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最終更新日:平成31年1月7日
化石資源に乏しい日本は、積極的に省エネルギーに取り組みエネルギー効率の向上に努めてきました。その結果、世界でもトップクラスの省エネを達成してきました。
しかしながら、2030年に向けたエネルギーのあり方を考えると、今後さらに省エネを進めて行く必要があるため、昨年6月に「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(以下、「省エネ法」)が改正され、昨年12月1日に施行されました。
今回の省エネ法改正のポイントをご紹介します。
1979年に制定された省エネ法は、エネルギーを使用する全事業者に対し省エネの取組を促すことを目的に制定され、時代の変化に応じて、省エネ取組の対象を拡大してきました。
省エネ法では、国が省エネの取組を行う際の基本方針や規範(判断基準)を示し、事業者の省エネ取組を促すとともに、一定規模以上のエネルギーを使用する事業者には省エネ取組に関する報告義務を課しています。
国は省エネ法と並行して、補助金や税制等により事業者の省エネ取組を支援しています。
省エネ法の対象とは
産業・業務部門では、これまでの積極的な省エネ取組により、エネルギー消費原単位(ある一定の生産活動に対するエネルギーの使用量を表す単位)は相当程度改善していますが近年は足踏み傾向にあります。
事業者単位の省エネは相当程度進んでいる中で、さらに省エネの取組を加速させていくためには、個々の事業者の枠を超えて複数の事業者が連携する新たな取組を促進していく必要があります。
運輸部門については、近年のネット通販市場の拡大に伴う小口配送の増加に対する「増エネ」への対応の強化が必要となっています。
小口配送の急増に伴い再配達も増加し、宅配で消費されるエネルギーの25%、原油換算で10万klが再配達によるものとなっています。
また、B to Bの市場では、荷送り側のみならず荷受側における手待ち(荷物を積み込み又は積み下ろす際の待機時間)などによるエネルギーの消費も問題視されています。
貨物輸送分野においては、燃費の向上だけでなく、徹底的な物流の効率化により、効率的な物流体系を築いていくことが急務です。
改正前省エネ法では、エネルギー消費原単位を事業者単位でのみ評価していました。
例えば、同じ業界にあるA社とB社が一部の工程をB社に統合・集約することで省エネを図った場合、A社はエネルギー消費量が減ってエネルギー消費原単位が改善し省エネ評価が向上する一方、B社はエネルギー消費量が増えてエネルギー消費効率は悪化し省エネ評価が悪化していました。
そこで改正法では、複数事業者が連携した省エネ取組を適正に評価するため、新たに「連携省エネルギー計画」の認定制度を設け、認定を受けた複数の事業者が事業者間の連携による省エネ量を、それぞれの事業者に分配して報告することを可能としました。
また、両者ともプラス評価となるような複数事業者の連携による省エネの取組に対しても、改正法ではそれぞれの事業者の省エネ取組への貢献度合いに応じて省エネ量を分配することができるようになりました。
省エネ法では、それぞれの事業者が一定規模以上のエネルギーを使用する場合は、事業者ごとにエネルギーの使用状況等の定期報告や中長期計画の提出、エネルギー管理の責任者の選任等、省エネ法の義務を課しています。
改正法では、グループ企業が一体的に省エネを行うものとしてグループの企業の親会社が「認定管理統括事業者」として認定を受けた場合、親会社が子会社等(「管理関係事業者」)の分も省エネ法の義務を一体的に履行できるようになり、事業者の負担が軽減されるとともに、グループ全体の省エネ取組を評価することで費用対効果を考えた効果的な省エネ取組が進むことが期待されます。
改正前省エネ法では工場間の輸送を念頭に、荷主の定義を「貨物の所有者」としていました。
今後も増加が見込まれるネット通販においては、売買契約が成立した段階で所有権が購入者に移る事例もあり、事実上輸送の方法などを決定していても、荷主として省エネ法の規制をうけないネット小売業者が存在していました。
そこで荷主の定義を「輸送の方法を決定する者」と改め、契約などで輸送の方法を決定するネット小売事業者を省エネ法の規制対象にしました。
規制の対象が拡大することで、受け取り場所の多様化や宅配ボックスの活用、協同配送や物流拠点の共有など、荷主が貨物輸送事業者などと連携して貨物輸送の効率化に積極的に取り組むことが期待されます。
改正前省エネ法では、荷物を受け取る「荷受側」に対しては省エネの努力は求めていませんでしたが、荷受側が到着日時等を適切に指示しないことで荷物が無秩序に到着し、手待ちが発生する場合があります。
改正法では、貨物の到着日時等を指示できる荷受側を「準荷主」と位置づけ、ガイドラインを整備し、貨物輸送の省エネへの協力を求めていくこととなりました。(努力規定)
改正前省エネ法では、対象となる事業者に対し毎年定期報告書及び中長期計画書の提出を義務づけていましたが、改正法では、省エネ取組の優良事業者を対象に数年に一度の提出を可能としました。
工場等設置者については、事業者クラス分け評価制度において2年連続S評価の場合、翌年度以降、S評価を継続している限りにおいて、計画期間内(5年が上限)は中長期計画書の提出が免除されます。なお、これまでどおり毎年提出することも可能です。
荷主についても同様に、2年連続エネルギー消費原単位を5年度間平均1パーセント以上低減させた事業者を対象に計画書の提出が免除されます。
平成30年省エネ法改正について(経済産業省資源エネルギー庁ホームページ)
近畿経済産業局 資源エネルギー環境部 エネルギー対策課
電話:06-6966-6043