トップページ > 広報誌・E!KANSAI > 2022年5・6月号 特集

古いビジネスモデルから脱却するためのデザイン経営
担当課室:知的財産室

最終更新日:令和4年5月9日

デザイン経営と聞いてもまだまだ「商品やサービスをおしゃれな感覚で産み出すこと」と想像される方が多いのではないでしょうか。しかし、人を惹きつける商品・サービスを産み出すことは、デザイン経営の結果のほんの一部でしかありません。
 その本質は、企業の歴史や取組、社会の潮流などからビジョンを策定し、社内への浸透を通じて組織文化を構築するとともに、ユーザーが抱える潜在的なニーズを発掘し、新たな価値を創造し続けることです。
 また、この取組から滲み出てくる問題を、デザインの考え方(プロトタイプによる検証とフィードバックを繰り返すことに代表されるデザイン思考やアート思考など)や魅せ方(人を惹きつける言葉・絵など)を活用することで解決し、仲間や付加価値を増やしていくこともデザイン経営の重要な効果です。
 不確実性が増す現代においては、ニーズが多様化し、見えにくくなってきています。これまでのように求められた機能を提供する古いビジネスモデルから脱却し、自社のビジョンに基づいた価値やユーザーが真に欲しているものを企業の方から提案・提供していくことが、これからの時代を生き抜くことには必須であり、デザイン経営はその一つのツールとなります。

目指すデザイン経営のカタチ

デザイン経営読本
デザイン経営リーダーズゼミ

近畿経済産業局では、令和3年度、株式会社SASIと株式会社ロフトワークをパートナーに迎えて12社に対し、デザイン経営の伴走支援をしました。本事業が終わった後も、多くの会社が自費を投じて、その取組を継続しています。支援を受けた経営者の皆様からいただいたデザイン経営の感想を少しご紹介します。


  • 真の課題を見出す最高のツールだと思う。
  • 表面的ではなく、本質を深堀りするので、ブレない軸ができた。
  • デザイナーはいいアドバイザーでもあり、全く新しい視点を提供してくれるが、これは体験しないと分からない。デザイナーとの連携をぜひ体験していただきたい。

1. 関西デザイン経営プロジェクト

近畿経済産業局では、中小企業がデザイン経営の本質を理解し、実践できるようになり、関西にデザイン経営が定着することを目的に、関西デザイン経営プロジェクトを開始しています。私たちは、デザイン経営を「デザインの考え方(アート思考やデザイン思考など)や魅せ方(人を惹きつける言葉・絵など)で、仲間や付加価値を増やしていく経営手法」であると考えています。
 令和3年度では、株式会社SASIとともにデザイン経営の導入支援を8社に、株式会社ロフトワークとともに共創による新事業展開の支援を4社に、合計12社に対して伴走支援を行い、その内容を紹介記事と小冊子にまとめました。

株式会社SASI

株式会社ロフトワーク


ここでは、デザイン経営に取り組むことでどういうことが得られるのか、事例を交えながらご紹介していきます。


2.デザイン経営のスタートラインに立った中小企業

近畿経済産業局では、デザイン経営を導入したい中小企業8社に対して、株式会社SASIが提案するアイデンティティ型デザイン経営の導入支援を行いました。経営者が自らのアイデンティティと向かい合い、真の課題解決と新たなビジネスモデルを築くために、どのようにデザイン経営の基盤を作ったのか、事例を一つご紹介します。

ハードロック工業株式会社

ハードロック工業の場合

ハードロック工業株式会社は、全国的にも有名な緩み止めナットのトップメーカーです。1974年に若林克彦(現会長)氏が創業し、現在は息子である若林雅彦(現社長)氏が事業承継しています。
 若林社長が感じていた課題は、海外の競合企業はコーポレートメッセージもはっきりし、色や見せ方など世界観が統一しており、自社ももっと伝わるようにしなければならないと考えていたと言います。また、かつてから同社では、若林会長が良い仕事をする考え方の基礎として、SUJK (素直、受け入れる、実行する、感謝する)という言葉を繰り返し社員に伝えていましたが、十分に社内に浸透できていませんでした。世界に同社の製品を浸透させることと、社内にSUJK哲学を浸透させ、会社を強くすること。支援におけるヒアリングを通じ、これこそが真の課題と気づいていきます。本支援では、この課題に対し、デザインを活用し解決することを検討しました。
 まずは株式会社SASIのコピーライターが同席し、会長・社長の想いを徹底的にヒアリングし、図解を通じてその想いをカタチにしていきます。これは、同社がこれまで経験したことがないものでした。そして、緩み止めナットのルーツである「楔(くさび)」を基に、「KUSABI STATEMENT」と名づけ、理念やミッション・ビジョン・バリューを自社ならではの定義づけを行い、社内外に発信する基礎を作っていきました。また、そのことを具現化し、会社のロゴマークも刷新しはじめています。

まだスタートラインに立ったに過ぎないかもしれませんが、デザイン経営をとおして、目の前の課題と向き合い、アイデンティティを深掘りしたことにより本当の課題を見つけ、解決することに邁進し始めています。

3. デザイン経営が拓く未来

デザイン経営は、ブランド力とイノベーション力を向上させ、企業が生み出す付加価値を大きくすることができます。それぞれの中小企業がデザイン経営を実践し始めることで、稼ぐ力をもつ企業が増えてくることが期待されます。また、デザイン経営を実践する企業同士が、それぞれのビジョンに共感しあって連携することで、新たな事業が生まれる例も出てきています。このような取組が広がることで、地域の活性化にもつながっていきます。
 しかし、デザイン経営はまだまだ認知されていないと考えています。そこで、一社でも多くデザイン経営に共感していただき、実践できるよう、令和4年度も、デザイン経営を導入したい企業に対し、専門家が支援する事業を実施していきます。
 本事業を通じて、これから関西でデザイン経営が定着し、自らデザイン経営を実践する企業が当たり前になることを期待しています。

関連施策へのリンク

関西デザイン経営プロジェクト

このページに関するお問い合わせ先

近畿経済産業局 地域経済部 知的財産室

電話:06-6966-6016

他の記事を読む