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―近畿の電源地域で地域活性化の取組みを行う企業・団体をご紹介します―
NPO法人森林楽校・森んこ〔福井県おおい町〕
担当課室:資源エネルギー環境課

最終更新日:令和2年1月7日

福井県おおい町南部に位置し、福井県と京都府の県境にある小さな里山「老左近(おいさこ)集落」。少子高齢化による過疎化の影響により、現在は無住集落となっています。

そんな中、NPO法人森林楽校・森んこ(しんりんがっこう・もりんこ)では、「OISAKO夢充集楽(むじゅうしゅうらく)プロジェクト」として、この老左近集落を新しい里山暮らしができる場所として環境整備し、「集い」「遊び」「学び」「体験」する様々な活動を行っています。

そんなNPO法人森林楽校・森んこの活動を紹介します。

「NPO法人森林楽校・森んこ」の設立

かやぶきの民家「集楽庵」

かやぶきの民家「集楽庵」

代表の萩原さんは、1997年に旧名田庄(なたしょう)森林組合(現れいなん森林組合)に就職のため、Iターンで名田庄村(現おおい町)に移住され、業務に従事される傍ら、林業が抱える後継者不足や、地元の人々が森林に対して関心が薄れている現状に危機感を感じ、もっと子供たちに森林の魅力を知ってほしいとの思いから、2004年に任意団体「森んこ」を立ち上げ、翌年「NPO法人森林楽校・森んこ」を設立しました。

また無住化した里山「老左近集落」で空き家となっていた古民家と出会ったことから、2008年に「かやぶきの民家」として整備し、以降、この古民家を「集楽庵(しゅうらくあん)」と名付け、法人の活動の拠点として、間伐・枝打ちなどの林業体験や炭焼き・薪割り体験など、大人から子供まで全世代を対象とした様々な森林体験活動を実施してきました。

この「集楽庵」の整備にあたっては、都市圏と農村部との交流促進に資するとして、おおい町からの支援を受けており、このような行政の後押しや、体験活動を通じた参加者と地元民との交流の積み重ねは、地元に対する活動の理解促進に大きく寄与することとなります。

OISAKO夢充集楽プロジェクト

そんな中、2013年に、京都大学大学院で地域に根ざす設計技術や人間居住について研究する研究室の学生が、かやぶきの民家を森林体験活動の場に活用している当法人の活動に興味を持ち、卒論のテーマとして採用したことをきっかけに、当研究室との連携が始まりました。研究活動を進めていく中、学生から「集落全体を新しい里山暮らしの提案と実証の場として活用してはどうか」といったアイデアが提案されます。

そこで、集落の中に農園やコミュニティハウスを整備し、さまざまな体験事業を通して多くの人が集うことで、「無住集落」を、活気あふれる「夢充集楽」に作り替えることを目的とした、「OISAKO夢充集楽プロジェクト」が2017年に立ち上がりました。

当プロジェクトでは、集落内を流れる渓流での生き物調査や、渓流沿い遊歩道のクリーンアップハイク(清掃活動)、畑の土興しから、お手入れ、野菜の収穫まで、季節ごとの体験イベントを開催しています。

2019年7月にオープンしたコミュニティハウス「よざえもん」

2019年7月にオープンしたコミュニティハウス「よざえもん」

集落近くにある「野鹿の滝」遊歩道での清掃活動の様子

集落近くにある「野鹿の滝」遊歩道での清掃活動の様子

また京都大学大学院との連携では、空き屋が地域に及ぼす影響の研究や、バンブーグリーンハウス(竹材を使った農業用ハウス)の組みたて、古民家の測量実習、地域行事や祭りについての聞き込みを行うなど、集落全体を環境教育や都市と農山村との交流の場として活用しています。

京都大学大学院との連携によるバンブーハウスの組み立て作業の様子

京都大学大学院との連携による
バンブーハウスの組み立て作業の様子

完成したバンブーハウス

完成したバンブーハウス

このような活動を通じ、学生や地域住民と議論を重ねる中で、登録制による里人の確保、主催イベントなどで使用可能な地域通貨の活用など、新しい里山暮らしを提案する様々なアイデアが生まれています。

100年続く里山を目指して

活動の中で、改装・整備した建屋や土地については、元々の所有者から買い取ることはせず、定期的に賃料を支払うことで使用しています。

これは、「地域での活動」と「その地域に根ざしていた方々」との繋がりを残し、老左近という「場」で人々が交流し活動したことで創出された価値を根ざしていた方々へ還元することにより、「かつて自分たちが暮らしていた地域が、現在も付加価値を創出している」という認識を持ってもらうことを目的としています。

結果、このような活動を通して、老左近から離れて暮らす元地元民から、「生まれ故郷を賑やかにしてくれてうれしい」といった声も聞かれています。このように「場」を中心として、過去と現在、そして次世代と、関わる人々を繋げ続けていくことが、活動の持続性を確固たるものにしていく源泉となります。


「かつての里山では、自然とともに暮らす循環型の持続可能な暮らしが受け継がれてきました。現代においても、最新の技術を否定することなく、持続可能な建築物や自己維持型の農業システムを取り入れ、人と自然が共に豊かになるような、永続可能な文化を築いていく「パーマカルチャー」という概念があります。このような考え方を参考に、今後は体験イベントや、講演会・勉強会に加え、福井県が実施する地域通貨導入の実証事業など、人々が協力して新たな里山暮らしを作っていく活動も加えていきます。「3世代(100年)続く里山を作ろう!」を目標に、「楽しみの力(楽力)」と「継続の力」を信じて今後も挑戦していきます。」と萩原代表は語ります。


これからもNPO法人森林楽校・森んこでは、試行錯誤を繰り返しながら、新しい里山・楽しみのある暮らしの提案、実践を行っていきます。

おおい町 推薦コメント

この取組の拠点である納田終老左近(のたおいおいさこ)集落は、名田庄地域でも最上流に位置し、20年程前から誰も住んでいない無住集落となっています。周辺地区の少子高齢化の状況を考えると、今がコミュニティ再生の最後のチャンスであり、この機に区民とNPO法人が協働して田舎の強みを活かした元気で魅力ある地域づくりに取り組み、活動の様子と可能性を発信することは、同様の問題を抱える地域の勇気となり、その取組の輪が広がり、地域全体の活性化につながるものと期待しています。

関連リンク

NPO法人森林楽校・森んこ「OISAKO夢充集楽プロジェクト」

近畿電源地域チャンネル

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 資源エネルギー環境部資源エネルギー環境課

電話:06-6966-6041

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