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関西経済の現状と今後の見通し
~2018年、新春を迎えて~
担当課室:総務企画部 調査課

最終更新日:平成30年1月4日

関西経済の概況

関西地域(近畿経済産業局管内)は、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県の2府5県からなっています。全国におけるシェアをみると、総面積は8.3%(2016年10月1日現在)ですが、輸出通関額(2016年)が21.2%、百貨店・スーパー販売額(2016年)が19.5%、製造業事業所数(2014年)が19.5%、製造品出荷額(2014年)が16.3%、総人口(2017年1月1日現在)が16.9%、域内総生産(2014年度)が16.2%となっており、関西地域の経済規模は全国に対して2割弱を占めていると言えます。(図1)

また、主要国の名目GDP(図2)をみると、関西はトルコ(世界18位)に次ぐ経済規模となっています。

図1 全国における関西地域のシェア

図1 全国における関西地域のシェア

出所:全国都道府県市町村別面積調(国土地理院)、住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査(総務省)、
県民経済計算(内閣府)、工業統計調査(経済産業省)、商業動態統計調査(経済産業省)、(一社)全国軽自動車協会連合会、
(一社)日本自動車販売協会連合会、公共工事前払金保証統計(北海道建設業信用保証(株)、
東日本建設業保証(株)、西日本建設業保証(株))、貿易統計(財務省、大阪税関)

図2 主要国の名目GDP

図2 主要国の名目GDP

注)関西は2014年度、他は2014年の暦年計数。為替レートは世界の統計より(105.945円/ドル)



関西地域の域内総生産の産業別構成比をみると(図3)、農林水産業は0.4%、製造業は19.5%、サービス業(20.3%)を含む第3次産業は四分の三のシェアを占めます。

図3 関西地域内総生産(名目)の産業別構成比(%)

図3 関西地域内総生産(名目)の産業別構成比(%)

出所:内閣府「平成26年度県民経済計算」

製造業の出荷額構成比(図4)をみると、全国と比較して、化学、鉄鋼、電気機械のウェイトが高くなっています。なお、製造品出荷額は1985年以降概ね横ばいで推移しています。また、全国におけるシェアは、2006年まで低下した後やや上昇し、近年では概ね横ばい傾向となっています。(図5)

図4 関西と全国の製造品出荷額構成比

図4 関西と全国の製造品出荷額構成比

出所:経済産業省「平成26年工業統計調査」

図5 関西の製造品出荷額の推移(従業者4人以上の事業所)

図5 関西の製造品出荷額の推移(従業者4人以上の事業所)

出所:経済産業省「工業統計調査」

足下の関西経済の動向と今後の見通し

我が国経済は、2017年7-9月期のGDP成長率(2次速報)が物価変動の影響を除いた実質で7四半期連続のプラスとなりました。また、景気動向指数の一致指数は10月時点で2か月ぶりに上昇しており、基調判断は13か月連続で「改善を示している」としています。暫定的ですが、景気拡張期間は2017年10月までで59か月となっており、これは1965年11 月から1970 年7月までの「いざなぎ景気」を抜いて戦後2番目の長さです。

当局では毎月公表の「近畿経済の動向」の中で関西の景況判断をしています。1年間を振り返りますと、海外経済の回復や2016年11月のアメリカ大統領選以降の円安進行を背景に、輸出が増加し、生産は高水準で推移しています。また、雇用の改善が続くなかで、個人消費も緩やかに改善するとともに、外国人観光客増加に伴いインバウンド消費も好調であることから、基調判断は「緩やかに改善している」としています。

生産は、電子部品・デバイス工業、電気機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業を中心に横ばいながら高水準で推移。企業からは、生産ラインをフル稼働しても受注に追いつかないといった声が多く聞かれています。品目別にみると、アジア向けを中心としたスマートフォン用の電子部品や、電気自動車に用いられる蓄電池等が好調に推移しています。(図6)

