トップページ > 広報誌・E!KANSAI > 10・11月号 企業・地域の取組紹介

訪問企業のご紹介「株式会社ウィファブリック」
今、大注目のベンチャー企業の代表取締役、福屋氏にインタビューしました!
担当課室:広報・情報システム室

最終更新日:平成30年11月1日

最近、よく話題になっている「食品ロス」や「アパレル廃棄」の問題。毎年世界中で廃棄処分されている繊維製品の数は年間228億着です。

どうすればそのような無駄を少しでも減らせるのか―。その問題に取り組み、事業として成功させている大阪のベンチャー企業、株式会社ウィファブリックをご紹介します。

事業内容

株式会社ウィファブリックの設立は2015年3月9日。大手の繊維商社で約10年間勤務した経験を持つ福屋剛代表取締役が立ち上げた会社です。

企業が抱える在庫を企業間で手軽に売買できるBtoBフリマサイト「SMASELL(スマセル)」の運営をメインの事業とし、その他に、自社ブランド「RDF(リデザインファクトリー」の名前で、廃棄されるしかなかった生地や糸を素材にデザインで再生させ商品にし、主にインターネットで、また卸を通じて店舗で販売する事業、そして他の服飾品メーカーのブランディング事業などを行っています。

また、経済産業省の「平成29年度中堅・中小企業等イノベーション創出支援プログラム(飛躍 Next Enterprise)」の参加企業として、平成30年2月にシリコンバレーに派遣されました。

起業した動機

福屋社長は学生の頃からアパレル産業に関心が高く、アメリカでの留学時代にアシスタントバイヤーとして経験を積み、大学を卒業後入社した商社時代には、企画から生産・販売までを一貫して行う業務に携わり、精力的にアパレル業界で活躍していました。しかし、見込み生産や返品などで廃棄しなければならない商品も多く、自分で作り上げたものが、廃棄されていってしまうしかないという、流行に敏感でなくてはならない繊維業界ならではの負の部分に疑問を持ち、その状況をなんとかしたいという思いから起業に至りました。

福屋社長

―(当局)生地は食品と違ってすぐに腐らないのに、なぜ在庫として残っていくのでしょうか。

(福屋さん)繊維商品は「腐らない生もの」とよく言われていて、物自体は腐りませんが、トレンドがあるので今年流行ったものが来年になると売れにくくなるとか、流行に少し外れた商品を作ると今年でも売れないとか、そういう傾向があります。マーケットにフィットしないと商品価値がなくなりますね。

―大量に余るという宿命を業界としてなんとか減らすことはできないのでしょうか。

昔から分業制で出来上がってきた業界なので、1社で製造から販売までのすべての工程を請け負うことができないところに原因があります。

糸や生地、最終製品をそれぞれで製作するメーカーがあり、更に、問屋や商社、その先にある小売店や、バイヤーがあり、ものすごい数の流通サプライヤーが複雑にからみあっています。そして、小売店は機会損失を生み出さないため常に在庫を持たないといけない、問屋は小売店のために見込みで在庫を積まないといけない、一方でメーカーは機械を回し続けないといけない、それぞれに事情があり在庫がダブつく構造になってしまっています。

それを完全になくそうと思うと、見込み生産を完全にやめて受注生産に切り替えるしかない。

―でも、オーダーメイド方式はコストがかかりますよね。

ものすごくかかります。1点あたりのコストがどんどん上がるのでその分しわ寄せが消費者に及びます。

それで僕らが今やろうしているのは、中国やアセアンに大量に残った「残反」と言われる生地を使うことによって、小ロットで低単価のしかも環境に優しいモノづくりをしよう、という取り組みです。今までこの業界では大量にものを作ってコストを下げる、コストを下げるには大量にものを作らないといけないという固定観念がありました。しかし、人や他社が残したものでも有効活用することにより元々の原価をものすごく下げることができ、ハイクオリティでロープライス、尚且つ新たに作らない分、石油を使わない環境に優しい物が、しかも小ロットで製作できる、残している側にもそれを使う側にもプラスになる。そういうモノづくりがこれからのモノづくりになるのでは、と思います。たとえば、1点買ったらCO2がこれだけ削減できますと記載した商品用の下げ札を、僕らが(企業に)支給するといった、アパレル企業自身のCSR(企業の社会的責任)につながるようなモノづくりを僕らから推奨していくようなこともやっています。

―今、アパレル廃棄が問題になっています。

あれもブランド側の「自分のブランドをディスカウントして販売されるくらいなら捨ててしまえ」という考え方です。そういうことが古き悪しき文化だということを僕たちはこれからどんどん発信していかなければいけない。これからの若い世代にもファッション業界や繊維業界にも、もっとそういう動きというか思想を持つ人が出てくれば少しずつ変わってくるのかなと思います。

