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最終更新日:令和3年7月1日
関西地域における「地域一体型オープンファクトリーの潮流」については、E!KANSAI 1.2月号(2021年)にて。 オープンファクトリーの運営力の構成要件や生まれるイノベーションについての報告書及びPR冊子については5.6月号(2021年)においてご紹介したところですが、今回は関西で新たに生まれた2件の地域一体型オープンファクトリーについてご紹介します。
2021年6月24日(木)~27日(日)に丹後地域のものづくりの現場を期間限定で公開し、多種多様な交流を促進するイベント「DESIGN WEEK TANGO2021」が初開催されました。
織物や機械金属、農作物等のものづくりの地域として栄えてきた同地域は、時代の変化と共に市場が変化・縮小し、また昨今の新型コロナ禍も重なることで困難に直面しています。 そうした中、21社の企業が集まり「100年後に繋げる丹後のものづくり」を見据え、業種、職種、立場、年齢、国境を越えた多種多様な人々にオープンファクトリーを通じて丹後の現場に触れてもらい、 交流を通じてたくさんのアイデアやインスピレーションを与え合う機会の創出を目指して本取組が開始されました。
各地のOPEN HOUSEの様子
今現在も同地域における織物業は約650社存在し、世界的なブランドとのコラボレーションや最先端の織物開発も行われているだけでなく、自動車や産業用部品を中心に最先端の機械・金属産業も約200社が活躍しているとのこと。
こうした魅力ある地域の発信・交流事業として取り組むにあたって、クラウドファンディングにもチャレンジし、計134万6千円の協力が全国各地から集まりました。
昭和10年創業、「服地は1mから、着物は1反から」を社訓に天然繊維(絹)にこだわり、染めから織までの一貫生産体制を構築。手絣染めした糸を使い「手織り・ジャカード織・カラミ織・ドビー織」等の織り技術を駆使し、他品種・小ロットでの生産を実現しています。
現代表は前職、世界的なハイブランドのコレクション用テキスタイルの企画製造に携わっており、「自分の家で作れるのではないか」と思い立ち家業へ。
現在では前職の知見や関係を活かし、世界各国のクライアントをはじめとして、国内においても他者が作っていない新たな商品づくりで活躍されています。
昭和43年創業の金属加工会社。アルミ材の精密部品加工を特に得意とし、量産をはじめ各種試作品から微細加工・5軸加工・総削り・金型部品まで対応することが可能。
現在ではリニア駆動5軸加工機を中心にした生産体制で、摩擦の発熱もない浮かせた加工は未来のものづくりを彷彿させます。
また加工だけでなく、金属精密切削技術を活かした遺灰入カード型ケースの自社ブランド「結心華」の開発や、地元・丹後ちりめんとのコラボレーション製品の開発、
さらには地域を越え匠と匠の技を掛け合わせることで唯一無二の製品を作り出す取組「匠プロジェクト」に協賛し、世界で高い評価を得ている漆芸・蒔絵技術を持つ山久漆工とコラボレーションし「匠チェスセット」を生み出しました。
丹後は日本でも東京から最も移動に時間がかかる地域の一つです。 天橋立やカニなど豊富な農海産物では知っている人も多いのですが、実はシルク織物や産業部品の製造・加工では世界でも有数かつ最先端の産地でもあります。 これまでは距離の問題からオープンファクトリーイベントの開催は厳しい部分がありました。しかし、コロナ禍によってオンラインツールが世界的に一般化し、距離を越えて繋がることが当たり前にできるようになったことで、 丹後の作り手と直接交流できる場を実現できると確信し、今回の開催に至りました。ホームページの情報も充実させることで、継続した交流を実現できるようにしました。 この結果、リアルとオンラインの両方の交流を通じて、国内外の様々な方に丹後のモノづくりの奥深さと柔軟かつ「ムチャブリ」に対応できる素晴らしい人たちがいるということを知っていただけたと思います。 同様のことは地元の若者たちにも同じことが言え、「丹後の魅力的な企業で働く」ことを将来検討する人たちが増えたことも嬉しい反応です。今後も本イベントに加えて丹後のモノづくり現場に訪問するツアー等の企画の実施などを通じて、交流の促進を図ってまいります。
一般社団法人サスティナブルジェネレーション(以下、SG NARA)が中心となって企画した奈良県内初の地域一体型オープンファクトリーがSGストリートNARAです。
