トップページ > 広報誌・E!KANSAI > 2022年1・2月号 企業・地域の取組紹介
最終更新日:令和4年1月4日
2015年9月に国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
近年、SDGsは社会全体で広く知られるようになり、地域においてSDGsの視点を取り入れ、かつ地域の魅力・強みを活かした事業への関心が高まっています。
2025年の大阪・関西万博は「SDGs万博」でもあります。関西では、2017年12月に関西SDGsプラットフォームが立ち上がるなど、SDGsの達成に向けて様々なステークホルダーにより取組が進められています。
環境・リサイクル課では2021年7・8月号から、環境及びリサイクル分野においてSDGsの視点を加味し、かつ地域の魅力・強みを活かした自治体等の取組を紹介しています。
第4回の今回は、SDGsの基本理念を取り込んだ「第7次敦賀市総合計画」を2021年3月に策定され、また2021年7月に「ゼロカーボンシティ宣言」を発出された福井県敦賀市を紹介します。
敦賀市企画政策部 ふるさと創生課 前田修吾さん(左) 敦賀市企画政策部 ふるさと創生課 尾上敦洋さん
「次世代につなげる 夢と希望に満ちた 住みたくなるまち敦賀」を基本理念として、本市のまちづくりの指針となる「第7次敦賀市総合計画」を作成するにあたり、重視した点は
(1) SDGsやカーボンニュートラルなどの新たな潮流への対応を図ること
(2) 次世代につなげるという基本理念から、敦賀の将来を担う若者の意見を大いに反映すること
といった点でした。
よって、審議委員は、21名中8名が高校生・大学生の委員となるとともに、より幅広く次世代の方々の意見を聴くため、審議委員以外の学生にも参加者を募り(市内高校生、大学生延べ15名が一般参加)、審議を重ねました。
参加頂いた皆さんのまちづくりへの熱い思いを反映させ、若年層をターゲットとした移住定住の促進や、若者の働く場となる多様な産業の創造に向けた具体的な計画も盛り込んだ、次世代につなげるにふさわしい総合計画が出来たと思います。
また、市民の皆さんとともに策定した第7次敦賀市総合計画は、福井県が実施している「ふくいSDGsパートナー」の活動コンセプト「未来のために。次の世代に選ばれる福井へ」に合致する内容であると認められ、敦賀市がふくいSDGsパートナーに登録されました。
【審議会(2021年11月9日)の様子】
【第7次敦賀市総合計画 表紙】
【ふくいSDGsパートナー登録証】
市民の皆さんのご理解・ご協力もあり、様々な取組を行っていますが、現在、全国的に注目を頂いています「リチウムイオン電池のリサイクル技術開発事業プロジェクト」を紹介します。
これは、リチウムイオン電池(以後、LiBと表記)回収、セメント炉の排熱利用による焙焼、希少金属の回収までの一連のリサイクルチェーンモデルの構築と実用化に向けた設備改良、及びチェーンの事業性の検証等を実施しているものです。
焙焼設備を国内で唯一保有する敦賀セメント(株)、セメントキルンと焙焼炉による省エネリサイクル技術ノウハウを持つ太平洋セメント(株)、高効率な金属資源の選別回収技術を持つ松田産業(株)、
回収した金属資源から銅やレアメタルを回収し、再商品化するJX金属(株)等といった企業に参画頂き、使用済みLiBの集荷から処理、再資源化に必要なプレイヤーが全て揃っているのが特徴です。
2011年に検討を開始し、2017年より敦賀セメントにて世界初となるセメント製造設備を活用したLiB処理実証を行い、敦賀市も支援させていただいたことで、2020年に事業化にいたりました。
LiB内には、引火点の低い電解液が含浸されており、安全に熱処理し、無害化することがこれまで困難でしたが、セメント製造プロセスにおける「石灰石」を活用することにより、低コストで無害化することに成功しました。
次世代自動車や太陽光発電システムにおける大容量蓄電用途として普及が進む「リチウムイオン電池」は、今後廃棄量が急増することが見込まれていることから、
今後さらなる実証実験・検証等を重ね、敦賀発「LiBリサイクルチェーンモデル」を発信することが、今後の目標です。
LiB焙焼設備(敦賀セメント株式会社 提供)
NSPタワーとキルン(敦賀セメント株式会社 提供)
第7次総合計画にSDGsを取り入れ、本年7月にゼロカーボンシティ宣言を表明した本市にとっては、水素を地球温暖化対策の切り札として捉え、