―ネット上の取引ということで、在庫を安易にどこにでも流通させられるのでは、と心配する企業は出てこないのでしょうか。

僕らの「SMASELL(スマセル)」というオンラインのマッチングサイトには販路をコントロールできる機能があります。

登録した出品者が売りたい販路にのみ、その商品が開示されるような仕組みになっていて、希望しない販売先があれば、そのバイヤーには表示されません。たとえば海外にしか売りたくない場合、海外のバイヤーにしか表示されない仕組みにできます。販路コントロールしてブランドを守ることによって適正な場所に流通させていく、ということが可能です。

スマセルは登録した事業者さんしか見られないサイトです。完全会員制になっていて個人事業主も入れますが、一般消費者は入れません。

※「SMASELL(スマセル)」について

スマセルは、在庫を処分したい出品者と特価商品を必要としているバイヤーをオンライン上でグローバルにマッチングさせるBtoBのサイト。

出品者は販売条件を付けられるので、その条件にあったバイヤーにのみ販売することができる。

扱う商品はカテゴリ別に分けられており、スマートフォンひとつあれば世界中24時間どこにいても商品を手軽に仕入れることが可能。サンプル取り寄せの機能もあり、発注数や価格などの条件交渉もできる。

現在ユーザー数2000社程度、出品者サイドは700社程度。出品者サイド・バイヤーサイドともに国内トップクラスの企業が登録されていて、業界内でも非常に注目されているプラットフォームになっている。

海外とのマッチングも増えており、海外と取引する際の出品者の負担を軽減するため、大手運輸会社と提携して、商品の集荷から、パッキングリストや、インボイスの作成、現地の倉庫への配達まで、一貫して出品者の代行をする。スマセルでマッチングしたあとは、何もしなくても倉庫から物がなくなるという仕組み。

―過去にこういった事業にトライしたところはなかったのでしょうか。

実は某大手商社が15年くらい前にトライされていましたが、すぐ失敗して撤退しています。

―ではウィファブリックがここまで成功した要因は何でしょうか。

タイミングというものも結構あるのかと。たとえばメルカリみたいなサービスがここにきてあれだけ一気に上場するまでに成長したのは、元々ヤフオクというサービスがあったからだと思います。要はスマホが台頭してきたときに、スマホに特化したユーザビリティとか使いやすさを徹底して追及してきた。たとえば15年前はそこまでITが発達していない、スマホもなかった時代なのでなかなか成功しなかったかもしれませんが、今であればそういったサービスこそ成功しやすい。BtoBのフリマサイトとか、BtoB版のメルカリです、と紹介すればすっとユーザーさんも納得してくれる。ああ、あれね、みたいな。

―下地ができていたということでしょうか。

そうですね。もし15年前に僕がそれを言っても、え?メルカリ?え?フリマって?みたいな感じになっていたと思うんですよね。そういうプラットフォームの概念がなんとなく理解できるかできないかというのは非常に重要だと思います。

―事業の真似をするところが出てくる心配はありませんか。何か知財関係の対策はされているのでしょうか。

一応ビジネスモデルの特許は出願しています。サイトの画面でも特許出願中と表示しています。こういうかたちでビジネスモデル自体を守っていますし、もう2000社くらいの大手の企業が登録していますので、先行者利益というのもあります。

あとはこういう業界の中にいる人でないと、商慣習などは、なかなかわかりにくいと思うので、ぱっと出てきたIT企業などが真似しようとしても難しいのではと感じます。

―会社に在籍したままで、新しい取り組みをするのは難しいのでしょうか。

100%無理かと言われれば無理ではないです。ただやっぱり、色んな不可抗力はかかります。大企業であればあるほど。社内のプロフィット部門にある社員たちは、自分たちが金を稼いでいるという自負があります。それをそんな新規事業に費やされるのはやはり面白くはない。既得権益みたいなものが(大企業であれば)社内で働いたりします。そして「(そんな危険な橋を渡らずに)本業に徹しよう」と言って、新しいイノベーションを生み出そうとする者にとっての足枷になってしまう。そういう部分では(会社を)出たほうがやりやすい。

