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伝統的工芸品「西陣織」×京都市産業技術研究所
宮階織物株式会社の取組のご紹介
担当課室:製造産業課

最終更新日:令和3年7月1日

日本のものづくりの原点、文化の象徴として長年国民生活にゆとりと潤いを与え、地域経済の発展に貢献してきた伝統的工芸品産業。 時を経て、昨今はライフスタイルの変化による需要の低迷、後継者不足等さまざまな課題を抱えています。 一方では、伝統的な技術・技法を活用し、時代の潮流や現代の生活様式に合った新商品が多数開発され、日本の優れたものづくり技術は世界からも注目されています。
 今回は、伝統的工芸品「西陣織」の製造事業者である「宮階織物株式会社」を訪問し、専務取締役の宮階幹久さんにお話を伺いました。

西陣織とは

西陣織は、京都を代表する伝統的工芸品のひとつで、西陣という名は、室町時代の応仁の乱の時、西軍が本陣とした場所に、乱の後、職人が集まって織物業を営んだことから付けられました。 織物の歴史としては、平安時代以前に秦氏によってもたらされた織技術にまで遡ることができます。西陣織は宮廷文化を中心に、織文化の担い手として発展してきました。

試験研究機関との連携による新商品開発や生産性向上の取組

宮階織物株式会社では、西陣織の技術や伝統を継承しつつ、京都市の試験研究機関である「地方独立行政法人京都市産業技術研究所(以下、産技研)」との共同研究により新しい技術を取り入れ、新商品開発や生産性向上等の先進的な取組を行っています。
 ここでは、その取組の一例をご紹介させていただきます。
 現社長(2代目)のご子息である宮階専務は、大学卒業後アパレル業界で働かれていましたが、アパレル関連会社を退社後に宮階織物株式会社へ入社し、 産技研が西陣織業界の将来を担う優秀な技術者を養成することを目的として実施している「伝統産業技術後継者育成研修 西陣織コース」を受講しました。 この研修受講により、西陣織に関する知識を深めるとともに、産技研の研究員の方や、西陣織の事業者等とのネットワークを構築されました。
 宮階専務は、アパレル業界での経験を活かし、新商品開発へも精力的に取り組まれました。着物は型が決まっている中で2次元でのデザインが必要となりますが、限られた条件の中で3次元、4次元の技術を取り入れたデザインができないかアイディア出しされました。
 生み出されたアイディアを、上記研修の同期であった産技研の研究員の方に相談し、産技研との共同研究を実施する運びとなりました。
 共同研究では、人が認識できる効果・方法について検討・設計し、スリットアニメーション画像作成ソフトウェアの開発を行いました。その結果、製織した2枚の生地を重ねることにより、後加工することなくスリットアニメーション効果が得られる、これまでに無かった織物の開発に成功しました。

図1 比較イメージ

図1 比較イメージ

図2 デザインイメージ

図2 デザインイメージ

図1は、同社で開発された着物です。右側が着物単体のイメージです。右のみでは、模様のみで何もないように見えますが、左のように着物の上に黒い羽織を重ねることで、花柄が見えるようになっています。
 また、図2では、着物と羽織にそれぞれ模様をつけることで、花のみが表面に浮き出したデザインとなっています。着用時には、これらの柄が動いて見えます。
 さらには、図3のように錯視を利用した3D風柄表現も開発しています。これは、近くや異なった角度では、図柄を判別出来ませんが、ある角度や距離で図柄を見た時にのみ図柄が現れるように見えるものです。

図3 錯視を利用した図柄

図3 錯視を利用した図柄

さらに、同社では産技研とデジタル技術を活用して生産性向上にも取り組んでいます。
 西陣織の製造工程の主となるのはジャカード織機での作業です。ジャカード織機は、古くから使用されている機械であり、織機の製造事業者も少なくなって来ていることから、現在では修理も難しくなっています。
 そのような中、同社ではジャカード織機へ独自にカスタマイズを施し、織機上部にカメラを設置して、針の掛かり状況をPCへ取り込みデータ化することで、織機での織りミスを最小限にする取組をされています。この取組により、製品の製造ロスを最小限にしています。
 現在も新たなデジタル技術を活用した取組を模索されており、世の中の変化への対応に余念がありません。

終わりに

宮階織物株式会社 専務取締役の宮階幹久さん

宮階織物株式会社 専務取締役の宮階幹久さん

宮階専務は、今の時代だから出来ることをしたいという強い気持ちをお持ちです。
 上記取組の他にも、経済産業省のものづくり補助金を活用することで最新のニットマシンを導入し、新たな試みとして編み物の世界にもチャレンジされています。
 このように様々な先進的な取組をされている同社ですが、その根底には、「あくまでも着物を作る黒子として、着物顧客のニーズを満たすインパクトある製品を生み出す」という想いがあります。
 直接的な顧客との接点は少ない同社ですが、問屋を通じて顧客に製造現場を見てもらい、同社の着物への理解を深めてもらう取組もされています。
 「新しき伝統の創出」をモットーとして、和装業界の厳しい状況の中で、古き良き技術を継承しながら、新しい技術に挑戦する「宮階織物株式会社」にご期待ください。

産技研からのひとこと!

宮階専務はアパレル業界におられた経験から世間の動向に鋭く、他業種の新技術を伝統的な織物製造業においても当たり前のように取り入れ、実装することを常に考えておられます。

伝統産業では人員の不足や部品・技術の枯渇など様々な課題に直面しつつありますが、今後はDXによりこういった困難を克服し,伝統産業におけるDXモデル事業所のような存在になられることを、また、ますます事業を発展していかれることを期待しております。

(地独)京都市産業技術研究所のご紹介 

(地独)京都市産業技術研究所では市内伝統産業界に向けて、技術相談、試験・分析、製品開発、担い手育成、研究会事業、知恵産業支援といった主として技術的な側面からこれら支援メニューを効果的に活用し、 枯渇原材料や部品への対応、製造プロセスのデジタル化、新製品開発、次代を担う職人の育成等に取り組んでおります。

来年度に第3期中期計画期間を迎えるにあたり、これらの取組に加え、現下のコロナ禍対策とともに、京都の特性を活かしたものづくりの推進による発信力の強化と技術の高付加価値化を進める所存です。 これらの取り組みの支柱となるのは「伝統と先進の融合」であり、このようなモデルを関係業界と共に構築することにより今後の伝統産業界の発展に貢献してまいります。

掲載関連情報

企業名
宮階織物株式会社
所在地
京都府京都市上京区笹屋町通六軒町西入笹屋5丁目311
電話番号
075-462-3030

組織名
地方独立行政法人京都市産業技術研究所
所在地
京都市下京区中堂寺粟田町91 京都リサーチパーク9号館南棟
電話番号
075-326-6100

関連施策へのリンク

近畿経済産業局 近畿の伝統的工芸品産業~心と技~のページ

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 産業部 製造産業課

電話:06-6966-6022

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