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逆風下に立ち向かう航空機産業のチャレンジャーと支える仕組み
空の安全・安心を支える「非破壊検査」へのチャレンジ
担当課室:製造産業課

最終更新日:令和3年7月1日

航空機産業はその基礎となる世界の旅客市場が年率5%で推移し続けてきました。その堅調な需要を支えるべく、今後20年で運用機体数は約4万機と倍増することが見込まれている成長産業です。
 新型コロナウイルス感染症により航空機産業は極めて厳しい状況に追い込まれていますが、中長期的には持続的成長が見込まれ、他産業への波及効果も大きい重要産業としての位置づけが変わることはないと考えます。
 近畿経済産業局では、航空機産業関連企業がこの難局を乗り越え、需要回復期において更に競争力を強化することが重要と考え、2019年に設置した「関西航空機産業プラットフォームNEXT(※1)」を通じ、 航空機産業の競争力強化に向けて(1)事業継続と(2)成長支援の2つのベクトルに沿った事業を推進します。今回は、サプライチェーン構築・強化に重要なポイントとなる「非破壊検査員」の育成支援活動について、 意欲的に取り組む企業の事例を含めご紹介します。

【特殊工程(非破壊検査)の必要性-競争力強化のための一貫生産】

航空機産業は、欧米企業を頂点にグローバルにサプライチェーンを構築される産業構造を有しています。つまり、我が国航空機産業の発展のためには、世界との競争に勝ち抜いていくことが重要です。 そのためには、大手企業のみならず航空機産業に携わる全ての企業が、高度な技術に裏打ちされた高付加価値の提供とともに、高い生産性と強いコスト競争力の両立を実現することが重要です。 すなわち、世界の競合他社との競争に打ち勝つQ(Quality)C(Cost)D(Delivery)を有したサプライチェーン及びビジネスモデルの構築がアフターコロナの需要回復期には急務となります。
 QCD向上のためには、従来の慣行を脱したサプライチェーンやビジネスモデルの構築にチャレンジする必要があります。特に重要なのは、これまで重工をはじめとする大手企業とサプライヤー間での単工程発注の繰り返しで部品を完成させる、 通称「のこぎり発注」形態を脱し、航空機部品の製造に求められる生産工程、例えば、粗加工→精密加工→表面処理→検査・測定→非破壊検査→組立などの各工程を一気通貫で取り組む「一貫生産」形態を進めることです(図1)。 これにより、のこぎり発注形態で生じていた管理コストを低減させ、サプライヤーの競争力をより一層強化させることが期待されます。

(※1)関西航空機産業プラットフォームNEXT
航空機産業を関西の次世代産業の柱の一つとすることを目的として、関西の大手企業・中堅中小企業・産業支援機関等が結集したプラットフォーム。当局、関西経済連合会、新産業創造研究機構が事務局。
【図1 「のこぎり発注」と企業連携による「一貫生産」のイメージ】

【図1 「のこぎり発注」と企業連携による「一貫生産」のイメージ】

【特殊工程(非破壊検査)のハードル】

このような一貫生産を進める上で、航空機産業特有の高度な安全性を担保するため、サプライヤーの大きな障壁となるのが、「特殊工程(※2)」と言われる工程です。 特に、特殊工程の中に位置する「非破壊検査(※3)」はまさに航空機産業の高度な安全性を担保する最後の砦であり、厳格なQMS(品質マネジメントシステム)の取得、体系だった人材育成体制の構築などが要求されます。
 この人材育成については、その育成手法や運用が、NAS410(※4)やEN4179(※5)といった米国や欧州が示す航空セクタ用の海外規格に基づくものが要求されており、その理解を進めるだけでも一朝一夕に進むものではありません。 航空機産業と一口に言っても、機械加工を担うサプライヤーと非破壊検査を担うサプライヤーではその品質管理のレベルに大きな隔たりがあるため、非破壊検査工程の担い手は圧倒的に少数です。 裏を返せば、当該工程までを担えるサプライチェーンの構築は、より高度な一貫生産の実施に繋がり、延いては競争力強化に繋がるとも考えられます。

(※2)特殊工程
「製造およびサービス提供の過程で生じるアウトプットが、それ以降の審査及び測定で検証することが不可能な場合(製品が使用されサービスが提供された後でしか不具合が顕在化しない場合)」の作業工程のこと

(※3)非破壊検査
機械部品や構造物を破壊することなく、材料のもつ物理的な性質を利用して、内部や表面の欠陥の有無、構造、状態を検出する技術。様々な検査の手法(メソッド)が存在。

(※4)NAS410/(※5)EN4179
NAS410は米国、EN4179は欧州で策定された航空宇宙産業における非破壊検査技術者認証規格。JIS Z 2305のような第三者認証システムとは異なり、 資格試験・資格付与も企業内で実施することを想定した事業者認証システムであることが特徴。人材育成においては、level1~3で分類され、それぞれに求められる技能の訓練や習熟のための実務経験時間、 必要な資格試験等が異なっている。特殊工程を世界的に統一された基準で管理するための認証プログラム「Nadcap」の非破壊検査パートにおいて、当該認証体制を構築しておくことが求められている。

