トップページ > 広報誌・E!KANSAI > 2021年3・4月号 企業・地域の取組紹介

関西から「キーパーソン」を考える!
地域の活性化を担う「キーパーソン達」
担当課室:中小企業政策調査課

最終更新日:令和3年3月1日

新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の働き方が大きく変わりつつあります。必ずしも都市部に住んで働く必要がなくなり、自分の好きな地域に住みながらそこで働くという分散型社会へと移行する動きも出ています。また、稼ぐことに重きを置いていた高度経済成長期とは異なり、時間やコスト、環境といった人々の生き方に対する価値観も多様化してきています。

さらに、2025年に開催が予定されている大阪・関西万博では2800万人の来場者が見込まれており、地域独自の文化や観光、産業といった、各々の地域が持つ独自の魅力を地域一体となってPRする絶好の機会でもあります。

そのためには、地域がそれぞれの価値を改めて見出し、域内外の異なる立場の人々や企業を繋ぎながら、共にその価値を高めて発信することができる「キーパーソン」の存在が極めて重要であり、既に各地で様々な取組が進んでいます。

現在当局では、「キーパーソン」と呼ばれる人はどのような人たちなのかについて調査研究を進めています。その中で、管内各地で地域活性化に取り組んでおられる「キーパーソン」と呼ばれる人々に取材し、お話を伺っているところです。

今回はその中から、お二人の取組についてご紹介します。

移住への「入り口」となる場所「OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO」

近年、多くのメディアで「クリエイターたちが集まる場所」として取り上げられ、地域活性化の新たなモデルとして、奈良県東吉野村にある「OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO」というコワーキングスペースが注目されています。

「OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO」は、村の中心部を流れる清流、高見川沿いにある築70年の民家を改修した施設であり、Wi-Fi環境や、プリンタ複合機、仕事やミーティングができるスペース、さらにコーヒースタンドなども併設されている、非常にクリエイティブな空間となっています。

また、この施設が所在している奈良県東吉野村は、奈良県東部に位置し、美しい清流と深い山々に囲まれた自然溢れる、大阪市内から車で約1時間半、人口約1700人の小さな村です。

そのような小さな村でありながら、2015年にオープンして以来、年間1000人以上がこのコワーキングスペースを訪問しており、東吉野村への移住にまで発展しているケースもあります。このコワーキングスペースと関わりを持つことで、現在27名が移住を実現しています。

昨今、都会から地方に目を向けている人が増えています。特に場所にしばられずに働くことができるクリエイターと呼ばれる人たちの多くが、都会とは違う流れが感じられて新たな発想が生まれるこの場所を利用し、自身の住んでいる地域と東吉野村のコワーキングスペースを行ったり来たりしながら、仕事をするという暮らしを繰り返しているうちに、結果的には東吉野村に移住するというような事例が多く生まれています。

本取組の発案者であり、運営におけるキーパーソンとなっているのが、合同会社オフィスキャンプ代表の坂本大祐さんです。坂本さん自身も大阪から東吉野村に移住をした1人であり、クリエイター仲間や行政などとタッグを組みながら本取組を推進しています。

クリエイターやアーティストの新たな活動拠点でありながら、山村と都会を結ぶ移住への「入り口」の機能を果たしている「OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO」を通じて、村全体が活性化し発展しています。

若いクリエイターやアーティストが集う「OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO」のワーキングスペース

若いクリエイターやアーティストが集う
「OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO」のワーキングスペース

刃物職人の後継者育成工房「MUJUN WORKSHOP」/シーラカンス食堂 小林新也さん

MUJUN WORKSHOPで刃物職人を目指す若者 右から順に、宮之原康詞さん、山口小春さん、藤田 純平さん

MUJUN WORKSHOPで刃物職人を目指す若者
右から順に、宮之原康詞さん、山口小春さん、藤田 純平さん

兵庫県小野市や三木市は、植木の剪定や絨毯のカットなど、その道のプロが使うような高品質の鋏(ハサミ)を中心とした播州刃物の産地として有名な地域です。しかし、他の多くの産地同様、職人の高齢化と後継者問題により、産地は存続の危機に瀕しています。これまでは一人の師匠に一人の弟子がつき、寝食を共にしながら技術を習得するのが一般的でした。しかし職人が高齢化し、80歳を超える職人が責任をもって弟子を新たに受け入れ、この先何十年と育てるのは非常に難しいのが現実です。

自身もこの地で育ち、この状況に危機感を抱いたのがシーラカンス食堂の小林新也さん。平成25年から播州刃物のブランディングや後継者問題に取り組み、事業としては成功していました。しかし、小林さん自身、弟子を受入れて育成するのが最も望ましいと思うものの、職人や産地問屋だけに頼っていては後継者問題は解決できないと判断。当面の課題を解決する苦肉の策として、自ら、実家の敷地内に工房「MUJUN WORKSHOP」を立ち上げました。工作機械も設置し、職人の伝統技術を次の世代に繋ぐ試みを平成30年にスタートさせました。

職人を目指す若者は、普段は工房で作業しつつ、必要に応じて職人の所に行き技術を教わります。職人が弟子を受け入れる負担なしで技術を継承することができるだけでなく、若者は複数の職人から、同時に様々な技術を教わり、これまでの一対一の師匠と弟子の関係では難しかった、スピーディーな技術継承と商品クオリティ向上が可能となります。一方で、親方がいない分、かなりの自主性や精神力が求められるという厳しい面も存在し、シーラカンス食堂も、様々なリスクを背負いながらも産地を思い、問題に向き合っています。

それでも徐々に、全国の職人を目指す若者からの問い合わせが来はじめています。現在は3名がここで修行をしており、中には、IT企業への就職が決まっていたにも関わらず、東京から小野に移り住んで職人を目指している女性もいます。

小林さんは地場産業を維持するだけでなく、播州の地で幅広い技術を学んだ若い職人達が、世界に通じる魅力ある商品を次々に生み出すことで、地域全体が活性化されることを願っています。



当局では、令和2年12月に「関西から「キーパーソン」を考える会」を立ち上げました。ご紹介した坂本さんや小林さんをはじめ、各地で「キーパーソン」として地域活性化に携わる7名と共に、「キーパーソンとはどんな要素を持つ人々か」「どのように地域で輩出していくのか」「キーパーソンが地域で活躍するために、どのような環境整備が必要なのか」等について議論をしています。また、次代を担う若手キーパーソンを発掘し、広く紹介していく予定です。

今後は、キーパーソン同士が繋がってお互いが刺激し合う場を提供することで、キーパーソンを中心に各地が活性化し、関西のどこを訪れても違った魅力で活力あふれる地域になるよう支援したいと考えています。



掲載関連情報

団体名
オフィスキャンプ東吉野
所在地
奈良県吉野郡東吉野村小川610-2
電話番号
0746-48-9005


企業名
合同会社シーラカンス食堂
所在地
兵庫県小野市西元町527
電話番号
0794-63-2265

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 総務企画部 中小企業政策調査課

電話:06-6966-6057

他の記事を読む