SG NARAは目的を「組織化」にせず、「学び」に力点を置くコミュニティとして、業種も規模も立場も関係なく、だれもが純粋に「人間的な成長を目的とした学び」をするために集まる団体で、
月に一度お互いの経験等を共有したり、共通の話題で議論したりするビジネススクールやツキイチSGコミュニティの運営など、持続可能な地域の企業作りのために交流を生み出しています。
今回は、新型コロナ禍の中、様々な工夫を検討しながら、地域にゆかりある大学との連携を深める手法としてのオープンファクトリーに着眼し、 大和高田市、広陵町を中心とした奈良県下6市町の企業合同で「SGストリートNARA」を企画。2021年6月12日(土)のキックオフイベントをスタートとして、学生を中心としたオンライン撮影配信隊が地域企業を駆け巡っています。
高齢化が進み衰退していく日本の縫製業を、「もっと楽しく魅力的なものにする」ことで、日本の縫製業を次世代につなぐ思いから現代表の谷氏が立ち上げた合同会社ヴァレイ。
熟練の縫製技術を持ちながら、子育てや親の介護等の理由により働きたくても自宅を長時間離れることが出来ない「潜在縫製士」に注目し、
デザイナーとの交渉や生地等の裁断や配送、生産管理等、縫製以外の業務をすべて請け負い、自宅を仕事場として働いてもらうことのできる環境を作り出すことで成長を遂げました。
コロナ禍になりANAホールディングスと医療用ガウン10万着を1ヶ月半で製造しTV番組に出演。納品から2ヶ月後の9月には配送センターが完成しEC事業をスタート、初月売上3万円から5ヶ月で月商を7桁に到達させました。
コロナ禍の2020年6月、11月に小規模アパレルブランドと契約し自社ブランド事業もスタート、また、2020年12月より子供専用のミシン教室「VALLEY SEWING JAM」をスタート。FC展開も行い2021年5月時点で全国に5教室となっています。
2021年9月には3校同時オープン予定で、全国で合計8校になる予定です。
このように、コロナ禍でありながら新規事業の立ち上げを次々と行いアパレル業界でありながら売上は昨年対比1.6倍に成長させています。
セレクトショップ「Kazoku-Ya」
ファクトリーの作業風景
奈良県広陵町は「靴下の町」と呼ばれており、日本一の産地です。しかし、近年は安価な海外製品の台頭、また後継者不足等により、靴下の生産量は減少の一途を辿っており、斜陽産業と呼ばれることも増えました。
ヤマヤはそんな広陵町に拠点を置く工場の一つです。多くの工場が海外に拠点を移す中、ヤマヤは奈良県に残り、メイドインジャパンのものづくりと向き合い続けました。
幾度の危機を乗り越え、高品質な素材を培った新旧の技術で編み立てることで、信頼を得て成長してきました。今では世界を代表するようなブランドとのOEMや3つの自社ブランド
(「ORGANIC GARDEN」、「Hoffmann」、「yahae」)の展開により、デザイナーやエンドユーザーの方から支持を広く得ています。また靴下工場としてはユニークな取り組みとして、
直営店として奈良市の「糸季」、東京・清澄白河の「yahae kiyosumi」を運営することで、世界に広く靴下作りの魅力を発信しています。
自社ブランド「yahae」の商品
旧式の編み機が並ぶ工場の風景
私たちはこのコロナ禍において多くのことを学びました。それは、社会全体がよくならないと、個別の企業や自社の繁栄はあり得ないということでした。 そのためにも、まずはこの奈良という地域において、産業だけでなく教育機関や金融機関、行政が共にタッグを組んでよりよい社会を作るという目標を立てることが大切だと思います。 SG NARAから派生したSGストリートNARAはまさにすべてが共働する新しいオープンファクトリーを目指しスタートしました。
2021年度は上記以外の地域においても新たに地域一体型オープンファクトリーが生まれる予定です。
しかし改めて留意して頂きたいのは、「オープンファクトリー」はあくまで「手段」であって「目的」ではありません。また地域で価値を生み出しているのは「ファクトリー(工場)」だけではなく、
今回のDESIGN WEEK TANGOにおいても「食」の関連産業も躍動していたように、その地域が育んできた「価値の作り手」であることを再認識することが重要です。
近畿経済産業局は「オープンファクトリーは人づくり」を合言葉に、改めて地域を見直し、活性化させる手法として引き続き取り組んで参りますので、今後も関西エリアご注目ください。
近畿経済産業局 総務企画部 中小企業政策調査課
電話:06-6966-6057