調和型水素社会形成計画を作成し、エネルギーの多元化に資する水素サプライチェーンの実現を目指して、水素を利活用したまちづくりを進めています。
2018年8月に東芝エネルギーシステムズ株式会社と「水素サプライチェーン構築に関する基本協定」を締結し、2019年12月には、経済産業省からの支援も頂き、
北陸初の太陽光発電を利用した再エネ水素ステーションを敦賀市公設地方卸売市場内に開所しました。
再エネ水素ステーション開所式(東芝エネルギーシステムズ株式会社 提供)
現在、再生可能エネルギー由来の水素を燃料電池自動車へ供給しています。2022年1月に供用開始予定の新市庁舎にも、自立型水素エネルギー供給システム「H2One」を設置しました。
水素には
(1) 再生可能エネルギーの電力を使って作ることが出来る
(2) 利用段階においてCO2を排出しない
(3) 貯めて運べるエネルギー、しかも劣化も減りもしない
という特徴があります。
市民の皆さんが災害時に安心して避難できるように、(3)の特徴を活かして、水素製造装置から生み出される再生可能エネルギー電力を災害時のバックアップ電源として活用する計画を立てているところです。
敦賀市役所新庁舎
今後は市役所庁舎だけでなく、さらなる水素利用を検討し、水素サプライチェーン及びゼロカーボンシティを目指していきたいと思います。
敦賀市バーチャルパワープラント(VPP)市民説明用パンフレット(敦賀市ホームページ)より
「ドローンを含む次世代高度技術活用により地域課題の解決に貢献する新スマート物流の構築」事業を紹介します。 実はつい最近(2021年11月10日)、敦賀市、セイノーホールディングス株式会社、株式会社エアロネクストの3者で、包括連携協定を締結した事業です。
包括連携協定締結式(敦賀市ホームページより)
今後の具体的な取組としては、商店の廃業等により買物や医療の課題を抱える敦賀市愛発(あらち)地区において、ドローン配送を含むオンデマンド配送サービスや買物代行サービスの実証実験の実施等を予定しています。
敦賀市愛発地区は滋賀県境に接し、古くから近畿と北陸を結ぶ物流の要所でした。江戸時代初期には、北陸地方などから米等を運ぶ船が敦賀港に入港し、敦賀港から愛発を経由して大阪に運ばれたことから物流の拠点として賑わいをみせました。
ですが昨年、地区内にあったコンビニエンスストアが閉店し、買物が地域課題となっていました。
愛発地区の皆さんにもご協力頂き、実証を進めることにより、地域の生活を便利にし、住みやすい地域をつくるとともに、スマート物流の構築により、本市ゼロカーボンシティ宣言にも大きく貢献する取組にしたいと思います。
ドローンを含む次世代高度技術活用により地域課題の解決に貢献する新スマート物流の構築に向けた包括連携協定の締結について(敦賀市ホームページ)
2024年の北陸新幹線敦賀開業に向け、敦賀駅前等のハード面はもとより、旅行者のニーズである「コト消費」に対応するため、本市の魅力ある地域資源の掘り起こしや磨き上げを進め、体験観光メニューの開発などを進めている真最中です。
また、本市が敦賀市海水養魚協会と協力してブランド化に成功した、養殖の概念を覆す味わいを楽しめる「敦賀真鯛」、「敦賀ふぐ」、市民のソウルフードである「ソースかつ丼」など、数多くの美味しい特産品が市内には存在しています。
是非、敦賀市にお越しいただき、数多くの魅力を味わってください。
取材中、敦賀市さんが現在計画されている多世代型ウェルネス広場整備事業(敦賀市総合運動公園ちびっこ広場)のコンセプトペーパーを見せて頂きましたが、障害を持った方と健常者が一緒に同じ遊びを体験できるといったことも重視されており、
まさしくSDGsの理念である「誰一人取り残さない」に沿ったものであり、素晴らしいと思いました。
そういった取組の積み重ねが、敦賀市に愛着を感じている市民の割合、82.8パーセント(第7次敦賀市総合計画概要版より)に繋がっているとも思いました。
取材終了後、市内のお店で「敦賀真鯛」を頂きました。ほんのり甘くとろけるような味わい……。最高でした!
次回はプライベートでお邪魔させて頂きます。
お忙しいところ取材に応じていただき、ありがとうございました。
敦賀真鯛(敦賀市ホームページより)
敦賀市公認キャラクター ツヌガ君
近畿経済産業局通商部 国際課 ホームページ(関西SDGs貢献チャレンジ)
近畿経済産業局資源エネルギー環境部 新エネルギー推進室 ホームページ(水素関連産業の振興)
近畿経済産業局 資源エネルギー環境部 環境・リサイクル課
電話:06-6966-6018