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次の目標は自社製品のブランド化、挑戦を続ける「橋本漆芸」
「蒔絵」を通じて伝統工芸をより身近に。
担当課室:製造産業課

最終更新日:令和2年9月1日

和歌山県海南市の北西部「黒江地区」を中心に生産されている伝統的工芸品「紀州漆器」。江戸時代末期創業の和歌山の100年企業「有限会社橋本漆芸」では伝統工芸の技法を様々なものに取り入れ、新しい取組を進めています。

日常使いのできる「蒔絵」

日本の伝統的工芸品「紀州漆器」の産地企業、橋本漆芸は伝統的工芸品の技法のひとつである「蒔絵(まきえ)(※)」を伝統に固執することなく、常に新しいモノに施すことで、特別な日のものだけでない、日常使いできるものにしています。

ガラスに蒔絵を施すガラス置き時計など同社のオリジナル製品は多岐にわたりますが、特徴的な取組として、人気バーチャル・シンガー「初音ミク」の蒔絵を施したコラボ商品の企画・販売があります。

きっかけは2013年3月9日に和歌山ビッグホエールで実施された「初音ミク ライブパーティー 2013 in Kansai ミクパ♪」。会場近くのショッピングセンターを訪れていた同社の橋本寛子さんが参加者に声を掛けたところ、とても話が盛り上がり、それをきっかけに「初音ミク×蒔絵」の可能性を模索します。

コラボに至るまでに大きな苦労を経て2015年に「初音ミク」コラボしおりを販売。そこから爪切りやカードケースなど、商品企画から製造販売まで自社で細部にこだわったものづくりにより、蒔絵の美しさに魅力を感じた若者に受け入れられる製品を生み出しています。

さらに、ライブイベント会場で蒔絵体験を行ったところ、オリジナルでデザインや名前を入れられると非常に好評で、伝統工芸を身近に感じてもらう取組により産地の発展にも貢献しています。

蒔絵を施したガラス置き時計

蒔絵を施したガラス置き時計

初音ミクコラボ蒔絵爪切り

初音ミクコラボ蒔絵爪切り

※「蒔絵」とは漆工芸の代表的な技法であり、漆などの塗料により絵や文様、文字を描き、そこに金属などの粉を蒔いて絵にする技法です。

KISHU+の取組

2016年度から3年間、「紀州漆器」の復活をめざし、産地の若手跡継ぎによる団体「Wα.紀州」を結成。「紀州漆器」は元々新しい技術をいち早く取り入れる柔軟な姿勢が特徴ですが、この取組ではさらに踏み込み、先端デザイナーとの協業でこれまで製作したことのない新たな漆器製品を製作し、世に発信することで、既存客とは異なる層への訴求を図りました。

この3年間の取組を経て新ブランド「KISHU+」を立ち上げ、これまで漆器として手がけることの少なかったインテリアを中心に製作しています。製作された試作品は国内外の展示会で高く評価され、国内のみならず海外からの引き合いも強く、認知度は高まっています。

コンピュータでの製品設計や機械加工などの新たな技術を取り入れながら、手仕事だけでも工業生産だけでもたどり着けない「先端工芸」をキーワードに、同ブランドの新しい漆器作りの挑戦は続きます。

新型コロナウイルス感染症の影響と挑戦

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、御朱印帳やお守り等の主要取引先である寺社仏閣関係は施設閉鎖をしているところが多く、売上の低下は避けられません。そこで同社はこのピンチをチャンスに変えるべく、今までやってこなかったインターネット販売に着手しました。大橋さんは「このような状況になるまでBtoCはそこまで考えていなかった。この状況だからこそチャレンジを始めた」と話します。従来事業に軸足は置きつつも、状況に応じたチャレンジを欠かさないことで、以前の状態に戻ったときには、さらに成長しているビジョンを見据えています。

終わりに

橋本漆芸 大橋善弘氏

橋本漆芸 大橋善弘氏

「モノが売れない時代というが、必要なものは買うし、その単価自体は下がっていない。ちょっといい必要なものであれば売れる。自社製品のブランド化を次なる目標に取組を進めたい。」と大橋さんは言います。伝統的工芸品として漆器を守るばかりではなく、最新技術、特殊印刷を用いて、「かっこいい」と思ってもらえる商品を生み出す橋本漆芸は、伝統に固執しない新商品を次々と開発することで成長を続けています。

掲載関連情報

企業名
有限会社橋本漆芸
所在地
和歌山県海南市岡田569-1
電話番号
073-482-7630

関連施策へのリンク

近畿の伝統的工芸品産業~心と技~

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 産業部 製造産業課

電話:06-6966-6022

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