それに、そもそもどちらに投資するのかという考え方で言うと、人の会社よりも自分の会社に投資する方が2000倍面白い。それは全然違います。

―大きな会社を飛び出すのは、なかなか勇気がいると思うのですが。

でも…会社を辞めても死にはしないでしょ?もし辞めたら餓死してしまうのでは、と大げさに考えてしまうこともあるかもしれないけど、そんなことって周りで聞いたことない。「起業してあの人死んだらしいで」なんて(笑)。日本のような裕福な国では、アルバイトでもなんでも食いつないでいくことはできるので、そこまでのリスクはないんですよね。でも何かチャレンジできないような空気感というか閉塞感が強い社会になってしまっているのが、今の日本の現状なのかなって思います。

シリコンバレーに先日行った時は、みんなエネルギッシュで、失敗すること前提で起業している人なんかいない。別に1回失敗しても、もう1回会社立ち上げたらいいや、みたいな感じで、1年おきに新しい会社を立ち上げているような人が学生も含め多くいたりする。そういう文化は日本ではまだ根付いていないのかなって思いますね。

―ベンチャーは立ち上げた代表者の考え方に賛同して人やお金が集まってきます。逆にその人がこけたら周りが一気に離れてしまうこともあるのでは。

成功すると思ってやっているので、基本的にこけた時のことなんて全く考えていないです。絶対成功させる、という気持ちにコミットしてくれる人しか僕らも採用しないし、100%成功することを前提にやっています。

諦めたときが失敗したときだと思っているので。「諦めない」というマインドセットを自分のなかで持ち続けるといったことの方が重要だと思います。

―始めたばかりの会社では事業内容や方向性が変わってしまうことがあるかと思います。御社でも当初のブランド展開から、今はスマセルの方にシフトしていますが、そういう方向転換は一緒にやってきた人たちと話し合って決めていくのでしょうか。

そうですね。僕らはそもそも繊維ファッション業界の課題を解決する会社として立ち上げているので、ここをこうテコ入れしたらもっと成長できるんじゃないかといった議論は常に行っています。このスマセルでも週単位でシステムとか改善するなど、ある意味スマセルの中でも小さないわゆる事業ピボットが繰り返されていて、そうした積み重ねの中で事業ってものは成長していくと思うので。

―積極的に成長を見据えていくなかで、支援も増えてきていますか。

今、日本もオープンイノベーションの動きが盛り上がってきているじゃないですか。

ベンチャーを取り入れることでしかイノベーションは起こらない、と考える大企業も増えてきて、僕らも一緒に事業をしていく中でサポートをもらえたり非常に助かっています。自分たちだけでは絶対できないので。

―行政からの支援はどうですか。また行政への要望はありますか。

大阪市のOIH(OSAKA INNOVATION HUB)のシードアクセラレーションプログラムに採択されて、それがなかったらここまでの成長はなかったかもしれないし、やはり行政ならではの信用力や、民間企業をコネクトさせる力があるんじゃないかと思います。民間企業同士だと利害関係が生まれたりしますが、行政はニュートラルですし。そういう意味では僕らも行政に選定してもらえたり、助けられているところは多く、非常に感謝しています。

どこかの繊維商社のお墨付きっていうのと、〇〇省のお墨付きっていうのでは全然インパクトが違う。ですから第三者的な立場で意見をいただいたり代弁してくれたりするとありがたいと思います。

要望、と言いますか、今でもすごく前向きな活動を行政はしているなと思っているので別に不満はないし、むしろもっと一緒に何かに取り組みたいなという気持ちはあります。お互いの思いが合致する部分で、何ができるかをディスカッションできる場などはもっとあってもいいかな。

―人材確保についてはどうですか。

募集をかけたら結構応募はあります。ただ営業職は多いですが、やはりエンジニアなどは関西では少ないですね。 (東京の)一極集中状態です。

―海外にも積極的に展開されるのでしょうか。

海外は特にアジア圏を中心に拡大しようと思っています。

現地にある在庫を現地のバイヤーにダイレクトに届けることが輸送コストもかからず一番合理的です。離れた場所に送れば送るほど原価率が上がっていくし、燃料資源の無駄にもなります。インターネットの強みを活かし、グローバルかつ合理的なマッチングにより、適切な場所に適切な商品を届ける、そういったプラットフォームを実現していきたいと考えています。

―このような仕組みは繊維業界だけでなく、他の業界でも使えそうですね。

在庫の問題はどの業界でも抱えており、たとえば異業種の大企業の方でも、僕らのビジョンに共感してくれて、こういうプラットフォームを使いたいということであれば、ぜひ使っていただきたいと思っています。

―ありがとうございました。

掲載関連情報

企業名
株式会社ウィファブリック
所在地
大阪市西区京町堀1丁目14-24 タツト靭公園ビル7F
電話番号
06-6459-7420

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 総務企画部 広報・情報システム室

電話:06-6966-6009

他の記事を読む