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最終更新日:令和2年5月1日
近年、人手不足が深刻化する中、業務効率や顧客満足の向上などを実現するツールとして、また、大阪・関西万博の開催を見据え、新たなサービスを創出するツールとして、VR/AR/MR(注)への関心・期待が高まっています。
近畿経済産業局では、ビジネス・産業用途でのVR/AR/MR活用を促進するために、令和元年度に「VR・AR等の先進的コンテンツを活用した取組実態及び知的財産権活用に関する調査」を実施しました。
本調査では、有識者の協力を得て、関西企業19社へのヒアリングを行いました。それをもとに、VR/AR/MR活用のポイントや課題を整理し、活用を検討するユーザー企業を対象にした「ビジネスに効果的なVR/AR/MR活用の手引書・事例集」を作成しました。
ここでは、手引書・事例集の概要と、事例集よりVR/AR/MRを活用した2社の取組を紹介します。
(注)VR/AR/MRには様々な定義がありますが、本手引書・事例集においては以下のように定義しています。
ビジネスでVR/AR/MRを活用する際の
ヒントが詰まった手引書・事例集
経済産業省では、平成30年に主に開発者向けの「VR等のコンテンツ制作技術活用ガイドライン2018」を公開していますが、今回は、ビジネス用途に特化してVR/AR/MRの活用を検討している利用者向けの手引書・事例集を全国の経済産業局で初めて作成・公開しました。
本手引書・事例集は、「VR/AR/MRの言葉は聞いたことがある」「展示会で体験したことがあるが、自社のビジネスにどのように活用すればよいか分からないと」といった企業を主なターゲットに、利用者側の視点に立って、VR/AR/MRをビジネスで活用するメリットや効果的な活用のためのポイントをわかりやすく解説し、12の具体的な活用事例を紹介しています。
VR/AR/MRをビジネスで活用することにより、時間・コスト削減など、働き方改革や業務効率化に繋がります。また、IoTやAIなど様々な技術やデバイスと連携することで攻めの経営にも役立てることができます。
特に、デバイスに取り付けられているセンサーやカメラを通して、現場の映像や音声を共有することにより、リアルタイムで遠隔地の熟練者やオペレーターから指示を受けながら作業することが可能となるため、作業ミスが減るなど業務効率化に繋がることが期待されます。
また、関西企業による活用事例を調査した結果、VR/AR/MRのメリットを実感できる活用シーンとして、以下の6つの場面を挙げることができます。
ヒアリング調査では、トレーニングと完成イメージのすり合わせに関する事例や、活用業態としては建設業での事例が多くありました。
ヒアリング調査を通じて、企業が実践しているVR/AR/MRを効果的に活用するための工夫を3点整理しました。
VR/AR/MRは体験を伝えるツールであるため、効果的に活用するためにはまず体験してみることが重要です。体験した感覚や感動は、体験した者でなければ分かりづらいものです。展示会やセミナーの体験会等へ積極的に参加し、担当者だけではなく、経営層も含めた関係者全員で実際に体験していただくことをおすすめします。
費用対効果の高いコンテンツを制作するには、自社内で繰り返し活用し続けられる完成度の高さや、利用者の興味を惹くためのエンターテインメント性を持たせることが重要です。トレーニングにゲームの要素や、採点・フィードバック機能を持たせるなど、利用者のモチベーションを高める工夫をすることも、VR/AR/MRコンテンツを継続的に活用するには有効です。
制作企業へ発注する際、VR/AR/MRで体験・実現できることを完全にイメージした状態で仕様を作ることは難しいかもしれません。というのは、発注後にプロトタイプ映像を体験すると、実現したいアイデアが次々と生まれ、「こんなこともできるのでは?」と発注時の仕様書に追加したいことが出てくることもあります。
仕様変更による手戻り作業が多く発生すると、追加費用がかかり、発注者・制作者間で経費負担に関するトラブルが起こる場合もあります。そのため、仕様変更が起こりうることを制作者・利用者ともに理解することが重要です。
株式会社メディアクトは、企業訪問に行かなくても、まるで実際に社内を見学しているかのように体験できる「会社案内VRコンテンツ」を制作しています。
就職フェアや合同説明会など社員採用の現場で活用されており、ブース来場者数やエントリー数の増加につながった事例もあります。さらに、入社後の実際の会社の雰囲気とのミスマッチを減らすことにも役立っています。
バーチャル会社見学のイメージ
実際の視聴の様子
NECソリューションイノベータ株式会社は、スマートグラスやARを活用して、現場作業者がハンズフリーでコミュニケーションを実現できるソリューションを提供しています。支援者や熟練者が現場に赴かなくても、製造・建設現場での保守点検作業や、物流等の倉庫のピッキング作業をサポートすることができ、現場作業者の作業効率や正確性の向上につながっています。
遠隔からの作業指示の様子
遠隔での効率的な作業支援を実現
近畿経済産業局では、ビジネスでのVR/AR/MRの活用を更に促すために今年度は、活用のポイントや留意点、具体的事例を紹介するとともに、実際にVR/AR/MRコンテンツを体験できるセミナーを複数回開催します。さらに、関西各地の産業支援機関と連携したイベントを開催するなど、VR/AR/MR活用に関する情報が関西地域に集まり、タイムリーに発信される環境づくりに取り組んでいきます。
近畿経済産業局 産業部 コンテンツ産業支援室
電話:06-6966-6053