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プラスチック業界におけるIoT導入の先進事例
池木プラスチック株式会社のIoT導入の実態とその効果
担当課室:製造産業課

最終更新日:平成29年11月1日

池木プラスチック株式会社

生産性向上や技術伝承のためには、中小企業においても、IoT導入など第四次産業革命の進展が喫緊の課題です。

実はこの分野で、近畿地域のプラスチック業界が、全国に先駆けてIoT化に取り組んでおり、当局はその取組を応援しています。

会員の多くが中小企業である西日本プラスチック製品工業協会が、ムラテック情報システム、成形機メーカー5社、近畿経済産業局等と連携し、成形機と接続することで効率的な成形条件管理とトレーサビリティー管理等が可能となる「ミドルウェア」を完成させました。今年度は、全日本プラスチック製品工業連合会を通じて「ミドルウェア」を無料配布し、プラスチック業界のIoT化を全国へ広める取組を行っています。

今回ご紹介する池木プラスチック株式会社は、西日本プラスチック製品工業協会の会員として、今年春から実際に「ミドルウェア」を運用し、実証データを蓄積しています。

実証開始から約半年経った同社を訪問し、池木啓仁社長から、その効果や今後の展望等について話を聞きました。

池木プラスチック株式会社について

製品例(LEDレンズ)

製品例(LEDレンズ)

同社は、1965年に奈良県香芝市で創業しました。最初は、プラスチックのミニチュア模型を作っていたそうです。その後、プラスチックの用途が多様化するなかで、同社も、工芸部品、電気部品・自動車関連部品等へと製品の幅を広げ、高い技術力と信頼性で、顧客の様々な要望に応えてきました。

現在は、売上の約半分を自動車と半導体分野で占めており、製品には高い安全性と品質が要求されることから、IoTの導入に熱心に取り組まれています。

生産管理システム「MICS7」の導入

今では業界に先行して工場のIoT化を進めている同社ですが、IoT導入前は、生産計画の工程表をホワイトボードに手書きし、それをスキャンして、メールで各部署に配信。生産管理部の担当者が本社工場を巡回して、工程の進捗状況を手書きして管理。遠く離れた香芝工場の進捗状況は、FAXや電話で確認する等、多くの部分を人手に頼っていたそうです。

また、万一、不良品が製造終了後に見つかった場合は、全検査員で、作業の合間や勤務時間外、場合によっては休日出勤をして、他に不良品がないかを再検査する等、時間もコストもかかる方法で生産管理、品質管理をしていました。


そこで、同社は、まず2016年3月に、生産計画の立案や成形機の稼働状況をリアルタイムに把握できる生産管理システム「MICS7※」を導入しました。本システムを使い、同社の2工場、合計20台の成形機に設置した端末機とPCをオンライン化することで、全ての生産状況をリアルタイムで一元管理することが可能になったそうです。

このデータは全て蓄積されているため、今後もっとデータが集まれば、この機械はどのような理由で停止することが多いのか等を分析し、事前に対応することで、機械の無駄な停止を減らすことができると思われます。同社は、その結果、稼働率の向上にも繋がると期待しています。

※MICS(Muratec Information Control System)7:
ムラテック情報システム株式会社が提供する、成形予定、成形機の稼働状況、生産実績情報などをトータルに管理する成形工場用生産管理システム。

成形機データ一元管理システム「ミドルウェア」の導入

「ミドルウェア」トップ画面

「ミドルウェア」トップ画面

同社は、続いて2017年春に、経済産業省のIoT推進事業で完成した成形機データ一元管理システム「ミドルウェア」を導入しました。同社の「ミドルウェア」導入は、西日本プラスチック製品工業協会の会員である同社が、日々の生産活動の中で実際に「ミドルウェア」を使用し、どのような効果が得られるかを検証するため、モデル事業として実施しているものです。

これまで日本では、プラスチック成形機メーカー毎にデータフォーマットが異なっており、複数のメーカーの成形機のデータを、一元的に管理することができませんでした。この「ミドルウェア」は、EUROMAP63という、欧米のプラスチック業界が推奨している、成形条件情報に関するグローバル基準を採用し、データフォーマットを統一することで、メーカーの垣根を越えてデータを収集することを可能にしたものです。

「ミドルウェア」は、成形条件の設定値と実績値(成型された時に実際に観測された値)を記録して、分析しやすい形(成形条件表示、実績推移グラフ 等)で表示することができます。

同社では、「ミドルウェア」を導入して以降、不良品が発生したときに、実績値を確認することによって、不良品の出た作業工程や時間帯を正確に突き止めることができ、再検査に要する時間を大幅に削減できるようになったと、その効果の大きさを実感しているそうです。

省力化の他にも、例えば、ある製品では、特定の実績値と不良品の発生に相関関係があることが分かったため、成形機の監視設定をする時には、その実績値を重視するといったノウハウを、社内で共有する動きも出てきたそうです。

今後の展望

工場内の様子

工場内の様子

同社では、良品製造時のデータの推移が安定しており、データが変化した時に不良品が発生しやすいと分かった製品については、今後、顧客の了解を得て、全数検査から、徐々に抜き取り検査に変え、全数の製造時のデータを添えて納品することで、顧客に品質を保証したいと考えているそうです。

さらに将来的には、蓄積したビッグデータを元にAIを用いた解析と監視を行い、不良発生時の対策を素早く行えるようにすることを目指しています。

池木社長は、「ミドルウェアを導入し、その利点を、お客様に説明することによって、当社の強固な品質保証体制を理解していただくとともに、新たな顧客に対しても、営業戦略として、他社との違い、差別化を大いにアピールできる」と熱く語られました。

最後に、社長が語られたのは、一元管理できるデータ項目を、さらに追加、共通化してほしいという願いです。例えば、「ミドルウェア」を使っても、A社の成形機はV-P切り替え圧力が、B社の成形機は冷却時間が取得できないなど、成形機メーカー毎に取得できないデータがあります。業界で標準を作り、これらのデータについても把握できるようになれば、よりいっそう効率化、品質向上が期待できます。

プラスチック業界のIoT化は始まったばかり。これからも挑戦は続きます。

掲載関連情報

企業名
池木プラスチック株式会社
所在地
奈良県磯城郡田原本町富本165番5
電話番号
0744-32-1022(代表)

関連施策へのリンク

部素材産業支援事業へのIoT導入支援

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 産業部 製造産業課

電話:06-6966-6022

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