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「関西航空機産業プラットフォームNEXT」によるCOVID-19対応
ニューノーマル時代に求められる航空機製造業とは
担当課室:製造産業課

最終更新日:令和2年9月1日

新型コロナウイルスCOVID-19による航空旅客需要への影響はかつて無い規模であり、しかも長期化することが予想されています。これを受けて、航空機産業大手メーカーでも製造機数の削減が進んでおり、グローバルサプライチェーン全体に影響が及んでいます。

航空機産業を関西経済の次世代の柱とすることを目指す「関西航空機産業プラットフォームNEXT(実施機関:公益社団法人関西経済連合会、公益財団法人新産業創造研究機構、近畿経済産業局)」では、この影響を最小限にとどめるための取組を実施すると共に、ニューノーマル時代に求められる航空機製造業のあり方を模索します。

COVID-19による航空輸送産業への影響

国際航空運送協会(以下、IATA)によると、世界の航空輸送産業の市場規模は金額ベースで290兆円、雇用は6550万人に上ります。また日本での市場規模は金額ベースで13兆円(GDP2.4%)、雇用は140万人に上ります。

しかし、今般のCOVID-19の影響により、世界の航空旅客需要(RPK)は文字通り「蒸発」し、4月には前年比▲94.3%となりました。2020年通年での見通しは▲54%であり、毎日実に250億円が失われている計算となります。

図1は、IATAによる航空旅客需要の今後5年間の見通しですが、ワクチン開発時期によって左右されるものの、2019年の水準まで航空旅客需要が回復するのは2024年と予想されています。

図1 航空旅客需要の今後5年間の見通し【出典:2020.7.30 IATA Economics’ Chart of the Week】

図1 航空旅客需要の今後5年間の見通し
【出典:2020.7.30 IATA Economics’ Chart of the Week】

COVID-19による航空機製造業OEMメーカーへの影響

航空旅客需要の激減とエアラインの業績悪化は航空機製造業の業績に直結します。最大手メーカーであるBoeing社とAirbus社の発表によると、2020年上半期の出荷航空機数は、Boeing社で前年同期比▲70%、Airbus社で前年同期比▲50%であり、売上げはBoeing社で287億$(3兆604億円、前年同期比▲26%)、Airbus社で189億€(2兆3682億円、前年同期比▲39%)となっています。このような急激な需要低迷を受け、両社とも以下図2のとおり製造機数の縮減を実施・予定しています。

図1 航空旅客需要の今後5年間の見通し【出典:各社公表資料より近畿経済産業局作成】

図2 ボーイング社・エアバス社の月産機数推移
【出典:各社公表資料より近畿経済産業局作成】

また、Boeing社では全社員の10%にあたる16,000人、Airbus社では全社員の11%にあたる15,000人の雇用削減を実施すると公表しています。

COVID-19による関西航空機製造業への影響

これら航空機製造業OEMメーカーの減産は、関西の航空機製造業大手メーカーの業績へと波及しつつあります。図3はTier1メーカー航空関連セグメントの2020年1Qの売上げと営業利益ですが、売上げを前年同期比▲40%程度としている企業も見受けられる一方で、堅調な防衛用需要に支えられ売上げを前年同期比+としている企業もありますが、営業利益で+が出ている企業はありません。また、どの社も受注高が10%~35%程度減少しています。

図3 関西Tier1メーカー航空関連セグメントの2020年1Qの業績【出典:各社公表資料より近畿経済産業局作成】

図3 関西Tier1メーカー航空関連セグメントの2020年1Qの業績
【出典:各社公表資料より近畿経済産業局作成】

この結果、各社がこれまで構築してきた中堅・中小サプライチェーン企業の業績にも影響が波及してきております。COVID-19の影響で特需が生じた産業をポートフォリオに組み込んでいる企業も一部存在しますが、いずれも業績の悪化が懸念されています。

「関西航空機産業プラットフォームNEXT」の取組と今後

「関西航空機産業プラットフォームNEXT」では令和2年度、COVID-19による影響の最小化に向け、企業の現状・課題を把握し、経済対策等支援施策の活用をサポート(底支え支援)するとともに、企業の事業成長プロセスに応じた、切れ目の無い支援(成長支援)の両面から図4の取組を進めています。