図6 鉱工業指数

図6 鉱工業指数

出所:近畿経済産業局「近畿地域鉱工業生産動向」、経済産業省「鉱工業指数」

個人消費について、百貨店・スーパー販売額(図7)をみると、百貨店は円安株高を背景に高額品や免税品の売上が伸長しています。スーパーはコンビニやドラッグストアなど他業態との競合により客数が減少しているものの、畜産品や惣菜を中心に飲食料品が堅調に推移しています。乗用車新規登録・届出台数(図8)は、新型車効果や軽自動車の燃費不正問題による落ち込みからの復調もあって前年を上回る状況が続いていましたが、足下では、無資格検査問題の影響により減少しています。家電販売額(図9)は、高機能商品を中心に季節家電や白物家電が堅調に推移。個人消費は、総じてみれば緩やかに改善しています。

図7 百貨店・スーパー販売状況

図7 百貨店・スーパー販売状況

出所:近畿経済産業局「百貨店・スーパー販売状況」

図8 乗用車新規登録・届出台数

図8 乗用車新規登録・届出台数

出所:(一社)日本自動車販売協会連合会、(一社)全国軽自動車協会連合会

図9 家電販売額

図9 家電販売額

出所:GfK Japan

関西国際空港の国際線を利用する旅客数(図10)をみると、国際線LCC(格安航空会社)旅客便数の増加を背景に外国人旅客数は増勢が続いており、ホテルの稼働率も高水準で推移しました。また、円安効果もあって、2016年末からインバウンド消費が勢いを取り戻し、関西の百貨店免税売上(図11)は化粧品を中心に大きく伸長、2017年10月にピークを更新するなど、増勢が続いています。

図10 関西国際空港の国際線を利用する航空旅客数の推移

図10 関西国際空港の国際線を利用する航空旅客数の推移

出所:関西エアポート(株)報道発表資料

図11 百貨店免税売上(関西地域)

図11 百貨店免税売上(関西地域)

出所:日本銀行大阪支店

貿易(輸出)額(図12)は、海外経済の回復や円安進行を背景に、前年を大きく上回る状況が続いています。中国やアジア向けの伸びが全体の大半を占めており、液晶パネル等の科学光学機器や半導体等電子部品、半導体等製造装置が牽引しています。また、欧米向けも増加しており、遊戯用具のゲームソフトの増加が目立っています。

図12 輸出

図12 輸出

出所:大阪税関、財務省「貿易統計」

雇用情勢は、完全失業率(図13)が3%前後の低水準で推移し、雇用者数も増加するなど改善しています。また、有効求人倍率(図14)は1.51倍まで上昇、1974年以来の高水準となっており、企業からは人手不足の声が多く聞かれます。

図13 完全失業率

図13 完全失業率

出所:総務省「労働力調査」

図14 有効求人倍率

図14 有効求人倍率

出所:厚生労働省「一般職業紹介状況」

これから関西経済が持続的に回復していくためには、労働生産性の向上、積極的な設備投資、所得改善による消費の拡大が不可欠です。また、外国人観光客が増加する中で、一層のインバウンド観光需要を取り込み、関西経済の成長へつなげていくことが期待されているところです。

ただし、世界経済のリスクの高まりや、中国を始めとするアジア新興国等の景気の下振れが懸念されます。2016年の貿易統計から海外との結びつきをみると、全国ではアメリカ向けのシェアが高いのに対し、関西では中国向けシェアが高くなっています。関西は中国との結びつきが強いため、引き続き中国経済の動向について注視が必要です。(図15、16)

図15 関西の輸出額の国別構成比(2016年)

図15 関西の輸出額の国別構成比(2016年)

出所:大阪税関「近畿圏貿易概況」

図16 全国の輸出額の国別構成比(2016年)

図16 全国の輸出額の国別構成比(2016年)

出所:財務省「貿易統計」

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