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伝統的工芸品「京焼・清水焼」の未来
新事業への取組と補助金活用事例のご紹介
担当課室:製造産業課

最終更新日:令和元年11月1日

日本のものづくりの原点、文化の象徴として長年国民生活にゆとりと潤いを与え、地域経済の発展に貢献してきた伝統的工芸品産業。時を経て、昨今はライフスタイルの変化による需要の低迷、後継者不足等さまざまな課題を抱えています。一方では、伝統的な技術・技法を活用し、時代の潮流や現代の生活様式に合った新商品が多数開発され、日本の優れたものづくり技術は世界からも注目されています。

今回は、伝統的工芸品である「京焼・清水焼」の製造事業者等が所属する組合の連合体である「京都陶磁器協同組合連合会」を訪問し、理事の高島慎一さんと事務局長の佐野眞人さんにお話を伺いました。

京焼・清水焼とは

京焼・清水焼は、京都を代表する伝統的工芸品のひとつで、もともと清水寺に向かう清水坂界隈の窯元で焼かれていた焼き物を指してそう言っていたのが始まりです。京焼と清水焼の違いは、清水焼以外にも、粟田口焼(あわたぐちやき)・八坂焼(やさかやき)・音羽焼(おとわやき)・御菩薩焼(みぞろやき)などが京都市内各地にあり、それを総称して「京焼」という言葉が使われていました。しかしその後、時代の流れとともに清水焼だけが残り、現在ではほぼ「京焼=清水焼」という形になっています。

京焼・清水焼が他産地の陶磁器と違う点・特徴は何かと尋ねたところ、「特徴がないのが特徴」というお話がありました。京都は昔から色々な地域の文化が集まる都であったため、様々な土地の技法や表現を取り入れて発展していった経緯があるためです。決められた特徴がないから、新しいことに取り組める。そんなところも京の陶磁器の魅力かもしれません。

新商品の気づきと海外展開の難しさ

焼き物の可能性を模索する高島さんは建築関係の需要にいち早く目を向けました。昨今の京都は外国人観光客の増加により建築ラッシュとなっており、新築・増築されるホテル等では、地元の工芸品を積極的に取り入れているそうです。

「京都陶磁器協同組合連合会」では、過去数年にわたり、建築分野や海外展開も視野に入れて新商品開発に取り組んできました。その活動をきっかけに建築デザイナーと知り合った高島さんは、建築デザイナーが「手作りで小ロット」という部分に非常に価値を感じてくれることに気付きます。建築分野の仕事は、製品自体も大きく同じ物を大量に作るので、若手職人の教育にもなります。そこで高島さんは、デザイナーと協力し、京焼・清水焼の技術を活用した照明や洗面台を手がけるなど、新商品を生み出しています。

陶磁器の照明傘

陶磁器の照明傘

トイレ用手洗い鉢

トイレ用手洗い鉢

また、そうなると海外に目を向けておられるのではないかと考え、状況をお聞きしたところ、爆買いという言葉があるように京焼・清水焼を日本でお土産として買って帰る外国人観光客は多いようですが、外国で展示会なり販売を行うときには、やはり現地の生活様式に合わせた商品を開発・改良することが必要とのことです。海外でビジネスを行うためには現地法人を設立するか、代理店となるパートナー企業を見つけるなど、かなりの下準備が必要のようです。

伝統的工芸品産業支援補助金の活用と組合の未来

後継者育成事業「寺子屋塾」の様子

後継者育成事業「寺子屋塾」の様子

産地の問題点として後継者が不足している状況は、京焼・清水焼も例外ではありません。京都陶磁器協同組合連合会は経済産業省「伝統的工芸品産業支援補助金」を活用し、若手職人への技術の伝承と技量の向上に取り組んでいます。本事業は産地後継者を育成するという目的のため、非組合員でも受講が可能です。組合に所属することで、国・京都府・京都市、その他公的機関の情報を取得できること、職人同士の情報交換が容易になること、材料の共同購入ができること等のメリットを感じてもらい、組合の所属率を上げ、産地全体を盛り上げたいと連合会では考えておられます。

また、現在、業界に飛び込む方は女性がほとんどだそうです。産地の需要が低迷している現状で、「やりたい仕事に就く」、「夢に向かって生きる」女性達は将来の有望な担い手であり、女性が安心して働ける環境作りも行われています。

近年、世界が日本の伝統的工芸品の素晴らしさに注目するようになりました。補助事業も活用して、先人の技術・技法を伝承するだけでなく、ものづくりの楽しさを再認識し、個性的なものづくり技術をもった人材が輩出されることが期待されます。

終わりに

新しい目線はどのようにすれば培えるのか、それはいい人に巡り会えるかどうか。高島さんは若い職人さんに工房にこもらずにどんどん外に出るように言うそうです。すぐに何かあるわけじゃない、10年後に初対面じゃないことが強みになる。展示即売会であっても、その場の売上はもちろん重要だが、バイヤーと話をして名刺交換をするのも同じくらい重要と考えておられます。

人との出会いを大事にし、何が求められているかを認識しながら、新しい作品を生み出していく。様々な表現を取り入れる京焼・清水焼、そして、京都陶磁器協同組合連合会のこれからの取組にご期待ください。

掲載関連情報

企業名
京都陶磁器協同組合連合会
所在地
京都府京都市山科区川田清水焼団地町6−2
電話番号
075-582-3113

関連施策へのリンク

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近畿経済産業局 産業部 製造産業課

電話:06-6966-6022

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