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Made in JAPANの医療機器開発への挑戦
~関西医療機器産業支援ネットワークの活動について~
担当課室:バイオ・医療機器技術振興課

最終更新日:平成30年7月2日

病気やケガで病院に行くと、そこには胃カメラ、超音波画像診断装置(エコー)、MRIといった診断機器、放射線治療装置、血管ステント、人工関節といった治療機器など多くの医療機器が導入されております。これらの医療機器には、多くの輸入品が含まれていることに気づかされます。若手の人気俳優が主演する医療現場を題材にしたドラマにも輸入品のロボット手術機器が登場しておりました。

医療機器のグローバル市場は近年7~8%程度拡大し続けている成長分野の一つです。我が国の医療機器産業もこの流れに乗った機器開発が求められており、関西地域のものづくり企業においてもこれに挑戦する機運が高まりつつあります。

日本発の優れた医薬品・医療機器等の開発・事業化の推進

政府は昨年6月に「未来投資戦略2017」をとりまとめ、近年急激に起きているIoT、ビッグデータ、人工知能(AI)等を活用した第4次産業革命の技術革新を、あらゆる産業や社会生活に取り入れることにより、様々な社会課題を解決する「Society 5.0」の実現を掲げ、中でも重点的に取り組む戦略分野の一つである「健康寿命の延伸」においては、「日本発の優れた医薬品・医療機器等の開発・事業化」を目指すことが盛り込まれております。

高齢化の進展や新興国の需要拡大を受けて、医療機器の世界市場は拡大傾向にありますが、日系企業の世界シェアをみますと、診療機器の分野では一定の国際競争力を確保する一方で、治療機器の分野ではまだまだ国際競争力が弱い状況であり、我が国のものづくり技術を結集した医療機器開発の加速化と海外販路拡大への早急な対応が求められております。

世界における医療機器市場の動向

世界における医療機器市場の動向

ものづくり企業の医療機器開発への参入支援

医療機器の開発は、1)通常の工業製品開発と異なり、医療現場におけるニーズの把握が難しい、2)具体的な販売を見据えた事業化・知財・ファイナンス等の戦略が難しい、3)医薬品医療機器等法に基づく手続きを見据えた開発計画・臨床試験計画の策定、臨床試験を行う医療現場の確保、薬事申請書の作成等について専門性が高く対応が難しいなど、各企業が自社だけで乗り越えることが難しい課題が多く、専門機関による継続的な支援が求められている分野です。

平成27年4月、医療分野の研究開発及びその環境整備の実施・助成について中核的な役割を担う機関として「国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)」が発足し、これまで文部科学省、厚生労働省、経済産業省がそれぞれ実施してきた医療分野の研究開発について、基礎から実用化まで切れ目のない支援を行う体制が構築されました。同時に、AMEDを事務局とする「医療機器開発支援ネットワーク(MEDIC)」を立ち上げ、各地域の支援機関との連携による相談対応やマッチング支援などを実施しています。

近畿経済産業局においても、管内に多くのものづくり企業が集積しており、成長が期待される医療分野への事業参入への期待も高まっていることから、より市場性のある出口戦略を見据えた支援に注力すべく、平成27年度より「マーケットイン型医療機器開発支援事業」を実施しています。本事業では、約20名の専門コーディネータが医療機器企業から開発ニーズを発掘し、そのニーズに基づき、管内のものづくり企業とのマッチング支援、商談会の開催などを行っています。

ものづくり企業の医療機器開発への参入支援

オール関西での医療機器開発支援機関の連携強化:関西医療機器産業支援ネットワーク

現在、多くの支援機関が展示会や商談会といった対外的なプロモーションに取り組んでいますが、特に海外向けプロモーションは関西地域が連携して事業を行うことで、より一層効果の増大が期待されます。

また、これから新たに医療機器開発支援に取り組もうとする機関や支援内容を拡充したい機関では、専門人材や支援ノウハウが不足するケースがあります。その場合も、他の機関と連携することで、地域の企業に対してより効果的な支援提供が可能となります。

こうした背景から、近畿経済産業局では平成29年度より、各支援機関との連携をより一層促進するため、「関西医療機器産業支援ネットワーク」の活動をスタートしました。

本ネットワークは、各地域の取り組みをベースにしつつ、他機関との連携や「関西」として面的に取り組むことでより効果増大が期待できる事業について、共同での実施を検討するためのヨコの繋がりを重視する連携体です。


平成30年度は、昨年実施した海外共同出展のみならず、コーディネータによる相談及び製品化支援事業においても共同での活動を実施することで、関西地域の支援機関の連携を一層強化し、ひいては関西医療機器産業全体の活性化を目指します。活動内容については、以下のとおりです。

コーディネータ連携事業

各支援機関に入った相談案件において、当該機関で対応が困難な事例等を、参画する他の機関のコーディネータと連携して対応する体制を構築します。これにより、関西全体における医療機器開発支援環境の充実や地域コーディネータの交流促進等を目指します。

【連携支援機関】15機関

福井しあわせ健康産業協議会、滋賀県産業支援プラザ、京都産業21、京都高度技術研究所、京都リサーチパーク、大阪商工会議所、大阪バイオ・ヘッドクオーター、堺市産業振興センター、八尾市立中小企業サポートセンター、大阪産業技術研究所、東大阪市産業創造勤労者支援機構、新産業創造研究機構、神戸医療産業都市推進機構、奈良県地域産業振興センター、わかやま産業振興財団(順不同)

オープンマッチング(逆見本市型商談会)

医療機器メーカーの医療機器開発ニーズに対し、各地域機関が知り得た技術シーズを持つものづくり企業が開発した医療機器の試作品・製品及び強みを持つ部素材を売り込めるオープンマッチング(逆見本市型商談会)を実施します。

本事業の実施の際には、マッチングの成功確率の向上を目指し、全国の支援機関へも医療機器開発ニーズを提供する予定です。

海外共同出展

昨年の展示会場の様子

昨年の展示会場の様子

昨年度、9月にタイ・バンコクで開催された「Medical Fair Thailand 2017」にて、関西地域の企業20社による初めての海外共同出展を行いました。会期中には、タイをはじめASEAN諸国の医療機器ディーラー等との間で合計909件の商談が行われ、今後アジア地域に販路を開拓していくにあたって、大きな期待が持てる結果となりました。昨年参加された企業からは、期待以上の成果がみられたなど評価が高く、本年度は8月29日~31日に開催される「Medical Fair Asia 2018(Singapore)」へ昨年と同様に各支援機関から推薦された企業による関西一丸となったブースを出展いたします。タイより規模の大きな展示会であることから、昨年以上の商談件数を目指します。

デジタルヘルス関連動向に関するセミナー

AIやIoTをはじめとしたデジタル技術の進展に伴い、医療を取り巻く環境が激変しており、規制の動向や、新たなアプローチによる製品・技術開発動向に関するセミナーを開催いたします。これにより、多様な企業の医療機器開発への参入を促し、新製品・サービスの創出を図るとともに、デジタルヘルス分野への各支援機関における支援体制のあり方を探ります。

本年度の関西医療機器産業支援ネットワークの活動を通じて、「関西」から「Made in JAPANの医療機器」が一つでも多く、世の中に提供されることを支援して参ります。

掲載関連情報

関西医療機器産業支援ネットワーク事業

AMED医療機器開発支援ネットワーク:MEDIC

Medical Fair Asia 2018

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 地域経済部 バイオ・医療機器技術振興課

電話:06-6966-6163

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