【非破壊検査における国内体制の構築】

国内においても、非破壊検査工程を担えるプレイヤーの少なさは課題であり、2017年に航空機関係企業(重工企業、エアライン等)のNAS410のLevel 3資格者11名、 事務局を(一社)日本非破壊検査協会、他関係省庁等をオブザーバーに「日本航空宇宙非破壊試験委員会(NANDTB-Japan)」が設立されました。
 この委員会では、NAS410に基づく非破壊試験技術者の認証のために必要な、(1)訓練講座(フォーマルトレーニング)を提供する機関、(2)実務訓練(OJT)の指針公表、(3)認証のための資格試験を提供する機関を承認することで、 国内での人材育成体制の基盤構築に取り組んでいます。
 関西では、訓練講座を提供する機関として、兵庫県立工業技術センター内に「航空産業非破壊検査トレーニングセンター」が設立されています。 また、資格取得で必要になる実務訓練(OJT)を提供する民間サービスも生まれ、非破壊検査への環境は整備されつつあります。(図2)

【図2 非破壊検査に取り組むための環境整備】

【図2 非破壊検査に取り組むための環境整備】

【先進的に取り組む企業の事例-ミツ精機株式会社(兵庫県淡路市)】

1962年設立のミツ精機株式会社(兵庫県淡路市)は、航空機の最重要パーツであるエンジン部品やランディングギア部品の製造を得意とする企業です。
 2012年、2021年には航空機部品専門工場を建設されており、その高い技術力・提案力から顧客からの信頼も厚く長年の受注を獲得しています。
 同社が非破壊検査事業への取組を検討し始めたのは、顧客より非破壊検査への従事要望を受けたことが契機でした。 厳格なQMS体制や人材育成システムの構築、非破壊検査に係る設備投資など、様々な障壁がありつつも、自社の将来の戦略を検討する上で、「既存事業の生産がピークを越えた先のことを考えると、 一貫生産体制を構築することで国際競争力の強化が必要」という意思を持ち続け、非破壊検査体制の構築を模索していました。
 業界トレンドとしての一貫生産体制構築や、非破壊検査を担う人材育成のための訓練講座が開講されるなど外部環境が整いつつあることを踏まえ、2016年に非破壊検査を担う人材を雇用し、 本格的に取組をスタート。兵庫県の「航空産業非破壊検査トレーニングセンター」で2017年にMT(磁気探傷検査)、2018年にPT(蛍光浸透探傷検査)を受講、訓練を修了したのち、 以前からお付き合いのあった同業他社で実務経験時間の確保のためのOJTを実施されています。
 注目すべきポイントは、「OJTはボランティアではなく、受入先企業と受入希望企業のニーズがマッチして初めて出来る取組であり、一朝一夕ではうまくいかないこと」を認識されていた点です。 そのため、同社では「自社の得意分野である難削材加工について技術交流を行うこと」と、「非破壊検査にかかる実務経験時間を確保させてもらうこと」のギブアンドテイクの関係を構築しOJTに成功しています。
 また、コロナ禍において既存事業の生産が落ち込む中でも悲観せず、時間的余裕が出来たと前向きに捉え、「関西航空機産業プラットフォームNEXT」事業の専門家派遣を活用して体制整備に注力することで、 自社の非破壊検査体制構築が大きく進歩しました。
 模索し続けた「一貫生産体制」が可能な中核サプライヤーへの成長の道筋が見え始めたミツ精機の挑戦はまだまだ続きます。

【図3 ミツ精機(株)の取組】

【図3 ミツ精機(株)の取組】

【まとめ】

ミツ精機株式会社の事例をはじめ、関西における非破壊検査に取り組む企業の特徴を見ると、「顧客、世の中から自社が求められていることは何か」をしっかりと認識し、 その上で戦略的に非破壊検査体制の構築に取り組まれていることが大きな特徴です。
 非破壊検査工程が出来れば新たな仕事を獲得できるのか、付加価値の向上に繋がるのか、そもそも顧客にとって不可欠な存在になるための自社の強みは何か。これらを強く再認識した上で、 非破壊検査への従事を決断することで、顧客にも自社にも効用をもたらすWin-Winの関係になることが重要と考えます。
 航空機産業に携わる企業の皆様が、より付加価値を高め競争力強化に繋がる取組を進められるよう、近畿経済産業局では、「関西航空機産業プロットフォームNEXT」事業の更なる拡充を図り、 非破壊検査への挑戦をはじめ、コロナ禍を生き抜き、需要回復期における競争力強化に繋がる取組をサポートして参ります。(図4)

【図4 令和3年度関西航空機産業プラットフォームNEXT事業計画】

【図4 令和3年度関西航空機産業プラットフォームNEXT事業計画】

掲載関連情報

企業名
ミツ精機株式会社
所在地
兵庫県淡路市下河合301
電話番号
0779-85-1133(本社・多賀工場)

関連施策へのリンク

関西航空機産業プラットフォームNEXT

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 産業部 製造産業課

電話:06-6966-6022

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