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高レベル放射性廃棄物の地層処分に向けた取り組み
科学的特性マップを活用した対話活動について
担当課室:資源エネルギー環境課総合エネルギー広報室

最終更新日:令和元年5月8日

日本では、1966年に運転が開始された東海発電所を最初に、現在まで商業用に原子力発電を行ってきました。それに伴い、使用された燃料から「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれる廃棄物が発生しています。

この「高レベル放射性廃棄物」には、放射能レベルが十分に減衰するのに非常に長い時間を要する放射性物質が含まれます。

そこで、人間による管理によらない方法で処分すべきであるとした上で、その方法として、地下深くの安定した岩盤に閉じ込め、人間の生活環境から隔離する「地層処分」が最適であると国際的に考えられています。

「高レベル放射性廃棄物」とは

そもそも「高レベル放射性廃棄物」とはどのようなものなのでしょうか?

原子力発電では、原料となるウランを核分裂反応させる過程で生じる熱を取り出して電気にしています。発電に使われた使用済燃料には、核分裂せずに残ったウランや新たに生まれたプルトニウムが含まれており、これらはエネルギー資源として使用が可能なものです。

資源の少ない日本においては、このウランやプルトニウムを抽出し、再利用する「核燃料サイクル」を推進しています。

この処理において、使用済燃料の約95%が再利用可能となりますが、残りの約5%は再利用できない廃液になります。この廃液をガラス原料と高温で融かし合わせ、ステンレス製の容器に流し込んで冷やして固めたものが「ガラス固化体」と呼ばれ、すなわちこれが「高レベル放射性廃棄物」になります。

高レベル放射性廃棄物は安定した物質で、それ自体に爆発性はなく、放射性物質が連続的に核分裂を起こして大きなエネルギーを放出する臨界を起こすこともありません。

高レベル放射性廃棄物の発生過程 (資源エネルギー庁HPより)

高レベル放射性廃棄物の発生過程 (資源エネルギー庁HPより)

ガラス固化体の大きさは、直径約40㎝、高さ約1.3mほどであり、100万kW級の原子力発電所1基を1年間稼働した場合、発生する使用済燃料からは、約20~30本のガラス固化体が発生します。

約半世紀にわたり原子力発電を利用してきた日本では、約18,000トンの使用済燃料が貯蔵されており、ガラス固化体に換算すると約25,000本相当のガラス固化体が存在していることになります。

なぜ「地層処分」なのか

ガラス固化体は、1000年程度の間に放射能が99%以上低減し、数万年後には、そのもとになった燃料の製造に必要な量のウラン鉱石の放射能と同程度になります。そのため、長期にわたり人間の生活環境から隔離する必要があります。

これまで世界各国や国際機関などで、海底や南極、宇宙での処分など、様々な処分方法が検討されてきました。しかしながら、国際条約による禁止や、技術的不確実性などで、その実現可能性は認められていません。

地層処分以外に検討された方法(資源エネルギー庁HPより)

地層処分以外に検討された方法(資源エネルギー庁HPより)

こうした様々な処分方法も検討された上で、地下深部が本来持っている物質を閉じ込めるという特徴を利用する「地層処分」が最適であるという認識が、国際的に共通の考え方になっています。

実際、諸外国でも高レベル放射性廃棄物の処分方法として地層処分が採用されており、一部の国では既に処分場の場所が決まっています。

日本では、ガラス固化体を30〜50年程度一時貯蔵して冷却した後、最終的に地下300mより深い安定した地層に処分することを、基本方針としています。

「科学的特性マップ」の公表を契機とした対話型説明会の開催

地層処分の実現に向けては、将来世代に先送ることなく、原子力発電の恩恵を受けてきた現世代で道筋をつけるべく取り組んでいく必要があります。

そこで国は、この地層処分について全国の皆さまに関心や理解を深めていただけるよう、2017年7月28日、地域の地下環境等の科学的特性を全国地図の形で表した「科学的特性マップ」を公表しました。

この「科学的特性マップ」は、地層処分に関する地域の科学的特性を、一定の要件・基準に従って客観的に整理したものです。国民の皆さまに、地層処分の仕組みや日本の地下環境などについて理解を深めていただくことを目的としており、いずれの地域や自治体の皆さまにも、調査や処分場の受入れを求めるものではありません。

処分場所を選んでいくには、原子力発電環境整備機構(NUMO)※1が処分地選定調査を行い、科学的特性を詳しく調べていく必要があります。そして、この処分地選定調査をいずれかの地域に受け入れていただくためには、地層処分に関する広範な国民理解を得るとともに、地域の中でしっかりと検討していただくことが重要です。

そこで、国と原子力発電環境整備機構(NUMO)は、この「科学的特性マップ」の公表を契機として、地層処分の仕組みや、地層処分に適した地下環境が日本にも広く存在するとの見通しを共有しながら、地層処分に対して広く国民の理解を得ていくことを目的とした「科学的特性マップに関する対話型全国説明会」を全国で開催しています。平成30年5月より開始された当説明会は、平成31年3月末までに全国54箇所で開催されました。※2

「科学的特性マップ」の公表は、最終処分の実現に向けた長い道のりの最初の一歩です。引き続き、国民理解・地域理解を深めていくための取組を一歩ずつ丁寧に進めていきます。

※1「原子力発電環境整備機構(NUMO))」は地層処分事業の実施主体。「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき、電力会社等を発起人として、経済産業大臣の認可を得て設立された認可法人。

※2「科学的特性マップに関する対話型全国説明会」の開催状況

関連施策へのリンク

放射性廃棄物について(資源エネルギー庁ホームページ)

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 エネルギー環境部 資源エネルギー環境課

電話:06-6966-6041

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