図4 令和2年度「関西航空機産業プラットフォームNEXT」の取組概要

図4 令和2年度「関西航空機産業プラットフォームNEXT」の取組概要

底支え支援では、各企業へのヒアリングと課題に応じた支援施策の提示や、企業勉強会の場における支援施策説明会を複数回実施するなど、適時最新の施策情報を共有する体制を構築しています。

成長支援では、COVID-19の影響で業務負荷が減少しているタイミングを人材育成の好機ととらえる企業も多く、各分野の専門家による現場巡回指導や、オンライン講義での海外企業への自社の技術力PRの手法指導により、企業の事業ステージに応じた支援を実施しています。

また、withコロナの時代には、企業のテレワーク体制を拡充するとともに、生産ラインの自動化を進めることが必要となってきます。最新の製造工程の見える化や自動化など、生産性向上に向けた先端技術の導入事例や今後の取組について、先行する企業からご紹介いただくことで、サプライヤーの皆様の情報収集の場も積極的に提供して参ります。9月4日(金)には「関西航空機産業プラットフォームNEXTセミナー 第四回研究会 ~生産技術の最前線~」を開催いたします。是非ご参加ください。

関西航空機産業プラットフォームNEXTセミナー
「第四回研究会 ~生産技術の最前線~」を開催します!

近畿経済産業局と公益社団法人関西経済連合会、公益財団法人新産業創造研究機構は、航空機産業を関西経済の柱の一つとすべく、昨年度より「関西航空機産業プラットフォームNEXT」を立ち上げ、様々な事業を展開しております。

このたび、研究会(セミナー形式)として、製造工程の見える化や自動化など、生産性向上に向けた先端技術の導入事例や今後の取組について、大手企業、サプライチェーン企業の各社からご紹介いただきます。幅広い分野のものづくりに関わる方々にご参加いただき、これからのものづくりを考える機会としていただきたく、ご案内いたします。

皆様のご参加をお待ちしております。

開催内容

  • 日時:令和2年9月4日(金曜日)14:30~16:30
  • 場所:神戸国際展示場 2号館 2A会議室(神戸市中央区港島中町6-11-1 ※ポートライナー「市民広場駅」徒歩すぐ)
  • 主催:公益社団法人関西経済連合会、公益財団法人新産業創造研究機構
  • 後援(予定):兵庫県、神戸市
  • 定員:90名
  • 参加費:無料
  • WEB申込:国際フロンティア産業メッセ2020(定員に達し次第締め切ります。)
  • 講演:
    (1) 川崎重工業における生産革新 ~生産システムKPSを加速するICT、IoT~
    川崎重工業株式会社は単車、油圧機器、ロボットなどの量産品から船舶、航空機、プラント等の一品受注品まで、生産形態が大きく異なる多様な製品を生産されていますが、QCDの向上を目指して、リーン生産システムKPS(Kawasaki Production System)を全社展開し、「ムダの徹底排除」、「設備と人のフル活用」を推進されています。
    講演では、KPSの概要に続いて、ICT・IoTを活用したKPSの深化・高速化の取組にスポットを当て、いくつかの代表的な製品での事例をご紹介いただきます。
    【川崎重工業株式会社 フェロー 古賀 信次 様】
    (2) 熱田起業は知っている!生産性向上の秘訣とは
    愛知県にある熱田企業株式会社は、航空機産業に長年携わってこられました。それらの実体験に基づいて、生産性向上に向けた取組(IoT活用事例など)や効果、導入にあたっての課題、従業員の意識変革、機運醸成などをご紹介いただきます。
    【熱田起業株式会社 製造部 統括部長/工場長 西川 篤志 様】

本セミナーのお問い合わせ先

  • (公財)新産業創造研究機構 航空機・航空エンジン総括部 担当:長谷川、菊次
  • 電話:078-306-6806 e-mail:kansai-aero-pf@niro.or.jp

掲載関連情報

イベント名
国際フロンティア産業メッセ2020
開催日時
令和2年9月3日(木)、4日(金)10:00~17:00
場所
神戸国際展示場 1・2号館(神戸ポートアイランド)

関連施策へのリンク

関西航空機産業プラットフォームNEXT

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 産業部 製造産業課

電話:06-6966-6022

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