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夢の新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」実用化への挑戦
全国規模!ナショナル・プラットフォームを構築しました
担当課室:製造産業課

最終更新日:平成30年11月1日

今年6月、次世代高機能素材として注目されているセルロースナノファイバー(CNF)を活用したランニングシューズが世界で初めて商品化、世界規模で発売されました。このように、CNFの優れた特性を活かした製品の開発が加速しています。

近畿経済産業局は、(地独)京都市産業技術研究所と共同で、平成26年12月から「部素材―CNF研究会」を運営し、関西の不織布、プラスチック及びゴム産業の関連企業を中心にCNFの実用化に取り組んできました。平成29年12月からは、「新素材―CNFナショナル・プラットフォーム」事業として、対象範囲を全国・全産業分野に拡大しています。本稿では、当局の取組内容と成果、および今後の展望についてご紹介します。

セルロースナノファイバー(CNF)とは

CNFは、木材等の植物を原料とするナノサイズ(1nmは1mmの100万分の1)の極細繊維で、以下のような多様な特性があります。

  • 鉄鋼の1/5の軽さで、鉄鋼の5倍以上の強度
  • ガラスの1/50の低線熱膨張性
  • 比表面積が大きく、においの除去に適する
  • 植物由来であるため環境負荷が少なく持続可能な資源    等

CNFの特性を活かして、既に、ランニングシューズ、水性ゲルインクボールペン、大人用紙おむつ等が商品化されていますが、さらに、自動車部品、家電製品、住宅建材、内装材、食品、医薬品、特殊紙、フィルター等、多岐にわたる分野での応用が期待され、技術開発が進められています。

セルロースナノファイバー(CNF)とは

部素材産業-CNF研究会

当局および(地独)京都市産業技術研究所が共同事務局を務める「部素材―CNF研究会」には、関西の不織布、プラスチック及びゴム産業の関連企業やCNF原料メーカーを中心に、現在100社を超える企業が参加しています。研究会では、CNFの実用化に向けて以下の支援を行っています。

個別企業に対する支援

プラスチック、不織布、ゴムの各分野の専門家や販路開拓の専門家による、原材料メーカーやユーザー企業とのマッチング支援や、専門的なアドバイス、支援施策の紹介等。(企業マッチング実績:36件)

ネットワーク構築、情報提供

  1. CNF関連セミナーの開催や展示会出展を通したマッチング機会の提供。
  2. 橋渡し機関として重要な役割を担う公設試験研究機関の研究者向け勉強会。
  3. CNFの活用を望む企業等向けに最新の情報を提供する「セルロースナノファイバー関連サンプル提供企業一覧」の作成、公表。
展示会の様子

展示会の様子

公設試勉強会の様子

公設試勉強会の様子

新素材―CNFナショナル・プラットフォーム(NPF)事業

平成29年12月には、グローバル・ネットワーク協議会や各地域の地域CNF支援組織等との連携・協力のもと「新素材―CNFナショナル・プラットフォーム(NPF)」を構築しました。平成30年度からは、本プラットフォームを基盤に、多様な産業への応用が期待できるCNFの活用を促進するNPF事業を本格実施しています。

NPF事業イメージ

NPF事業イメージ

常設の専用相談窓口の設置

CNF実用化に関心のある企業や研究者の方はお気軽にお問い合わせください!

オープンイノベーション「ナノセルロース塾」(平成30年6月~)

異分野技術の融合によるCNFの新たな活用や、将来の共同研究開発等のシーズ開拓、マーケット開拓のヒントを得る場。全国から100名以上が参加。

全国各地のCNF支援組織コーディネーター等の連携会議

ナノセルロース塾の様子

ナノセルロース塾の様子

主な支援事例

部素材―CNF研究会による継続的な支援により、CNFを活用した新事業の展開に成功した企業の事例を紹介します。

(株) 吉川国工業所(本社:奈良県葛城市)(吉の上の部分は下が長い吉です)

プラスチック日用雑貨を企画・製造しグローバルに販売している同社は、CNFとポリプロピレンを独自技術で複合化し、世界で初めてCNFを使用したプラスチック製品の開発に成功しました。製品開発に当たっては、研究会の専門家が、CNF原料メーカーとのマッチング、技術指導等を含めた総合的な支援を行いました。

同社のCNFコンセプト品

同社のCNFコンセプト品
a:くつホルダー b:ミニバスケット c:ペンスタンド d:収納ボックス

CNF新商品は、従来品に比べ軽量で寸法安定性が良いため、軽くて使いやすい。商品の形がキレイ。ベース材料(ポリプロピレン)の3倍の剛性があるため、簡単に壊れない、耐荷重がある等の特徴がある。

さらに同社は、平成30年度サポイン事業に採択され、世界初CNFによる高強度・超軽量・再生産可能なプラスチック複合新材料の開発に取り組んでいます。

利昌工業(株)(本社:大阪府大阪市)

繊維強化プラスチックに関する優れた技術を持つ同社は、研究会の専門家と出会って、CNFを活用して自動車の軽量化を目指す環境省の「ナノ・セルロース・ビークル・プロジェクト」に参画しました。さらに、この縁から国内トップシェアの総合工具メーカーである京都機械工具(株)と出会い、2020年の商品化を目指して、同社、京都機械工具(株)、京都市産業技術研究所の3者で、CNFを作業工具の機能開発に応用する共同研究を実施中です。さらに同社は、CNF100%材やそれらを組み合わせた軽くて強い材料を開発し、新商品の市場投入を積極的に推進しています。

今後の展開

幅広い分野での実用化に向けた取組により、新たな製品が生まれてくる可能性が高まってきています。今後は生産コストの更なる削減に向けた取組や個々の部材における特性の最適化などの課題を克服し、用途開拓をいっそう進めていくとともに、地域の垣根を超えて、全国の経済産業局や自治体、CNF研究機関と連携を図りながら、各者が有する各種施策やネットワークを活用し、活動を進めてまいります。各組織の枠組みを超えたオープンイノベーションにより、新たな共同研究や成果事例に繋がることを期待します。

企業・研究機関の皆様、CNFの実用化に向けた取組にご関心がありましたら、一度ご連絡ください。

掲載関連情報

団体名:地方独立行政法人 京都市産業技術研究所

会社名:株式会社 吉川国工業所(吉の上の部分は下が長い吉です)

会社名:利昌工業株式会社

関連施策へのリンク

部素材産業-CNF(セルロースナノファイバー)実用化への取組み

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 産業部 製造産業課

電話:06-6966-6022

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