅を更に広げるだけでなく、「伝わる」教育によって、子供達自らが環境やエネルギーの大切さに気づかせる相乗効果が期待されており、今後益々そのニーズが高まっていくと考えられます。
近畿経済産業局 資源エネルギー環境部 資源エネルギー環境課
電話:06-6966-6041